いのちの設計図が教えてくれる、一番はじめの「お別れ」と「奇跡」の話
君は、自分がこの世に生まれてきたことがどれくらいすごいことか、考えたことはあるだろうか。学校の保健体育の授業で聞いたことがあるよって人もいるかもしれない。
実は、お母さんのお腹の中に命が宿っても、すべての赤ちゃんが無事に生まれてこられるわけじゃないんだ。悲しいけれど、途中で成長が止まってしまうこともある。それは誰のせいでもないし、防ぎようのない自然な出来事なんだ。今回は、そんな「命の始まり」に隠された、少し切なくて、でもとても大切な真実について話をしよう。
人間の体を作るには、設計図が必要なんだ。それを染色体と呼ぶよ。通常、この設計図は46枚セットで過不足なく揃っている。けれど、時々この枚数が多くなったり少なくなったりすることがあるんだ。これを染色体異常という。調査によると、1万件の妊娠のうち、約800件でこの設計図の枚数に違いがあることがわかっている。そして、そのうちの9割以上が、生まれてくる前にお別れ(流産)を選んでいるんだ。特に16番目の設計図が3枚ある「16トリソミー」などは、生まれてくる赤ちゃんには見られない、お腹の中だけの現象なんだよ。
ここで少し視点を変えてみよう。流産と聞くと「病気」や「不幸」というイメージを持つかもしれない。けれど、細胞のレベルで見てみると、それは「命が自らを守るための、とても精巧な仕組み」だということがわかる。設計図が大きく違っているとき、体は「このままでは外の世界で生きていくのが難しい」と判断して、あえて成長を止める道を選ぶんだ。一番多いのは「45,X」という、本来2枚あるはずの性別の設計図が1枚足りないケースだ。これもお腹の中ではよく起きることだけれど、実際に生まれてこられるのは、その中のたった1パーセントに満たない。つまり、お別れは、命がその子の苦しみを先回りして引き受けてくれた結果とも言えるんだよ。
もちろん、設計図に違いがあっても、元気に生まれてくる子たちもいる。21番目の設計図が3枚ある「ダウン症」や、性別の設計図の枚数が少し違う子たちだ。彼らは、設計図の「ゆらぎ」を抱えながらも、過酷なハードルを乗り越えて僕たちの前に現れてくれた「選ばれしランナー」なんだ。1万人のうち、無事に生まれてくるのは8500人。その中で、設計図に違いを持ちながら誕生するのはわずか50人ほど。そう考えると、今ここに君がいることも、街ですれ違う誰かが生きていることも、とてつもない確率を勝ち抜いた「最高にラッキーな出来事」だと思えてこないかな。
