赤ちゃんを守る!「まさか」を「よかった」に変えるVPDのお話
お子さんの健康と命に関わるVPD(ブイピーディー)ってご存知ですか?
VPDとは、「Vaccine Preventable Diseases」の頭文字をとったもので、日本語では「ワクチンで防げる病気」という意味なんです。つまり、予防接種を受けることで、お子さんがかからずに済む、あるいはかかっても重症化せずに済む病気のことなんですよ。
「病気はかかるもの」という考え方も昔はありましたが、今は医学が進歩して、予防できる病気がたくさんあります。まるで、大雨の日に傘をさすように、ワクチンという「傘」をさすことで、病気という「雨」からお子さんを守ることができるんです。
でも、どんな病気がVPDなのか、具体的にイメージしにくいかもしれませんね。そこで今日は、最近ユアクリニックお茶の水にやってきた、ある家族のお話を通して、VPDの大切さをお伝えしたいと思います。
予防接種って、お守りみたいなものなんだね!~ハルトくんとVPDの物語~
「先生、こんにちは。この子がハルトです。」
ある晴れた日、ユアクリニックお茶の水の待合室に、ママに抱っこされた生後2ヶ月のハルトくんと、パパ、そしてお兄ちゃんのソウタくんがやってきました。ハルトくんはくりくりとした大きな瞳で、キョロキョロと周りを見回しています。ソウタくんは少し緊張した面持ちで、ハルトくんの手を優しく握っていました。
この日は、ハルトくんの初めての予防接種の日です。ママは少し不安そうに、「先生、初めての予防接種で、色々種類があるみたいで、どれを受けたらいいのか分からなくて…」と尋ねてきました。
「大丈夫ですよ。初めての予防接種は、誰もが不安になるものです。でも、ハルトくんを守るために、とても大切なことなんですよ」と私は優しく答えました。
私はまず、ハルトくんがこれから受ける予防接種の種類について説明しました。
「ハルトくんが今日受けるのは、ロタウイルス、B型肝炎、小児用肺炎球菌、そして五種混合ワクチンの4種類です。五種混合ワクチンというのは、ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ、ヒブという5つの病気を一度に防ぐことができる便利なワクチンなんですよ。これらは、赤ちゃんの体がまだ小さくて、病気に対する抵抗力(体の防御システムのことです。悪い菌やウイルスから体を守ってくれる、いわば体の中の警察官みたいなものです)が弱い時期に、特に気をつけたいVPDから守るためのものです。」
ソウタくんが首を傾げながら、「VPDって何?」と尋ねました。
「VPDというのはね、ワクチンという特別な注射で、バイキンをやっつける練習をすることで、病気にかからないようにする病気のことなんだよ。お兄ちゃんのソウタくんも、小さい時にたくさんワクチンを受けて、元気に大きくなったでしょう?」
ソウタくんは、「うん!」と元気よく頷きました。
「例えばね、ロタウイルスっていうのは、小さい赤ちゃんがなると、お腹を壊して、ゲホゲホって吐いちゃったり、うんちがずっと水みたいになったりして、体の中の水分がどんどん減っちゃう病気なんだ。ひどい時には、入院して点滴をしないといけなくなることもあるんだよ。」
ママはハッとしました。「そうなんですね…知りませんでした。」
「五種混合ワクチンの中のヒブ感染症や肺炎球菌感染症は、細菌(バイキンの一種です)が原因で、中耳炎(耳の奥が炎症を起こす病気)や肺炎(肺という呼吸をする臓器が炎症を起こす病気)、さらには髄膜炎(脳や脊髄を覆う膜が炎症を起こす重い病気)といった、とても重い病気を引き起こすことがあります。特に髄膜炎は、命に関わったり、後遺症が残ったりすることもある、怖い病気なんです。」
パパが真剣な表情で聞いています。
「同じく五種混合ワクチンの中のジフテリアは、のどに膜ができて息ができなくなったりする病気で、百日せきは、咳が止まらなくなって、赤ちゃんが呼吸困難になることもある病気です。破傷風は、土の中にいる菌が傷口から入って、体がこわばって動かせなくなる病気で、とても重い神経の病気を引き起こします。ポリオは、手足が麻痺してしまう病気で、昔は多くの人がかかりましたが、ワクチンのおかげでほとんど見られなくなりました。」
「そして、B型肝炎は、肝臓(体の中の大きな臓器で、食べ物の消化を助けたり、体の毒素を分解したりする大切な働きをしています)に炎症を起こす病気で、大人になってから慢性化すると、肝硬変や肝臓がんになるリスクがあるんですよ。赤ちゃんのうちにワクチンを打っておくことで、将来の重い病気を防ぐことができるんです。」
私は、それぞれの病気について、例え話を交えながら、できるだけ分かりやすく説明しました。
「予防接種はね、まるで体の中に、その病気のバイキンと戦うための『お守り』を入れてあげるようなものなんだ。本物のバイキンが来た時に、『お守り』があれば、体がすぐに戦い方を思い出して、やっつけることができるから、病気にかかりにくくなるんだよ。」
ハルトくんは、注射を少しだけ泣きましたが、すぐに泣き止んで、ママの指をぎゅっと握りました。
「先生、予防接種って、こんなに大切なんですね。本当にありがとうございました。」ママは、安心したように笑顔を見せました。
その日以来、ハルトくんは順調に予防接種を受け、すくすく育っています。ソウタくんも、予防接種のたびに「ハルト、お守りもらったね!」と声をかけるようになりました。
後日、ハルトくんの健診で、ママがこんな話をしてくれました。
「実は先日、お友達の赤ちゃんがロタウイルスにかかってしまって、ものすごく辛そうだったんです。高熱が出て、ずっと吐いていて、見ていて可哀そうで…あの時、杉原先生がVPDの話をしてくださって、ハルトに予防接種を受けさせて本当に良かったと思いました。もしハルトもかかっていたら…と思うと、ゾッとします。」
私は、ママの言葉に頷きました。
「そうですね。VPDは、かかってしまうと大変な病気ばかりです。特に赤ちゃんは、大人よりも症状が重くなりやすい傾向があります。だからこそ、予防接種で守ってあげることがとても大切なんです。病気にかかってから後悔するのではなく、かかる前に予防する。これが、お子さんの健康を守る一番の近道だと私は考えています。」
ユアクリニックお茶の水から、あなたへ
ユアクリニックお茶の水では、ハルトくんのように、お子さんが安全に、そして安心して予防接種を受けられるように、様々な工夫をしています。お子さんのアレルギーや漢方についても、お気軽にご相談ください。
予防接種は、お子さんの未来を守る、大切なプレゼントです。不安なことや疑問に思うことがあれば、いつでもご相談ください。私たち小児科医は、お子さんたちが元気にすくすく育つことを心から願っています。
VPDの種類(一部)
- B型肝炎
- ロタウイルス感染症(ロタウイルス胃腸炎)
- 小児の肺炎球菌感染症
- 五種混合(ジフテリア、百日せき、破傷風、ポリオ、ヒブ)
- 麻しん(はしか)
- 風しん
- おたふくかぜ
- 水痘(みずぼうそう)
- 日本脳炎
- 新型コロナウイルス感染症(COVID-19)
- インフルエンザ
- ヒトパピローマウイルス感染症
- 髄膜炎菌感染症
- A型肝炎
- RSウイルス感染症
- 結核
お子さんの予防接種スケジュールについてご不明な点がありましたら、お気軽にユアクリニックお茶の水までご相談ください。