【赤ちゃんの頭の形】先生によって「理想」は違うの?ヘルメット治療のゴールとは
赤ちゃんの頭の形を整えるヘルメット治療。
「どこまで形が良くなるんだろう?」
「先生が思う“良い形”と、私たちが願う“理想の形”は同じなのかな?」
そんな疑問やちょっぴり不安な気持ちを抱えているお父さんお母さんもいらっしゃるのではないでしょうか。今日は、この「理想の頭の形」について、皆さんと一緒に考えていきたいと思います。
つい先日、当院でヘルメット治療を始めたばかりの湊(みなと)くん(生後6ヶ月)のお母さんから、こんな質問をいただきました。
診察室で、湊くんの頭の形を専用の機器で計測し、治療の進み具合を確認していた時のことです。お母さんが少し心配そうな顔で、僕にこう尋ねました。
「先生、赤ちゃんの理想の頭の形って、お医者さんの考え方によって違うものなんでしょうか…? 私としては、できるだけまん丸にしてあげたいなって思うんですけど…」
湊くんのお母さんの言葉には、「本当にこの治療で望むような形になるのかな」という期待と、「もし先生の目指す形と違ったらどうしよう」という不安が入り混じっているように感じられました。
「お母さん、ご心配ですよね。湊くんの頭の形、一番気になりますよね。とても大切なご質問だと思います。」 僕は、まずお母さんの気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと説明を始めました。
「まず、私たち小児科医がヘルメット治療で目指すのは、『左右の非対称性(さゆうのひたいしょうせい)をできるだけ少なくして、全体的に丸みのある頭の形に近づけること』なんです。『左右の非対称性』というのは、簡単に言うと、頭の右側と左側で形や出っ張りが違う状態のことですね。」
「はい…」湊くんのお母さんは、真剣な表情で頷きます。
「そのために、私たちは、例えばこんな風に、専用のカメラで湊くんの頭を色々な方向からパシャパシャと撮影して、コンピューター上で頭の立体的な形を再現するんです。これを『3Dスキャン』なんて言ったりします。こうして得られた客観的なデータをもとに、湊くん一人ひとりの頭のゆがみの度合いや、今の月齢(ヘルメットを着け始める時期)に合わせて、オーダーメイドでヘルメットを設計し、調整していくんですよ。」
僕は、湊くんの3Dスキャン画像を見せながら続けました。 「ですから、僕個人の好みや『こんな形がいいな』という主観で治療方針を決めることは、決してありません。あくまでもデータに基づいて、医学的に見てより良い方向へ導くお手伝いをする、というスタンスなんです。」
「そうなんですね、先生の好みで決まるわけではないんですね。」お母さんの表情が少し和らぎました。
「はい。ただ…」と僕は続けました。「ここが少し難しいところなのですが、私たちが医学的なデータに基づいて目指す『改善された形』が、必ずしもお父さんやお母さんが心に描いている『完璧な理想の形』と、寸分たがわず一致するとは限らない、ということもご理解いただきたいのです。」
「…というと?」
「例えば、お洋服をオーダーメイドで仕立てる時を想像してみてください。仕立て屋さんは、体の寸法を正確に測って、動きやすくて体にぴったりフィットする、機能的な服を作ってくれますよね。それが医学的な目標だとしたら、お客さんの中には『もっと裾をふんわりさせて、夢見るようなお姫様ドレスにしてほしい!』というイメージがあるかもしれません。仕立て屋さんはもちろん、できる限りご要望に近づけようと努力しますが、体の構造や生地の特性上、どうしても限界があることもありますよね。」
「なるほど…」
「ヘルメット治療もそれに少し似ていて、私たちは医学的なデータに基づいて、その子にとって一番無理のない、そして効果的な『丸みのある左右対称に近い形』を目指します。でも、それがご家族の皆さんが『こうなってほしい』と願うイメージと、1ミリの狂いもなくピッタリ重なるかどうかは、正直なところ、治療が終わってみるまで分からない部分もあるんです。赤ちゃんの頭の骨の柔らかさや成長のスピードにも個人差がありますからね。」
湊くんのお母さんは、じっと僕の話を聞いていました。
「でも、安心してください。私たちは、治療を始める前や治療の途中で、必ずご家族としっかりお話をする時間を設けています。どんな形を目指していくのか、どこまで改善が期待できるのか、そして、もしかしたら限界があるかもしれない部分はどこなのか。そういったことを、できる限り分かりやすくご説明し、ご納得いただいた上で治療を進めていくことを何よりも大切にしています。湊くんの場合も、このデータを見る限り、順調に左右差が改善してきていますし、後頭部の丸みも出てきていますよ。」
僕は改めて湊くんのデータを示し、具体的な改善点と今後の見通しを説明しました。 「先生のお話を聞いて、なんだかモヤモヤしていたものがスッキリしました。先生の主観ではなく、データで見てくださるんですね。そして、私たちの気持ちもちゃんと聞いてくれると分かって安心しました。」 湊くんのお母さんの顔に、ようやく笑顔が戻りました。
「理想の形」への第一歩は、ドクターとのコミュニケーションから
ヘルメット治療における「理想の頭の形」。それは、医師が一方的に決めるものではありませんし、ご家族の願いだけで全てが叶うものでもありません。
大切なのは、
- 客観的なデータに基づいた医学的な評価
- ご家族がどんな形を望んでいるのかという気持ち この両方をしっかりと共有し、一緒にゴールを目指していくことです。
治療を始める前や治療の途中で、不安なこと、疑問に思うこと、そして「こうなってほしい」という願いがあれば、どうぞ遠慮なく担当の先生に伝えてみてください。私たち医師も、皆さんの気持ちに寄り添いながら、その子にとって最善の治療を提供できるよう努めています。
ユアクリニックお茶の水では、赤ちゃんの頭の形のご相談はもちろんのこと、僕が得意とする小児アレルギー、小児漢方、そして何よりも大切にしている予防医療(ワクチンなど)についても、皆さんの「どうして?」「大丈夫かな?」という気持ちにしっかり向き合っていきたいと考えています。
湊くんの頭の形が、これからもっともっと良い形になっていくのが、僕も楽しみです! それでは、またクリニックでお会いしましょう。
