論文:頭蓋骨癒合症と同時性斜頭症または短頭症患者における矯正療法の補助的使用
論文をよんでみました。
頭蓋骨癒合症と同時性斜頭症または短頭症患者における矯正療法の補助的使用
https://journals.lww.com/jcraniofacialsurgery/abstract/9900/adjunct_use_of_orthotic_therapy_in_patients_with.3147.aspx
この論文は「頭蓋骨早期癒合症(ずがいこつそうきゆごうしょう)」という病気のお子さんについて書かれたものです。
頭蓋骨早期癒合症(CS)とは?
赤ちゃんの頭の骨は、いくつかのお皿のような骨が組み合わさってできています。その骨と骨のつなぎ目を「縫合(ほうごう)」と呼び、通常は成長とともにゆっくりと閉じていきます。
しかし、「頭蓋骨早期癒合症」は、この縫合の一部が普通よりも早くくっついて(癒合して)しまう病気です。そうすると、頭の形がいびつになったり、頭の中のスペースが狭くなって脳の発育に影響が出たりすることがあります。
この病気の基本的な治療は、手術で早くくっついてしまった部分を離してあげることです。
この論文が注目しているのは?
この論文では、頭蓋骨早期癒合症のお子さんの中でも、「向き癖などによる頭のゆがみ(斜頭症や短頭症)も同時に持っている」ケースに注目しています。
向き癖などによる頭のゆがみは、「位置的頭蓋変形」と言って、通常はヘルメット治療などで改善することが多いです。
しかし、頭蓋骨早期癒合症と位置的頭蓋変形の両方を持っているお子さんに対して、手術とヘルメット治療を組み合わせるとどうなるかを調べた研究は、これまであまりありませんでした。
この研究は、頭蓋骨早期癒合症の手術を受けた後、さらにヘルメット治療を併用したお子さんたちが、どのくらい頭の形が良くなったかを調べたものです。
論文の結論
研究の結果、以下のようなことがわかりました。
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斜頭症(頭の左右の非対称なゆがみ)があったお子さん:手術とヘルメット治療を併用することで、ゆがみの程度を示す数値(CVA)が、治療前は平均 だったのが、治療後は平均 にまで大きく改善しました。これは統計的に見ても非常に効果があったと言えます。
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短頭症(後頭部が平らなゆがみ)があったお子さん:同様に、頭の前後と横の比率を示す数値(CR)が、治療前は平均 だったのが、治療後は にまで改善しました。これも統計的に意味のある改善でした。
つまり、頭蓋骨早期癒合症の手術をした後に、ヘルメット治療を併用することで、頭の形がよりきれいに整ったということです。
まとめ
この論文は、頭蓋骨早期癒合症のお子さんの中には、向き癖などによる頭のゆがみも併発しているケースがあること、そして、そうしたお子さんには手術に加えてヘルメット治療を組み合わせることで、より良い結果が得られる可能性を示唆しています。
ただし、この研究は過去のカルテを振り返って行った小規模なものであり、今後のより詳しい研究が必要だということも付け加えられています。
当院では、あたまのかたち外来をおこなっています。
もし、頭蓋骨早期癒合症など骨の病気を少しでもうたがった場合。念ためだとしても、精査のために大学病院へ紹介して問題が隠れてないかどうかチェックしてもらっています。