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ママと赤ちゃんを守る!「風しん」の知られざる危険と、優しい予防のお話

[2025.05.31]

前回には、MRワクチンの話をしました。このMRというのはMeasles と Rubellaの頭文字をとったものです。Measlesは麻しん、Rubellaは風しんのことです。

でも最近、風しんの子どもをみかけることも少なくなってきました。僕も大学病院時代には何名かみたことがありますが、最近はとんとみかけない。ワクチンが充実してきたおかげだと思います。

 

あなたは「風しん」という病気をご存知でしょうか?

「三日ばしか」と呼ばれることもある風しんは、麻しん(はしか)に比べると軽い症状で済むと思われがちです。しかし、実はママと赤ちゃんにとって、とても大きな危険をはらむVPD(ワクチンで防げる病気)なんです。特に、妊娠初期の女性が風しんにかかると、おなかの赤ちゃんに深刻な影響が出てしまうことがあります。

まるで、穏やかな日差しの裏に隠れた、見えない嵐のように、風しんも甘く見てはいけません。この「見えない危険」から、大切なママと赤ちゃん、そしてお子さんを守るには、ワクチンが何よりも大切になります。

風しんがどんな病気なのか、具体的にイメージしにくいかもしれませんね。そこで今日は、ユアクリニックお茶の水にやってきた、ある家族のお話を通して、風しん予防の大切さをお伝えしたいと思います。

「もしも」が「よかった!」に変わった瞬間~アオイちゃんと風しんの予防物語~

「先生、こんにちは。この子がアオイです。」

ある晴れた日の午前中、ユアクリニックお茶の水の診察室に、生後2ヶ月の元気なアオイちゃん(最近の赤ちゃんの名前ランキングで人気ですね!)と、お父さん、お母さんがやってきました。アオイちゃんは、くりくりとした目で周りをキョロキョロ見回しています。

この日は、アオイちゃんの初めての予防接種の日。お母さんは、少し緊張した面持ちで私に尋ねました。

「先生、実は私、子どもの頃に風しんの予防接種を受けたかどうか、はっきり覚えていなくて…。最近、風しんのことがニュースで出ていたので、少し心配になってしまって。」

私は、お母さんの不安な気持ちに寄り添いながら、優しく答えました。

「お母さん、ご心配なこと、よく分かりますよ。風しんは、大人の方、特に妊娠を考えている女性や妊娠中の方にとって、とても大切な予防が必要な病気なんです。」

そして、アオイちゃんのお父さんにも尋ねました。「お父さんは、風しんの予防接種は受けられましたか?」

お父さんは、「いえ、僕もあまり意識したことがなくて…」と答えました。

私は、風しんがどんな病気なのか、そしてなぜ大人にも予防接種が大切なのかを説明しました。

「風しんウイルスが体に入ると、まず熱が出て、首のリンパ節(体の中の免疫の仕組みの一部で、バイキンをやっつけるための基地みたいなものです)が腫れたり、体に赤いポツポツ(発疹といって、皮膚に出てくるブツブツのことだよ)が出てくるんです。大人の場合は、関節が痛くなったりすることもあるんですよ。」

アオイちゃんのお母さんは、じっと私の話を聞いています。

「風しんは、多くの場合、数日で熱が下がり、比較的軽い症状で済むことが多いんです。だから、『三日ばしか』なんて呼ばれることもあります。しかし、怖いのは、風しんにかかった大人が、妊娠初期の女性にうつしてしまうことなんです。」

お母さんの顔色が少し変わりました。「妊娠初期の女性に…?」

「はい。妊娠初期の女性が風しんにかかってしまうと、ウイルスがおなかの赤ちゃんに感染して、心臓の病気、白内障(目のレンズの部分が白く濁って見えにくくなる病気)、難聴(耳が聞こえにくくなること)、精神運動発達遅滞(言葉や体の発達がゆっくりになること)などを引き起こす可能性があります。これを『先天性風しん症候群(せんていせいふうしんしょうこうぐん:おなかの赤ちゃんが風しんウイルスに感染して、生まれつき心臓や目、耳などに障がいを持って生まれてくる病気のことです)』と呼びます。2012年から2013年にかけて風しんが流行した際には、先天性風しん症候群の赤ちゃんが45人も生まれ、そのうち11人が命を落としています。これは、本当に悲しいことです。」

お母さんは、アオイちゃんを抱きしめながら、涙ぐんでいました。

「そんな、恐ろしいことが…。もし私がお腹にアオイがいた時にかかっていたら…と思うと、ゾッとします。」

「そうですね。だからこそ、妊娠を考えている女性、そしてその周りの方々、特にパパが予防接種を受けておくことが非常に大切なんです。風しんは、感染力が強いので、パパが風しんにかかってしまうと、知らず知らずのうちに、妊娠している奥さんにうつしてしまう可能性があります。お父さんがワクチンを受けていれば、奥さんへの感染リスクをぐっと減らすことができるんですよ。」

お父さんも真剣な表情で頷きました。

「風しんのワクチンは、MRワクチンといって、麻しん(はしか)と風しんの2つの病気を一緒に防ぐことができます。定期接種として、1歳になったら1回目、小学校に入学する前に2回目を受けることになっています。もちろん、大人の方で、過去に2回受けていない、あるいはかかったことがないという方も、接種することをおすすめします。特に、昭和37年度から昭和53年度生まれの男性は、定期接種の機会がなかったため、国が無料でMRワクチンを受けられる機会を設けていますので、ぜひ確認してみてください。」

お母さんは、少し落ち着いた様子で言いました。「先生、私たち夫婦も、今からでもワクチンを受けられますか?アオイを守るためにも、私たち自身も予防したいです。」

「もちろんです。今からでも遅くありません。お二人でワクチンを受けて、アオイちゃんを守るための『バリア』を強くしましょう。」

後日、アオイちゃんのお父さんとお母さんは、ユアクリニックお茶の水の予防接種外来でMRワクチンを受けました。

数ヶ月後、アオイちゃんの健診で、お母さんが笑顔で話してくれました。

「先日、お友達のママ友が風しんにかかったらしくて…。妊娠初期だったので、本当に心配していました。私は、先生にお話を聞いてすぐにワクチンを受けられたので、もしアオイが生まれる前に、私が風しんにかかっていたら…と思うと、ゾッとしました。本当に、先生のおかげで『もしも』が『よかった!』に変わりました。」

ユアクリニックお茶の水から、あなたへ

アオイちゃんのご家族のように、風しんは「かかってから後悔」するのではなく、「かかる前に予防」することが本当に大切な病気です。特に、未来のママと赤ちゃんを守るためには、周りの大人たちの協力が不可欠です。

ユアクリニックお茶の水では、風しんをはじめとする予防接種について、丁寧に説明し、お子さんから大人まで安心して受けられるようサポートしています。お子さんのアレルギーや漢方についても、お気軽にご相談ください。

予防接種は、お子さんの未来を守るだけでなく、社会全体を病気から守るための大切な行動です。不安なことや疑問に思うことがあれば、いつでもご相談ください。私たち小児科医は、お子さんたちが元気にすくすく育つことを心から願っています。

ご自身の予防接種歴についてご不明な点がありましたら、お気軽にユアクリニックお茶の水までご相談ください。

追記 マンガ「コウノドリ」風しんエピソードもご参考に!

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