ほっぺが赤くなったら…りんご病ってどんな病気?妊婦さんは特に気をつけて!
今週・先週と、りんご病になっている子を数名診察しました。すこしこの地域で流行があるかもしれません。
そこで今日は、「りんご病」についてお話したいと思います。正式には「伝染性紅斑(でんせんせいこうはん)」という名前ですが、お子さんのほっぺがりんごみたいに赤くなるから、「りんご病」って呼ばれているんですよ。そして、この病気、お子さんだけでなく、ご家族、特に妊婦さんがいらっしゃるご家庭では、少し注意していただきたいことがあるんです。
ある日突然、ママの心配事、そしてお腹の赤ちゃんのこと…
これはフィクションです。
ある日の午後、ユアクリニックお茶の水に、少し心配そうな表情のママ、美咲さんが、元気いっぱいの3歳のお子さん、湊(みなと)くんの手を引いてやってきました。湊くんのほっぺは、まるで絵本に出てくるりんごのように、ほんのり赤く染まっています。
「先生、湊のほっぺ、なんだか真っ赤で…。熱はないんですけど、これって何か病気でしょうか?」
美咲さんは不安そうに尋ねました。そして、少し間をおいて、こう付け加えました。
「実は私、今、妊娠8ヶ月なんです…。もし、湊の病気が私にうつってしまったら、お腹の子に影響がないか、すごく心配で…。」
美咲さんの言葉に、私はすぐに状況を理解しました。りんご病は、お子さんにとってはほとんど問題にならない病気ですが、妊婦さんが感染すると、まれにお腹の赤ちゃんに影響が出ることがあるからです。
私は湊くんの様子をじっくりと診察しました。元気いっぱいに診察室を走り回る湊くん。熱もなく、食欲もいつも通りとのこと。ほっぺの赤み以外には、特に気になる症状は見られません。
「美咲さん、湊くんのほっぺの赤み、もしかしたら『りんご病』かもしれませんね。」
私の言葉に、美咲さんは少し驚いた表情をしました。
「りんご病ですか?初めて聞く病気です…。そして、私のお腹の子に影響って…?」
りんご病って、どんな病気?そして妊婦さんはなぜ注意が必要なの?
りんご病は、パルボウイルスB19というウイルスが原因で起こる、お子さんによくある病気です。一番の特徴は、湊くんのように、ほっぺが真っ赤になること。まるで熱を出しているみたいに見えるけど、ほとんど熱は出ないんです。
「このウイルスはね、咳やくしゃみでうつることが多いんですよ。でもね、お子さんの場合、ほっぺが赤くなる頃には、もう他の人にはうつりにくくなっていることが多いんです。だから、もし湊くんがりんご病だとしても、今から美咲さんにうつる可能性はかなり低いんですよ。」
私がそう説明すると、美咲さんは少し安心したようでした。
「そうなんですね。じゃあ、幼稚園は行っても大丈夫でしょうか?」
「はい、ほっぺが赤くなる頃には、ほとんど他の子にうつす心配はないので、元気があれば登園しても大丈夫ですよ。ただ、もし熱が出たり、元気がなくなったりしたら、無理せずお休みしてくださいね。」
そして、美咲さんの最大の心配事である「妊婦さんへの影響」について、私は丁寧に説明しました。
「妊婦さんがりんご病にかかると、まれに胎児(たいじ)に影響が出ることがあるんです。特に妊娠20週くらいまでに感染すると、ごくまれですが、赤ちゃんが貧血(ひんけつ)になったり、心臓に水がたまったりする『胎児水腫(たいじすいしゅ)』という状態になる可能性があります。」
美咲さんは、私の説明を真剣な表情で聞いています。
「でも、心配しすぎないでくださいね。あくまで『まれに』起こることですし、湊くんのほっぺが赤くなった今、美咲さんに感染する可能性は低いとお話しましたよね。もし、美咲さんが過去にりんご病にかかったことがあるなら、体の中に抗体(こうたい)といって、ウイルスと戦う力があるので、もう感染することはありません。」
「抗体ですか…?」
「はい、そうですね。念のため、美咲さんがりんご病の抗体を持っているか、血液検査で確認することもできますよ。もし抗体がなければ、ごくまれにですが、これから感染する可能性もゼロではないので、しばらくは湊くんが使った食器を分けたり、手洗いをしっかりしたり、少しだけ注意して生活すると良いでしょう。でも、過剰に心配する必要はありませんからね。」
私は美咲さんの不安な気持ちに寄り添いながら、ゆっくりと説明を続けました。
りんご病の「見守り方」と妊婦さんの安心のために
りんご病は、基本的には特別な治療をしなくても、自然に治っていく病気です。でも、少し注意してあげてほしいことがあります。
「湊くんの場合、ほっぺが赤い以外は元気そうですが、りんご病は、その後、腕の外側や太ももの前の方などに、網の目のような、またはレースのような模様の赤い発疹(ほっしん)が出ることが特徴です。これを『レース状紅斑(こうはん)』と呼ぶんです。かゆみが出る子もいるので、もし湊くんがかゆがっていたら、かゆみ止めのお薬を処方することもできますから、遠慮なく言ってくださいね。」
美咲さんは、熱心に私の話を聞いてくれます。
「それからね、お風呂や運動には少し注意してあげてください。」
私はそう言って、美咲さんにパンフレットを見せながら説明しました。
「熱いお風呂に長く入ったり、激しい運動で体が熱くなったり、日光に長時間当たったりすると、ほっぺの赤みや、体のレース状の赤い発疹が一時的に強く出ることがあるんです。だから、お風呂は短時間で済ませたり、お外で遊ぶ時は日陰で休憩を挟んだり、工夫してあげてくださいね。」
美咲さんは、「なるほど!」と納得した様子で頷きました。
そして、美咲さんの不安を解消するために、もう一度、妊婦さんへの注意点を確認しました。
「美咲さん、もしご心配でしたら、今かかっている産婦人科の先生にも、湊くんがりんご病の可能性があることをお伝えして、相談してみてください。必要であれば、産婦人科の先生と連携して、私もサポートさせていただきますから、一人で抱え込まないでくださいね。」
美咲さんは、私の言葉に深く頷き、表情がとても明るくなりました。
「ありがとうございます、先生。なんだかとても安心しました。産婦人科の先生にも相談してみます。」
美咲さんと湊くんは、安心した表情でユアクリニックお茶の水を後にしました。
不安になったら、またユアクリニックお茶の水へ
りんご病は自然に治る病気とは言っても、保護者の方にとっては心配なこともありますよね。特に、ご家族に妊婦さんがいらっしゃる場合は、なおさらです。
「もし、湊くんのほっぺの赤みがすごく強くなったり、かゆみがひどくなったり、あとは高熱が出たり、急に元気がなくなったりするようなことがあれば、またいつでもユアクリニックお茶の水を訪れてくださいね。心配なことがあったら、どんな小さなことでも構いません。いつでも相談してください。」
小児科医として、私はお子さんたちの健康を第一に考えています。りんご病のように、ほとんどが自然に治る病気でも、保護者の方にとっては不安なものです。特に、妊婦さんがいらっしゃるご家庭では、その不安はより一層大きくなることでしょう。そんな時こそ、私たち小児科医が皆さんの心に寄り添い、安心を提供することが大切だと考えています。
当院では、お子さんのアレルギーや漢方治療にも力を入れていますが、何よりも大切にしているのは「予防」です。ワクチン接種もその一つ。お子さんが安全に、そして安心して予防接種を受けられるよう、スタッフ一同、日々努力しています。
何か心配なことがあれば、どんな小さなことでも構いません。ユアクリニックお茶の水は、いつでもお子さんと保護者の皆さんの味方です。お気軽にご相談くださいね。