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溶連菌感染症後の尿検査必要性について

[2025.06.09]

ユアクリニックお茶の水の杉原です。

今日は、お子さんがかかることのある「溶連菌感染症」の後に、まれに起こる合併症「溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSGN)」について、そして、その病気を防ぐための尿検査の必要性について、現在の医学的な見解に基づいてお話ししたいと思います。

溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSGN)とは?

「溶連菌感染後急性糸球体腎炎(PSGN)」は、溶連菌という細菌に感染した後に、腎臓にある「糸球体(しきゅうたい)」という、体のいらないものをろ過して尿を作る部分が炎症を起こしてしまう病気です。この病気になると、体の中に余分な水分や塩分がたまってしまうため、尿の量が減ったり、尿に血が混じって赤くなったり(血尿)、尿の中に蛋白が出る(蛋白尿)といった症状が出ることがあります。重症になると、腎臓の働きが急激に悪くなり、将来的に腎臓の機能が低下した状態(慢性腎不全)になる可能性もあります。

尿検査は必要?賛成意見と反対意見

溶連菌感染症の後に、すべてのお子さんに尿検査を行うべきかについては、専門家の間でも様々な意見があります。

<尿検査を行うべきという意見(賛成意見)>

  1. PSGNの重症化を防ぐため:PSGNは、急速に腎臓の機能が悪くなることがあるため、早期に発見して適切な治療をすることで、重症化を防げると考えられます。
  2. 症状がない場合もあるから:PSGNの中には、症状がほとんどなく、ご家族も気づかないうちに病気が進行してしまうケースがあります。このような「無症候性(むしょうこうせい)」のケースを早く見つけるためには、検査が有効だと考えられます。
  3. 早期治療の機会を逃さないため:もしPSGNを早く見つけることができれば、血圧が高くなるのを抑えたり、むくみを管理したり、まだ体に残っている溶連菌を抗菌薬でしっかり除菌するといった治療ができるため、病気の進行を食い止めることができる可能性があります。

<ルーチンでの尿検査は不要という意見(反対意見)>

  1. PSGNになるお子さんが減っているから:最近では、特に日本のような先進国では、PSGNになるお子さんが非常に少なくなっています。そのため、すべてのお子さんに尿検査を行うのは、費用に対して効果が低いのではないか、という考え方があります。
  2. 自然に治ることも多いから:PSGNの多くは、特別な治療をしなくても、自然に治ることが多いです。特に、お子さんの場合は、ほとんどのケースで回復すると言われています。
  3. 医療資源をもっと有効に使うため:病院で使える人や物の資源は限られています。すべてのお子さんに検査をするよりも、本当に検査が必要な、症状があるお子さんや、もともと腎臓の病気があるなど、病気になるリスクが高いお子さんに絞って検査を行う方が、医療資源を効率的に使えるという考え方です。
  4. 不必要な心配を増やさないため:尿検査で少し異常が見つかったとしても、それが本当に病気につながるわけではない「偽陽性(ぎようせい)」という結果が出ることもあります。このような結果は、患者さんやご家族に不必要な不安を与えてしまう可能性があります。

現在の医学的な見解(EBMに基づく結論)

現在の医学的な根拠(エビデンス)を総合的に見ると、溶連菌感染症にかかったすべてのお子さんに対して、定期的に尿検査を行うことは、今は推奨されていません。

その理由としては、

  • 先進国ではPSGNになるお子さんがとても少ないこと。
  • 症状が出ているPSGNの多くは、むくみや高血圧、肉眼で見てわかる血尿といった症状で発見できること。
  • 費用と効果のバランスを考えると、すべてのお子さんに行うのは適切ではないこと。
  • 現在の主要な小児科のガイドラインでも、一律の尿検査は勧められていないこと。

などが挙げられます。

当クリニックでの推奨アプローチ

ユアクリニックお茶の水では、お子さんの健康を第一に考え、以下の方法で対応しています。

  • 症状がある場合に検査:お子さんにむくみ、血圧が高い、肉眼で見てわかる血尿(おしっこが赤い)などの症状が見られた場合に、詳しく尿検査を行います。
  • リスクが高いお子さんは個別に判断:もともと免疫の病気があるお子さんや、過去に腎臓の病気をしたことがあるお子さんなど、PSGNになるリスクが高いと考えられる場合は、個別に尿検査の必要性を判断します。
  • ご家族への説明と指導:溶連菌感染症の治療後、ご自宅でお子さんの様子をよく見ていただき、もしPSGNの症状と思われる変化があった場合には、すぐにユアクリニックお茶の水を受診していただくよう、しっかりとお話しさせていただきます。

この方法によって、本当に検査が必要なお子さんを見逃すことなく、限られた医療資源を大切にしながら、効率的に医療を提供できると考えております。

お子さんのことで何か心配なことがあれば、いつでもお気軽にご相談ください。

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