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咳のガイドラインにもとづいて。

[2025.06.11]

咳は、体にとって大切な防御反応で、気道に入った異物や分泌物を外に出す働きがあります。でも、長く続く咳はつらいですよね。

じつは、咳の治療にはガイドラインがあるんです。このガイドラインは、そんな咳の原因を見つけて、どう治療していくかをまとめたものです。

1. 咳の種類と期間

咳は続く期間によって3つに分けられます。

  • 急性咳嗽(きゅうせいがいそう): 3週間未満の咳。ほとんどが風邪などの感染症が原因です。
  • 遷延性咳嗽(せんえんせいがいそう): 3週間以上8週間未満の咳。これも感染症のあとに出ることが多いです。
  • 慢性咳嗽(まんせいがいそう): 8週間以上の咳。この場合は感染症以外の原因が多いです。

また、痰(たん)が出るかどうかで「乾性咳嗽(かせいがいそう)」(痰が出ないか、少ない)と「湿性咳嗽(しっせいがいそう)」(痰を伴う)に分けられます。湿性咳嗽の場合は、痰を減らすことが治療の目標になります。

 

2. 咳の診察で大切なこと

病院に行ったら、まず次のことを聞かれたり、検査をしたりします。

  • 問診: 咳がいつから、どんな時に、どんなふうに出るかなどを詳しく聞きます。周りに同じ症状の人がいるかどうかも重要です。
     
     
  • 胸のX線検査: 肺炎や肺がん、結核など、重い病気が隠れていないかを確認します。
     
     
  • 聴診: 肺の音を聞いて、ぜんそくのような「ぜいぜい」という音(喘鳴:ぜんめい)がないかを確認します。
     

3. 長く続く咳の主な原因と治療

咳が長く続く場合(遷延性・慢性咳嗽)には、いくつか主な原因が考えられます。

  • 感染後の咳 (感染後咳嗽)

     
    • どんな咳?: 風邪などの呼吸器感染症の後に続く咳で、だんだん良くなることが多いです。
       
    • 治療: ほとんどは自然に治りますが、ひどい場合は咳止めやアレルギーの薬を使うことがあります。
       
  • 咳ぜんそく

     
    • どんな咳?: ぜいぜいする音(喘鳴)や息苦しさはなく、咳だけが唯一の症状のぜんそくです。夜中から明け方にかけて悪化しやすいのが特徴です。
       
    • 治療: ぜんそくの薬(吸入ステロイド薬など)が効きます。
       
  • アトピー咳嗽 (がいそう)

     
    • どんな咳?: 喉のイガイガ感を伴う乾いた咳で、アトピー体質の人に多いです。夜中や早朝、寝る前にひどくなりやすいです。
       
    • 治療: アレルギーの薬(抗ヒスタミン薬)やステロイド薬が効きます。
       
  • 副鼻腔気管支症候群 (ふくびくうきかんししょうこうぐん) (SBS)

     
    • どんな咳?: 慢性的な鼻炎(副鼻腔炎)と気管支の炎症が一緒に起こる病気です。痰がからむ咳が多いです。
       
    • 治療: マクロライド系の抗菌薬を少量、長く使うことがあります。
       
  • 胃食道逆流症 (GERD)

     
    • どんな咳?: 胃酸や胃の内容物が食道に逆流することで起こる咳です。胸やけなどの症状を伴うこともありますが、咳だけが出ることもあります。食後に悪化しやすいです。
       
    • 治療: 胃酸を抑える薬(プロトンポンプ阻害薬)が使われます。
       

4. 小児の咳について

子どもの咳は大人と少し違う点があります。

  • 原因: ウイルス性の風邪がほとんどの原因ですが、ぜんそくやアレルギー性鼻炎、気道異物(誤って何かを吸い込んでしまうこと)なども考えられます。
     
     
  • 年齢による違い:
    • 乳幼児: 先天性の病気やクループ(犬が吠えるような咳)、急性細気管支炎などに注意が必要です。
       
       
    • 幼児期: 気道異物が多い時期です。
       
       
    • 学童期以降: 心因性の咳(ストレスなどによる咳)が増えることがあります。
       
  • 抗菌薬: 子どもの急性咳嗽のほとんどはウイルス性なので、基本的に抗菌薬は必要ありません。
     

5. 咳の治療薬について

  • 原因に合わせた薬: 咳の正確な原因を見つけて、それに合った薬を使うことが一番大切です。
     
  • 咳止め(中枢性鎮咳薬): 原因を問わず咳を抑える薬ですが、必要な咳まで止めてしまうことや副作用があるため、使うのは最小限にすることが望ましいとされています。
     

6. 病院で受けられる専門的な検査

必要に応じて、次のような専門的な検査を行うことがあります。大人では可能でも、小さな子どもには難しい検査が多いのが残念です。

  • 気道可逆性・過敏性検査: ぜんそくや咳ぜんそくの診断に役立ちます。
     
  • 咳受容体感受性検査: 咳が出る仕組みを詳しく調べる検査です。
     
  • 胸部CT検査: 胸のX線検査では分からないような、より詳しい肺の状態を確認します。
     
  • 内視鏡検査: 喉や気管支の中に異常がないか、カメラで直接確認します。
     

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