【赤ちゃんのヘルメット治療】途中で病院を変えられる?素朴なギモンにお答えします!
小児科専門医の杉原です。僕は、ユアクリニックお茶の水で院長をしています。坊主頭にあごひげがトレードマークなので、見かけたら気軽に声をかけてくださいね!
さて、赤ちゃんの頭の形を整えるヘルメット治療。当院でも多くの赤ちゃんとご家族をサポートさせていただいていますが、時には引っ越しなどのご事情で、治療の途中で他の病院へ移らなければならないケースもあります。今日は、そんな「転院」について、当院から別の病院へ移られる場合の注意点やアドバイスを、皆さんに分かりやすくお話ししたいと思います。
つい先日も、当院でヘルメット治療を頑張っていた、生後8ヶ月の陽葵(ひまり)ちゃんのお母さん、佐藤さんからご相談がありました。
「先生、実は夫の仕事の関係で、急遽、遠方へ引っ越すことになりまして…」
診察室に入ってきた佐藤さんの表情は、少し不安そうでした。陽葵ちゃんは、数ヶ月前から当院でヘルメット治療を開始し、頭の形も順調に改善してきていたところです。
「陽葵のヘルメット治療、こちらでお世話になり始めてからすごく順調だったのに、途中で病院を変わらなければならないなんて…新しいところで、ちゃんと治療を続けてもらえるんでしょうか?」
佐藤さんの声には、陽葵ちゃんへの愛情と、先の見えない状況への戸惑いが滲んでいました。
「佐藤さん、ご心配ですよね。陽葵ちゃんのことはもちろん、佐藤さんご自身の不安も大きいと思います。大丈夫ですよ、一つ一つ一緒に考えていきましょう。」
僕はまず、佐藤さんの気持ちを受け止め、安心してもらえるように努めました。そして、転院に向けて当院でできるサポートと、佐藤さんご自身でご確認いただきたいことを具体的にお話し始めました。
「まず大前提として、赤ちゃんのヘルメット治療は『自由診療(じゆうしんりょう)』といって、健康保険がきかない特別な治療です。これは、遊園地のフリーパスが遊園地ごとに値段や内容が違うように、病院によって治療費や方針が少しずつ異なる場合がある、ということです。」
佐藤さんは、真剣な表情で頷いています。
「そして、ヘルメットも、実は色々なメーカーがあるんです。陽葵ちゃんが今使っているこのヘルメットはベリー社製ですが、転院先の候補となる病院が、このベリー社のヘルメットを扱っているかどうかが、とても大切になってきます。」
「もし、違うメーカーしか扱っていなかったら…?」
「そうですね…例えるなら、お気に入りのブロックがあって、それで大きなお城を作っている途中で、違う種類のブロックしかない場所に引っ越すようなイメージかもしれません。今までのブロックと新しいブロックをうまく組み合わせられたら良いのですが、ヘルメットの場合は、メーカーが違うと調整の仕方や考え方が異なるので、そのまま今のヘルメットを使い続けるのが難しく、新しい病院で作り直しになる可能性が高いんです。」
「作り直しですか…」佐藤さんの声に、また少し影が差しました。
「そうなんです。ですから、転院先の病院を探す際には、まず陽葵ちゃんが使っているベリー社のヘルメットの取り扱いがあるかどうかを確認するのが最初のステップになりますね。それから、これまでの治療経過や現在の状況を正確に伝えるために、僕の方で紹介状(診療情報提供書)をしっかり書かせていただきます。陽葵ちゃんのこれまでのデータも全てお渡ししますので、安心してください。」
僕は、陽葵ちゃんのカルテを指差しながら続けました。 「引っ越し先でいくつかの候補の病院が見つかったら、事前に電話などで問い合わせてみてください。その際には、
- ベリー社のヘルメット治療を引き続き受けられるか
- 現在の月齢(年齢)でも受け入れは可能か
- これまでの治療経過を伝えるために何が必要か(紹介状やデータの要否など)
- 費用はどのくらいか といったことを確認するとスムーズですよ。」
「なるほど…先生が紹介状を書いてくださるんですね。少し安心しました。」佐藤さんの表情が、少し和らぎました。
「もちろんです。陽葵ちゃんが新しい場所でも安心して治療を続けられるように、最大限の協力をします。それに、僕はベビーヘルメット治療だけでなく、子どものアレルギーや、お薬だけに頼らない漢方治療も専門としています。そして何より大切にしているのは、病気になる前の『予防』です。ワクチン接種の重要性などもお伝えしてきましたが、新しい土地でも、信頼できる小児科の先生を見つけて、陽葵ちゃんの健やかな成長をしっかりサポートしてもらってくださいね。」
「はい、先生。本当にありがとうございます。教えていただいたことを元に、新しい病院を探してみます。」佐藤さんは、少し前向きな気持ちになれたようでした。
僕たち小児科医は、子どもたちの成長を継続して見守りたいという気持ちが常にありますが、ご家族の状況によって、それが叶わないこともあります。そんな時でも、子どもにとって最善の治療が続けられるように、しっかりと次の先生へバトンを繋ぐのが私たちの役目だと思っています。
当院から他の病院へヘルメット治療の転院をされる方へ
もし、当院でヘルメット治療を受けられている方で、引っ越しなどのご事情で転院をお考えの場合は、遠慮なくご相談ください。
- 早めのご相談を: 転院が決まったら、できるだけ早めに担当医にお伝えください。紹介状の準備や、転院先を探すためのアドバイスなど、時間に余裕をもって対応できます。
- ヘルメットメーカーと治療経過の共有: 当院で使用しているヘルメットのメーカー情報や、これまでの治療経過、頭のサイズのデータなどをまとめた紹介状を作成し、お渡しします。
- 転院先候補への確認事項:
- 現在使用中のメーカーのヘルメットの取り扱いがあるか。
- 治療の引き継ぎは可能か。
- 紹介状やデータの他に、必要なものはあるか。
- 費用について。
- 不安なことは何でも聞いてください: 転院に関する手続きや、新しい病院での治療についてなど、分からないことや不安なことがあれば、どんなことでもご相談ください。
ユアクリニックお茶の水では、たとえ短い間のお付き合いになったとしても、関わらせていただいた全ての赤ちゃんとご家族が、安心して次のステップに進めるよう、全力でサポートいたします。そして、ヘルメット治療以外の、例えばアレルギーのご相談や漢方治療、予防接種など、お子さんのことで何かお困りの際には、いつでも頼っていただける存在でありたいと願っています。
陽葵ちゃんが新しい土地でも元気に、そしてすくすくと成長されることを、心から応援しています!