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「自分は大丈夫」が危ない!アメリカで麻しん大流行! 赤ちゃんを守るワクチンの話

[2025.06.02]

こんにちは!今日は千代田区、朝から少し曇り空で、梅雨入りも近いのかな?と感じるお天気ですね。

皆さんいかがお過ごしですか? ユアクリニックお茶の水の小児科専門医、杉原です。

今日は、海の向こうアメリカで麻しん(はしか)がすごく流行っていて、他人事じゃないんですよ、というお話をさせてください。ベースの情報はMRICという医療記事からとっています。

特に小さなお子さんを持つパパさん、ママさんにはぜひ知っておいてほしい大切な内容ですので小児科向きに書き換えています。

まるで忍者!?麻しんウイルスの恐るべき感染力

最近、クリニックの診察室でこんな会話がありました。

「先生、こんにちは!今日は1歳になったばかりの娘、陽葵(ひまり)の定期健診と、予防接種の相談に来ました」と、湊斗(みなと)パパと陽菜(ひな)ママがいらっしゃいました。陽葵ちゃんは、くりくりとした目で周りをキョロキョロ。元気いっぱいです。

「陽葵ちゃん、大きくなりましたね!こんにちは」と私。

陽菜ママが少し心配そうな顔で切り出しました。「先生、最近ニュースでアメリカで麻しんが流行っているって見たんです。なんだかすごく感染力が強いって…。陽葵はまだ小さいし、心配で…」

「そうですね、陽菜ママ。ご心配なのもよくわかります。麻しんはね、本当に感染力が強いウイルスなんです。CDC、つまりアメリカの厚生労働省みたいなところの発表だと、麻しんの免疫がない人が麻しんウイルスにさらされると、10人中9人が感染してしまうほどなんですよ」

「えぇ!10人中9人も!?」湊斗パパも驚いた様子です。

「そうなんです。空気感染といって、くしゃみや咳でウイルスが空気中にふわふわーっと漂って、それを吸い込んじゃうだけでうつってしまうんです。まるで、目に見えない小さな忍者が、気づかないうちにそばに来てシュシュっと術をかけるみたいにね。だから、同じ部屋にいるだけでも感染する可能性があるんですよ」

アメリカで何が起きているの?「麻しんゼロ」じゃなかったの?

「先生、でも日本もアメリカも、以前に麻しんは『排除状態』になったって聞いたことがあるんですが…それはどういうことだったんですか?」湊斗パパが質問します。

「いい質問ですね、湊斗パパ。排除状態というのは、みんなで力を合わせて、その国から麻しんウイルスを追い出したぞ!もう国内にはいないぞ!っていう状態になったということなんです。日本は2015年に、アメリカはもっと早く2000年にそれを達成しました。これは、たくさんの人が麻しんのワクチンを打ったおかげなんですよ」

「じゃあ、なんでまたアメリカで流行しているんですか?」陽菜ママはますます心配そうです。

「それがね、最近アメリカではワクチンを打つ人が少し減ってきているんです。特にMMRワクチン、これは麻しん・おたふくかぜ・風しんの3つの病気を予防する混合ワクチンなんですが、この接種率が目標よりも下がってしまっているんですね」

私は、陽葵ちゃんがわかりやすいように、おもちゃのブロックを使いながら説明しました。

「例えばね、この赤いブロックがワクチンを打った人で、青いブロックが打っていない人だとしましょう。周りが赤いブロックでいっぱいだと、もし麻しんウイルス(別の色のおもちゃを指して)が入ってきても、青いブロックの人までなかなかたどり着けないですよね?これが『集団免疫』といって、みんなでバリアを作って病気の広がりを抑えるイメージです。でも、ワクチンを打たない青いブロックが増えてくると、ウイルスがその人たちの間で簡単に広がってしまって、あっという間にたくさんの人が病気になってしまう。これを『アウトブレイク』や『クラスター』って言います。火事で例えると、小さな火種(感染者)が周りに燃え移って、あっという間に広がっちゃう感じですね」

「WHO(世界保健機関)も、アメリカでの流行は『公衆衛生に重大な影響を及ぼす可能性がある異常な出来事だ』と言っています。今年の報告数は、もう去年の数を大きく超えちゃっているんですよ」

日本は大丈夫?忍び寄る麻しんの影

「じゃあ、日本はまだ大丈夫なんですか?」湊斗パパが尋ねます。

「日本もね、アメリカほどではないけれど、海外から帰ってきた人だけじゃなくて、国内で麻しんにかかった人の報告がポツポツと出てきています。国立感染症研究所の報告だと、今年の感染者数は少しずつ増えてきているんです。日本も、麻しんの第1期のワクチン接種率が、目標の95%をちょっと下回ってしまう年があったり、地域によってはもっと低いところもあるんです」

「えっ、そうなんですか…」陽菜ママの声が小さくなります。

「だから、『アメリカの話でしょ?うちは関係ないわ』とは思わないでほしいんです。ワクチンを打っていない人が増えれば、日本でもいつ大きな流行が起きてもおかしくないんですよ」

「ワクチン、ちょっと怖い…」その気持ち、わかります。でも…

「先生、正直に言うと…ワクチンって、副反応とか聞くとちょっと怖いなって思う気持ちもあって…。それに、陽葵は今まで大きな病気もしたことないし、大丈夫かなってちょっと思っちゃったり…」陽菜ママが打ち明けてくれました。

「うんうん、そうですよね。色々な情報があって、何を信じたらいいか分からなくなったり、不安に思う気持ちはよくわかりますよ」と、私は頷きました。

「実はね、ワクチンをためらってしまうのには、大きく分けて3つの『壁』があると言われているんです。

  1. 『信用』の壁:これは、国や医療機関、それからワクチンそのものの効果や安全性に対する信頼が揺らいでしまうことです。『本当に効くのかな?』『副作用が怖いな』って。
  2. 『利便性』の壁:ワクチンを打つ場所が遠かったり、時間が合わなかったり、お金がかかったり…。例えば、コロナワクチンも、今は一部の人以外は自己負担で結構高額ですよね。そうすると、どうしても足が遠のいてしまう。
  3. 『自己満足』の壁:これが、さっき陽菜ママがおっしゃった『うちは元気だから大丈夫』とか、『かかったことないからいらないや』という気持ちに近いかもしれません。『自分には必要ない』と判断してしまうことですね。インフルエンザワクチンでも、『打ってもかかるから意味ないよ』なんておっしゃる方もいました。

でもね、麻しんは本当に怖い病気なんです。高熱や発疹だけじゃなくて、肺炎や脳炎といった重い合併症を引き起こすこともあって、最悪の場合、命に関わることもあるんです。アメリカでは、今回の流行で亡くなったお子さんもいて、その子もワクチンを打っていなかったそうです」

私のちょっとした体験談

これは米国にすんでいる女医さんの記事に書いてあったことなんですけど」と、私は続けます。

「女医さんが『これからインフルエンザとコロナのワクチンを打ちに行くんだ』って言ったら、周りの友人たちが『え、なんでワクチンなんか打つの?』って、びっくりされたことがあるんです。『コロナのワクチンなんて打ってないよ』『打たなくても元気だよ』なんて言われてしまって。医療従事者だから打つのは当たり前でしょう、という感じでその場は収まったんですが、ワクチンを打たないという選択が、思ったよりも身近にあるんだなと実感した出来事でした」なんてエピソードがあったんですよ。

「彼女とは一度お会いしたことがあったので人ごとには感じられなかったんです。でもね、WHOの報告によると、ワクチンのおかげで、1974年以来、世界中で1億5400万人もの命が救われたそうなんです。特に、麻しんワクチンは、その中でも一番多くの子どもたちの命を守ってきたんですよ。ワクチンで救われた命の60%も占めているんです」

「1億5400万人…!すごい数ですね…」湊斗パパも陽菜ママも、驚きと安堵が入り混じったような表情です。

陽葵ちゃんのために、そしてみんなのためにできること

「陽葵ちゃんのような小さな赤ちゃんは、まだ自分で自分の体を守る力が弱いですよね。だからこそ、周りの大人がワクチンを打って、病気が流行しないように守ってあげることが大切なんです。そして、陽葵ちゃん自身も、適切な時期にきちんとワクチンを打つことで、麻しんのような怖い病気から守ってあげることができます」

私は陽葵ちゃんに優しく語りかけました。「陽葵ちゃん、ワクチンはね、体を守るための小さなヒーローなんだよ。ちょっとチクッとするかもしれないけど、陽葵ちゃんが元気に大きくなるために、そして周りのお友達を病気から守るためにも、とっても大切なことなんだ」

「ユアクリニックお茶の水では、予防接種のスケジュール管理や、今日みたいに皆さんの疑問や不安にしっかりお答えすることを大切にしています。もちろん、ベビーヘルメットのご相談や、私自身が得意としている小児アレルギー、小児漢方についても、いつでも相談してくださいね。でも、どんな治療よりも、まずは病気にかからないようにする『予防』が一番大切だと、私はいつも思っています。そして、そのためにはワクチンを安全に、安心して受けてもらうことが何よりも重要なんです」

「先生のお話を聞いて、よくわかりました。陽葵のワクチン、しっかりスケジュール通りに進めていこうと思います」湊斗パパが力強く言ってくれました。

「私も、不安がなくなりました。ありがとうございます」陽菜ママも笑顔です。

麻しんは、決して過去の病気ではありません。ワクチン接種率が下がれば、いつでも、どこでも流行する可能性があります。

「自分は大丈夫」「うちの子は大丈夫」と思わずに、ぜひワクチンの大切さについて、もう一度考えてみてください。そして、分からないことや不安なことがあれば、いつでもかかりつけの小児科医に相談してくださいね。

みんなで大切な子どもたちを、そして未来を守っていきましょう。

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