赤ちゃんの頭の形を守る!ベビーヘルメット治療で失敗しない4つのポイント
診察室で毎日たくさんの赤ちゃんと向き合っていると、パパやママの「我が子を思う熱意」に、私自身が胸を打たれることがよくあります。特に、赤ちゃんの頭の形を整えるヘルメット治療に取り組んでいるご家族。本当に、毎日お疲れ様です。
今日は、そんな頑張る皆さんに、ヘルメット治療を成功させるための「ちょっとしたコツ」と、意外と見落としがちな「落とし穴」についてお話ししようと思います。教科書的な説明書には書ききれない、現場の医師だからこそ伝えたい、生きたアドバイスです。
少しだけ耳の痛い話もあるかもしれませんが、すべては可愛い赤ちゃんの未来のため。コーヒーでも飲みながら、リラックスして読んでくださいね。
ヘルメット治療を成功させるためのヒントと注意点
ヘルメット治療を検討している、または治療中のご家族に向けて、治療を成功に導くための重要なポイントと、陥りやすい注意点について解説します。
1. ヘルメット治療におけるベルトの締め具合
治療を始めて最初にぶつかる壁、それがベルトの締め具合です。
赤ちゃんの柔らかいあたまにヘルメットをぎゅっと絞る様子を見ると、「苦しくないかな?」「かわいそうだな」って思っちゃいますよね。その気持ち、痛いほどわかります。ついつい、指が一本、二本と入るくらい緩めたくなるものです。
でも、あえて言わせてください。 その「緩み」が、治療のすべてを無駄にしてしまうかもしれません。
車に乗る時のチャイルドシートを想像してみてください。 「窮屈そうでかわいそうだから」といって、ベルトをダルダルにしていたらどうなるでしょう? いざという時、赤ちゃんは座席から放り出されてしまいますよね。安全を守るための機能が、全く果たされないわけです。
ヘルメットも同じなんです。 ヘルメット治療は、頭の成長しようとする力を、正しい方向へ誘導する治療です。ベルトが緩いと、赤ちゃんが動くたびにヘルメットがくるくると回ってしまいます。これでは、治したい部分に適切な圧力がかかりません。
心を鬼にして……とまでは言いませんが、「これは愛のチャイルドシートだ」と思って、しっかりと締めてあげてください。それが結果的に、治療期間を短くし、赤ちゃんを早く自由にしてあげる近道なんですよ。
2. ヘルメット装着時のレール合わせ
次に、ちょっとメカニカルな話ですが、とても重要なヘルメットの重なり部分についてです。
多くのヘルメットは、サイズ調整ができるように、プラスチックの板が重なり合う構造になっています。ここ、よく見るとレール式になっていますよね。
ごくごくまれに見かけるのが、この上下を逆につけてしまっているケースです。 慌ただしい朝、赤ちゃんがぐずっている中での装着……焦る気持ちはわかります。でも、ここだけは深呼吸して確認してください。
もし上下を間違えて無理やり押し込むと、接合部分の「出っ張り」が、ヘルメットの内側に飛び出してしまうことがあります。 想像してみてください。靴の中に小石が入ったままマラソンをするようなものです。赤ちゃんのデリケートな頭の皮膚を、その出っ張りが傷つけてしまったら……。
そんな悲しい肌トラブルを防ぐためにも、装着時は「パズルのピースを合わせるように」慎重に。カチッと正しくハマる感覚を大切にしてくださいね。
3. ヘルメット治療の卒業時期
治療が進み、頭の形がきれいになってくると、親御さんの欲が出てくることがあります。 「もう少しで完璧なまん丸になるかも!」 「あとちょっと、あと一ヶ月頑張れば……!」
いわゆる、ラストスパートですね。 でも、ここで一つ、私が診てきた経験からお伝えしたいことがあります。「頑張りすぎ」には副作用があるんです。
卒業間近になって無理に装着時間を長くしたり、圧をかけ続けたりすると、稀にですが「耳の周りの骨」だけがポコッと出っ張ってくるお子さんがいます。 これを見たお母さんが真っ青になって駆け込んでくることがありますが、安心してください。ヘルメットを卒業して圧迫がなくなれば、自然と元に戻ります。
人間の体は機械ではありません。100点満点を目指して98点から無理やり100点にしようとすると、どこか別の場所にひずみが出ることがあるんです。 「80点〜90点取れたら花丸!」くらいの気持ちで、引き際を見極めるのも、実はとても大切な親の役目だったりします。お子さんの笑顔が一番ですからね。
4. ヘルメット治療で出来ること、出来ないこと
最後に、これは誤解がないようにしっかりお伝えしておかなければなりません。 ヘルメット治療が得意なのは、以下の2つです。
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左右非対称(斜頭症):左右のバランスを整えること
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短頭(絶壁):後頭部を丸くすること
これに関しては、効果が実証されています。 しかし、「頭のてっぺんの微妙なデコボコ」や「生まれつきの骨の細かな隆起」など、それ以外の形状に関しては、正直なところデータがありませんし、おすすめもしていません。
ヘルメットは、頭の形を大まかに整えるための「矯正器具」であって、どんな形でも自由自在に粘土のように作れる「魔法の帽子」ではないのです。 何が治せて、何が治せないのか。ここを最初に正しく理解しておくと、治療後の満足度がぐっと上がります。
最後に
色々と細かいことを言いましたが、ヘルメット治療に取り組んでいる時点で、皆さんは十分すぎるほどお子さんを愛している素晴らしいパパ・ママです。
不安なこと、わからないことがあれば、いつでもユアクリニックお茶の水にご相談ください。 私たちは、単に頭の形を治すだけでなく、ご家族が安心して子育てできるよう、伴走したいと願っています。
あまり気負いすぎず、赤ちゃんのモチモチのほっぺに癒やされながら、一緒に進んでいきましょうね。
