赤ちゃんの「向き癖」、どうしたらいいの?看護師新米ママひなみさんの奮闘記!
小児科医の杉原です。今日は、看護師新米ママのひなみさんからこんな相談を受けました。(フィクションです)
「先生、うちのみずほの『向き癖』、どうしたらいいんでしょうか?」
ユアクリニックお茶の水の診察室に、少し困ったような顔でひなみさんが入ってきました。腕の中には、生後3ヶ月になったばかりのみずほちゃんがすやすやと眠っています。
杉原院長「ひなみさん、こんにちは。みずほちゃん、今日も可愛いね。向き癖、気になってるんだね。」
ひなみさん「はい、最近、いつも右ばかり向いているんです。せっかく生まれた時はきれいな形だったのに、頭の形がちょっといびつになってきたような気がして…。お友達の赤ちゃんは、向き癖がないって聞いて、うちの子だけなのかなって心配で。」
杉原院長「なるほど。それは心配になるよね。赤ちゃんが同じ方向ばかり向いていると、頭の形に影響が出ることがあるからね。でも、まずは落ち着いて話を聞いていこうか。ひなみさんは、みずほちゃんの向き癖について、どんなことを試してみたの?」
ひなみさん「夜中に向きを変えてみたり、枕の向きを変えてみたりしたんですけど、すぐにまた右を向いちゃうんです。抱っこの時も、なんだか右ばかり向きたがるみたいで…。このままじゃ、頭の形がもっと変になっちゃうんじゃないかって、毎日そればかり考えてしまいます。」
ひなみさんの顔には、子育ての疲れと、みずほちゃんへの深い愛情が入り混じったような表情が浮かんでいました。
杉原院長「うんうん、よく頑張っているね。赤ちゃんが特定の方向ばかり向きたがる『向き癖』は、多くのお子さんに見られることなんだよ。特に、生まれてすぐの赤ちゃんは、まだ首の筋肉が未熟で、自分の頭を自由な方向に動かすのが難しいからね。」
ひなみさん「そうなんですね…。でも、この向き癖って、治せるものなんですか?」
杉原院長「良い質問だね!結論から言うと、生後1~2ヶ月頃までの**軽度の斜頭症(しゃとうしょう)**による向き癖であれば、意識して反対側を向かせたりすることで改善する可能性はあるんだ。この『斜頭症』っていうのは、頭の形が斜めに変形してしまうこと。まだ頭の骨が柔らかい時期だからこそ、ある程度は調整できるんだよ。」
ひなみさん「軽度の斜頭症…? それって、どういう状態のことですか?」
杉原院長「例えば、いつも同じ方向ばかり向いていることで、頭の後ろが少し平らになってしまったり、耳の位置が左右で少しずれてしまったりするような状態を指すことが多いね。でも、この時期を過ぎてしまうと、頭の骨がだんだん硬くなってくるから、向き癖を強制的に変えるのは難しくなってくるんだ。」
ひなみさん「え、そうなんですか!もうみずほは3ヶ月だから、もう手遅れになっちゃうんですか…?」
ひなみさんの声が少し震えました。
杉原院長「手遅れ、なんてことはないから安心してね。ただ、赤ちゃんの頭の骨って、生まれて間もない頃はとても柔らかいんだ。例えるなら、まだ乾ききっていない粘土みたいなものかな。だから、この柔らかい時期、具体的には生後1~2週間の間に、向き癖を作らないように気をつけることがとても大切なんだ。」
ひなみさん「生後1~2週間…! そうか、もっと早くから気をつけたらよかったんですね…。」
杉原院長「そんなに自分を責めなくても大丈夫だよ。多くの赤ちゃんは、実はお母さんのお腹の中にいる時から、もうすでに好きな方向があるんだ。だから、生まれてからもその好みが続いて、同じ方向ばかり向いてしまうことが多いんだよ。これは、赤ちゃんの好みだから、無理やり変えようとするのは難しいことなんだ。」
ひなみさん「お腹の中にいる時から、もう好みがあるなんて…! 不思議ですね。でも、先生、もしこの向き癖がなかなか治らなかったら、何かできることはないんでしょうか?」
杉原院長「もちろん、できることはあるよ。向き癖が原因で頭の形がかなりいびつになってしまったり、特定の方向を向き続けることで首の筋肉が硬くなってしまったりするような場合には、専門的な治療を検討することもあるんだ。例えば、『ベビーヘルメット』という医療機器を使う治療もその一つだよ。」
ひなみさん「ベビーヘルメット…!」
杉原院長「そう。ユアクリニックお茶の水では、私もベビーヘルメットを使った治療に力を入れているんだ。ヘルメットは、赤ちゃんの頭の成長に合わせて、自然な頭の形を促すように設計されているんだよ。でも、まずはみずほちゃんの現在の状態をもう少し詳しく診させてほしいな。その上で、ひなみさんの不安を一つずつ解消していこう。焦らなくて大丈夫だからね。」
ひなみさん「はい…! ありがとうございます、先生。なんだか、少し安心しました。」
ひなみさんの顔に、ようやく安堵の表情が戻りました。
【杉原院長からのアドバイス】
赤ちゃんの向き癖は、多くの保護者の方が悩むことの一つです。特に、生後間もない時期は、赤ちゃんの頭の骨が柔らかいため、同じ方向ばかり向いていると頭の形に影響が出ることがあります。
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生後1~2ヶ月頃までの軽度の向き癖:
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赤ちゃんが起きている時に、反対側を向くように優しく誘ってあげましょう。
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おもちゃや音の出るものを、反対側に置いてあげて、そちらに興味を向けさせるのも有効です。
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寝ている時は、窒息の危険がない範囲で、少しだけ体位を変えてあげることも試みてください。
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日中の抱っこの仕方も工夫してみましょう。いつも同じ向きで抱っこするのではなく、色々な向きで抱っこしてあげると、頭にかかる圧力が分散されます。
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注意点:
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無理に赤ちゃんの頭を固定しようとしないでください。赤ちゃんにとって苦痛になり、かえって嫌がってしまうことがあります。
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枕やタオルで頭を固定することは、窒息のリスクを高める可能性がありますので、自己判断で行わないでください。
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専門家への相談:
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もし向き癖が強い、頭の形がかなりいびつになってきた、あるいは首の動きに左右差があるなど、心配な点があれば、お気軽にユアクリニックお茶の水にご相談ください。
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私、杉原は、ベビーヘルメット治療だけでなく、お子さんの成長と発達全体をサポートできるよう、様々な観点からアドバイスをさせていただきます。
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予防は、病気になってから治療するよりもずっと大切です。赤ちゃんの小さな変化に気づき、早めに対応することで、将来の安心へと繋がります。皆さんの子育てが、少しでも楽になるよう、これからも一緒に考えていきましょう。