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「水痘(みずぼうそう)」の隠れた顔~未来まで見据えた予防が、お子さんの笑顔を守る~

[2025.05.31]

「水痘(みずぼうそう)」という病気をご存知でしょうか?

水痘は、「水痘・帯状疱疹ウイルス」というウイルスが原因で起こる、感染力がとても強いVPD(ワクチンで防げる病気)です。多くの場合、比較的軽い症状で済むと思われがちですが、実は無視できない数の子どもたちが重症化し、毎年命を落とすこともあります。

まるで、見た目は可愛らしいけれど、実は毒を持つキノコのように、水痘も甘く見てはいけない病気なんです。この「見えない危険」からお子さんを守るには、ワクチンが何よりも大切になります。

水痘がどんな病気なのか、具体的にイメージしにくいかもしれませんね。そこで今日は、ユアクリニックお茶の水にやってきた、ある家族のお話を通して、水痘予防の大切さをお伝えしたいと思います。

あとで「ゾッ」とした!~ミオちゃんと水痘の思わぬ落とし穴~

「先生、こんにちは。ミオのことで相談があります。」

ある雨の日の午後、ユアクリニックお茶の水の診察室に、5歳になるミオちゃんと、お母さんがやってきました。ミオちゃんは、少し元気がない様子で、お母さんの服の裾をぎゅっと握っています。

「ミオちゃん、どうしたのかな?」と私が尋ねると、お母さんが少し困った顔で話し始めました。

「実は、ミオがこの間、水痘にかかってしまって…。予防接種、1回しか受けていなかったんです。熱もそんなに高くなくて、ポツポツも少なかったから、これで終わりかなと思っていたら…」

お母さんは言葉を濁しました。

「それで、どうされたんですか?」と私が促すと、お母さんはため息をついて続けました。

「熱が下がって、ポツポツがかさぶたになった後も、ずっと体がだるそうで、食欲もあまりなくて…。お友達は元気なのに、ミオだけ元気がないのが気になって、インターネットで調べてみたら、水痘って実はすごく怖い病気なんだって知って…。」

私は、ミオちゃんの様子を見ながら、水痘について改めて説明を始めました。

「ミオちゃん、水痘にかかって、辛かったね。水痘はね、虫刺されみたいな赤いポツポツが出てくる病気なんだ。最初は痒いんだけど、それが水ぶくれになって、やがて黒いかさぶたになるんだよ。」

ミオちゃんは、自分の腕の、かすかに残るかさぶたの跡を見つめています。

「水痘は、多くの場合、そこまで重くならないと思われがちですが、実は肺炎(肺という呼吸をする大切な臓器が炎症を起こす病気)や脳炎(脳が炎症を起こす病気で、意識がなくなったり、手足が動きにくくなったり、最悪の場合は命に関わることもある、とても怖い病気です)、皮膚の細菌感染症(皮膚にバイキンが入って、赤く腫れたり膿んだりすること)といった合併症(病気にかかった時に、別の病気が一緒に起こってしまうこと)を引き起こすことがあるんですよ。」

お母さんが不安そうな顔で尋ねました。「肺炎や脳炎にまで…?」

「はい。水痘ワクチンが導入される前は、日本では年間約3,000人もの子どもたちが重症化し、10人以上が命を落としていました。特に、アトピー性皮膚炎など、皮膚に病気のあるお子さんは、皮膚にウイルスが広がりやすく、重症化しやすい傾向があります。健康なお子さんでも、重症化する可能性はゼロではありません。」

私は、さらに深刻な話を続けました。

「そしてね、水痘に一度かかると、そのウイルスは体の中から完全に消え去るわけではないんです。息を潜めるように、神経細胞の中にずっと隠れて生き続けているんですよ。まるで、冬眠している熊さんのようにね。」

ミオちゃんは、不思議そうな顔をして聞いています。

「そして、何十年も経ってから、大人になって免疫力(体の防御システムのことです。悪い菌やウイルスから体を守ってくれる、いわば体の中の警察官みたいなものです)が下がった時に、その隠れていたウイルスが目を覚まして、神経を傷つけながら再び皮膚に現れることがあります。これが『帯状疱疹(たいじょうほうしん)』という病気なんです。帯状疱疹は、ピリピリとした激しい痛みを伴うことが多く、その痛みで日常生活がとても辛くなってしまう人もいるんですよ。」

お母さんはハッとしました。「ミオが将来、そんな辛い思いをする可能性があるなんて…。」

「そうなんです。水痘ワクチンは、1歳になったら1回目、そして1回目の接種から3ヶ月以上経ったら2回目を接種することで、水痘からお子さんを守り、将来の帯状疱疹のリスクも減らすことができます。定期接種として受けられるので、忘れずに2回接種することをおすすめしています。」

お母さんは、少し落ち着いた様子で言いました。「ミオのクラスにも、まだ2回目を受けていない子がいるみたいで…。正直、まだいいかなと思ってしまっていました。」

「よく聞くお話です。しかし、ワクチン接種率が下がってしまうと、麻しんの流行はいつでも起こりうるんです。お子さんの周りのみんながワクチンを受けていると、まるで大きなバリア(目に見えない壁のことです)ができて、病気のウイルスが入り込みにくくなります。これを『集団免疫』といいます。集団免疫があれば、ワクチンを打てない小さなお子さんや病気で体が弱いお子さんも、間接的に守られることになるんです。」

お母さんは、真剣な表情で私の話を聞いていました。

「先生、ミオの2回目のワクチン、すぐに予約させてください。ミオの笑顔を守るために、私ができることをしたいです。」

ミオちゃんは、少し痛そうな顔をしましたが、頑張って注射を受けました。

お母さんは、帰り際に私に言いました。「本当に先生に相談して良かったです。もし水痘の怖さを知らなかったら、後でゾッとしていたと思います。今後は、予防接種のスケジュールをしっかり管理します。」

ユアクリニックお茶の水から、あなたへ

ミオちゃんのお話のように、水痘は「かかってから後悔」するのではなく、「かかる前に予防」することが本当に大切な病気です。お子さんの笑顔を守るために、そして将来の帯状疱疹のリスクを減らすためにも、水痘の予防接種は2回受けることを強くおすすめします。

ユアクリニックお茶の水では、水痘をはじめとする予防接種について、丁寧に説明し、お子さんが安心して受けられるようサポートしています。お子さんのアレルギーや漢方についても、お気軽にご相談ください。

予防接種は、お子さんの未来を守る、大切なプレゼントです。不安なことや疑問に思うことがあれば、いつでもご相談ください。私たち小児科医は、お子さんたちが元気にすくすく育つことを心から願っています。

お子さんの予防接種スケジュールについてご不明な点がありましたら、お気軽にユアクリニックお茶の水までご相談ください。

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