大切なご家族を守るために!百日咳の「まさか」に備える予防のお話
今日は、最近また増えている百日咳(ひゃくにちぜき)について、皆さんにぜひ知っていただきたいお話があります。百日咳と聞くと、「昔の病気でしょ?」と思う方もいらっしゃるかもしれませんね。でも実は、今も身近に潜んでいて、小さなお子さんにとってはとても怖い病気なんです。
百日咳ってどんな病気?
百日咳は、百日咳菌(ひゃくにちぜききん)という細菌が起こす呼吸器の感染症です。まるで犬が吠えるような「コンコン」という特徴的な咳が長く続くのが特徴で、「百日咳」という名前の通り、咳が何週間も、時には何か月も続くことがあります。
特に、咳が出始めてから最初の2~3週間は、菌をまき散らしてしまう力がとっても強いんです。この時期を「カタル期(かたるき)」と呼びます。例えるなら、風邪をひいたときに鼻水や咳が止まらないのと同じように、周りの人にうつしやすい時期だと思ってください。
大切な「曝露後予防投与(PEP)」って知っていますか?
もし、ご家族の中に百日咳と診断された方がいたら、どうすればいいでしょうか? ユアクリニックお茶の水では、そんな時に「曝露後予防投与(ばくろごよぼうとうよ)」、略してPEP(ペップ)という特別な予防法をおすすめしています。
これは、百日咳にかかった人と接触してしまった方が、病気になるのを防ぐために、あらかじめお薬を飲む方法です。イメージとしては、インフルエンザの時に、家族がインフルエンザになったら予防的にお薬を飲むことがあるのと同じようなものです。
研究でも、このPEPを行うことで、百日咳がうつる確率を50%から80%も減らせることが分かっています。すごいですよね! 特に、赤ちゃんや妊娠中のお母さんがいるご家庭では、このPEPがとっても大切になるんです。
なぜ赤ちゃんや妊婦さんにPEPが重要なのでしょうか?
百日咳は、大人にとっては「咳が長引くしんどい風邪」くらいで済むことも多いのですが、赤ちゃん、特に生後12か月未満の小さなお子さんにとっては、命に関わることもあるほど重い病気です。
赤ちゃんは咳をしても上手に痰を出すことができないため、咳がひどくなると呼吸ができなくなってしまったり、肺炎を併発してしまったりすることがあります。残念ながら、百日咳で亡くなってしまう赤ちゃんもいるのが現状です。
また、妊娠中のお母さん、特に妊娠後期(妊娠28週目以降)の方が百日咳にかかってしまうと、生まれてくる赤ちゃんに感染してしまうリスクが高まります。赤ちゃんがお腹の中にいる間に感染することはありませんが、生まれてすぐに感染してしまい、重症化する危険性があるのです。
だからこそ、赤ちゃんや妊娠中のお母さんを守るために、百日咳にかかった方と接触してしまった場合、早めにPEPのお薬を飲むことがとても重要になります。具体的には、百日咳の患者さんと接触してから21日以内に、適切なお薬を飲み始めることが大切です。
どんな人がPEPを受けるべき?
特にPEPをおすすめするのは、次のような方々です。
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12か月未満の赤ちゃん:一番重症化するリスクが高いからです。
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妊娠中のお母さん(特に妊娠後期):生まれてくる赤ちゃんを守るためです。
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免疫力が下がっている方や、喘息などの呼吸器の病気を持っている方:百日咳にかかると、より重くなりやすいからです。
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上記のようなハイリスクな方々と一緒に住んでいるご家族、医療関係者、保育園の先生など、常に近くで接する方々:ご自身が感染すると、周りのハイリスクな方々にうつしてしまう可能性があるからです。
もし、上記のような方が百日咳の患者さんと接触してしまった場合は、咳が出始めてから21日以内に、ぜひユアクリニックお茶の水にご相談ください。ただし、すでに咳の症状が出ていたり、接触から21日以上経ってしまっている場合は、PEPの効果は期待できないことが多いので注意が必要です。
百日咳はワクチンで予防できる病気です。お子さんの定期接種はもちろんのこと、大人の方も、必要に応じてワクチン接種を検討することをおすすめします。特に、これから赤ちゃんを迎えるご両親や、赤ちゃんのお世話をするおじいちゃんおばあちゃんは、ぜひ予防接種をご検討ください。