学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン解説
学校のアレルギー疾患への取り組みガイドライン
保護者向けわかりやすい解説版 / 令和元年度改訂版をもとに作成
📋 もくじ
第1章 総 論
「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」に基づく取り組みについて
1. すべての子どもが安心して学校生活を送るために
アレルギーの病気を持つ子どもたちは、今やどのクラスにも必ずいると言っていいほど多くなっています。文部科学省が全国の公立小・中・高校を調べた調査(平成25年度)では、次のような割合の子どもたちがアレルギー疾患を持っていることがわかっています。
学校のアレルギー疾患 罹患率の比較
全国公立学校調査 平成25年度(赤)vs 平成16年度(グレー)
文部科学省委託「学校生活における健康管理に関する調査」をもとに作成
このグラフを見ると、アレルギー性鼻炎(花粉症など)が12.8%ともっとも多く、次いでぜん息5.8%、アレルギー性結膜炎5.5%、アトピー性皮膚炎4.9%、食物アレルギー4.5%と続きます。特に食物アレルギーやアナフィラキシーは前回調査より増加しており、すべての学校で対応の準備が必要です。
食物アレルギーは、これまで症状がなかった子どもでも突然発症することがあります。また、アナフィラキシー(命にかかわる重いアレルギー反応)は前触れなく起こることもあります。アレルギーのある子だけでなく、すべての学校・クラスでの対応準備が必要です。
2. アレルギー疾患とその取り組み
2-1 アレルギーってどんな病気?
アレルギーとは、本来は体を守るはずの免疫のしくみが、逆に体に悪さをしてしまう状態のことです。
健康な人の体は、ウイルスや細菌など「体に有害なもの」に対して免疫反応を起こして戦います。ところが「アレルギー体質」の人は、花粉や食べ物など本来は無害なもの(これをアレルゲンといいます)に対しても、免疫が過剰に反応してしまいます。
アレルギー反応のしくみ(イメージ図)
体内へ侵入
活性化する
反応が起きる
ゼーゼー・湿疹 など
子どものアレルギー疾患には主に次のものがあります。どれも「アレルギー反応」という同じしくみで起きますが、反応が起きる場所(皮膚・気道・目・鼻・消化管)によって疾患の名前が違うと考えるとわかりやすいです。
アレルギー疾患を起こしやすいかどうかは、遺伝(体質)と生活環境の両方が関係します。親や兄弟がアレルギーなら、体質が似ているため子どももなりやすいと考えられます。また、アレルギーは「治った」のではなく「よくなった」状態のことが多く、体質そのものはすぐには変わりません。ただし、適切な治療を続けることでほとんどの子どもが普通の学校生活を送れるようになります。
コラム:花粉症(季節性アレルギー)について
花粉症とは、花粉をアレルゲン(原因物質)として起こる季節性のアレルギー性鼻炎・結膜炎の総称です。スギ花粉が原因ならスギ花粉症、ブタクサが原因ならブタクサ花粉症と呼ばれます。
主な症状はくしゃみ・鼻水・鼻づまり・目のかゆみ・涙目です。皮膚のかゆみ・咳・耳のかゆみ・お腹の症状・体のだるさが出ることもあります。
近年は発症する年齢が下がってきており、小・中学生でも多くなっています。発症させないもっとも確実な方法は「花粉を吸わないこと」です。治療の選択肢も増えており、ダニとスギ花粉については舌下免疫療法(根本的な体質改善を目指す治療)が子どもにも使えるようになっています。
主な花粉の飛ぶ時期(関東地方の目安)
| 花粉の種類 | 1月 | 2月 | 3月 | 4月 | 5月 | 6月 | 7月 | 8月 | 9月 | 10月 | 11月 | 12月 |
|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
| ハンノキ(カバノキ科) | ◎ | ◎ | ○ | ○ | ||||||||
| スギ | △ | ◎ | ◎ | ○ | ||||||||
| ヒノキ科 | ○ | ◎ | △ | |||||||||
| イネ科(カモガヤなど) | △ | ◎ | ◎ | △ | ||||||||
| ブタクサ(キク科) | △ | ◎ | ○ | |||||||||
| ヨモギ・カナムグラ(キク科・アサ科) | △ | ◎ | ○ |
◎=多く飛ぶ ○=飛ぶ △=少し飛ぶ (地域・年によって異なります)
※上記は関東地方(相模原市等のデータ)をもとに作成したオリジナルの目安表です。
2-2 アレルギー疾患の特徴と取り組みのポイント
アレルギー疾患の取り組みを進めるうえで、知っておきたい3つの特徴があります。
- 各疾患の特徴をよく知ること
- ひとりひとりの子どもの症状・状況を把握すること
- 症状が急速に変化することを理解し、緊急時の対応をあらかじめ準備しておくこと
3. 学校生活で配慮が必要な場面
3-1 各アレルギー疾患と関連の深い学校での活動
学校の活動の中には、アレルギー症状を引き起こしやすいものがあります。次の表に、どの活動がどのアレルギーに注意が必要かをまとめました。
| 学校での活動 | 食物アレルギー・ アナフィラキシー |
気管支 ぜん息 |
アトピー性 皮膚炎 |
アレルギー性 結膜炎 |
アレルギー性 鼻炎 |
|---|---|---|---|---|---|
| 動物との接触を伴う活動 | ● | ● | ● | ● | |
| ダニ・ホコリが舞う環境での活動 | ● | ● | ● | ● | |
| 花粉が舞う環境での活動 | ● | ● | ● | ● | |
| 長時間の屋外活動 | ● | ● | ● | ● | |
| 運動(体育・クラブ活動など) | ▲ | ● | ● | ▲ | ▲ |
| プール | ▲ | ▲ | ● | ● | ▲ |
| 給食 | ● | ▲ | |||
| 食物・食材を扱う授業・活動 | ● | ▲ | |||
| 宿泊を伴う校外活動 | ● | ● | ● | ● | ● |
●:注意が必要な活動 ▲:場合によって注意が必要な活動
3-2 クラスのほかの子への説明
アレルギーのある子への取り組みを進めるには、クラスのほかの子どもたちの理解と協力がとても大切です。何をどのように説明するかは、子どもたちの年齢や理解力に応じて工夫し、本人や保護者の意向をしっかり確認してから行うようにしてください。
3-3 病院(外来)への通院について
アレルギー疾患は定期的に主治医の先生に診てもらいながら、長期的に管理していく必要があります。症状が安定していても3か月に1度程度、症状が不安定なときは毎週通院が必要なこともあります。
通院のために遅刻や早退が生じることがありますので、クラスの子どもたちの理解を得るとともに、授業内容のフォローをお願いしてください。
3-4 災害時の対応
地震や大雨などの災害のときにも、アレルギーのある子どもへの対応が必要です。日頃から必要なものを準備し、体制を整えておくことが大切です。
「災害時のこどものアレルギー疾患対応パンフレット」(日本小児アレルギー学会)や、「アレルギー疾患のこどものための『災害の備え』パンフレット」(日本小児臨床アレルギー学会)が参考になります。主治医や学校に問い合わせてみてください。
4. 「学校生活管理指導表」に基づく取り組み
4-1 管理指導表ってなに?
学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)とは、アレルギーのある子どもの情報を主治医が記入して、保護者を通じて学校に届ける書類です。この1枚の書類に、食物アレルギー・アナフィラキシー・ぜん息・アトピー性皮膚炎・アレルギー性結膜炎・アレルギー性鼻炎のすべての情報を記載することができます。
管理指導表の情報の流れ
学校へ提出
対応を実施
- 学校での配慮や管理が必要な場合のみ使います。症状が安定していて配慮不要なら提出しなくてかまいません。
- 原則として1人につき1枚、表と裏に全疾患の情報を記載します。
- 配慮が必要な間は、症状に変化がなくても毎年提出が必要です。
- 血液検査の結果を学校から求めることは適切ではありません。
- 提出された書類は緊急時に全教職員が見られる状態で管理されます。
4-2 取り組みが始まるまでの流れ
小学校入学を例に、取り組みが実際に始まるまでの流れを説明します。
4-3 保護者・医師・教職員への説明
管理指導表をうまく使うために、保護者・主治医・教職員それぞれへの説明資料が(公財)日本学校保健会のウェブサイトからダウンロードできます。保護者としてできること、主治医に記入してもらうこと、などが詳しく書かれています。
4-4 管理指導表の取り扱い
管理指導表には、子どもの健康に関わる大切な個人情報が書かれています。学校は以下のことについて保護者に書面で説明し、同意を得る必要があります。
- この情報は日常の取り組みと緊急時の対応に使う目的であること
- 情報を全教職員と関係機関で共有すること
- 学校がどのように管理するか
5. 学校・教育委員会の役割
5-1 教育委員会の役割
教育委員会は、個別の学校だけでは対応しにくい広域的な役割を担います。
- アレルギー対応委員会を設置し、医師会・消防機関と連携する
- 地域の実情に合わせた基本的なアレルギー対応の方針を作る
- 各学校の対応状況を確認し、必要な指導・環境整備を行う
- 教職員のアレルギー対応研修会を充実させる
- すべての事故・ヒヤリハット事例を集約し、改善策を周知する
5-2 学校の役割
学校はアレルギー対応委員会(校長を責任者とする)を校内に設置し、次のことを組織全体で行います。
6. もしものとき(緊急時)の対応
6-1 学校での役割分担
アレルギー症状が出たとき、学校ではあらかじめ決められた役割分担に従って動きます。事前に全教職員が役割を知っていることで、迅速な対応ができます。
| 役割 | 担当者 | やること |
|---|---|---|
| 発見者 | 担任など(誰でもなりうる) | 子どもから目を離さず観察しながら人を集める。集まった人に的確に指示する。 |
| 管理係 | 管理職(校長・副校長など) | 現場に急行し、発見者に代わって指揮をとる。 |
| 準備係 | 教職員A | 緊急時対応マニュアル・エピペン®・AEDを準備する。 |
| 連絡係 | 教職員B | 119番通報・管理職への連絡・保護者への連絡を行う。 |
| 記録係 | 教職員C | 時系列で処置を記録。5分ごとに症状を記録する。 |
| その他 | 教職員D | ほかの子どもへの対応、救急車の誘導など。 |
6-2 緊急時の対応の流れ
アレルギー症状を発見したら、まず「緊急性が高い症状があるかどうか」を5分以内に判断します。以下の13の症状のうち、どれか1つでもあれば「緊急性が高い」と判断します。
| 皮膚・粘膜の症状 | 呼吸器の症状 | 全身の症状 |
|---|---|---|
| ・顔全体の腫れ ・くちびるの腫れ ・のどの締め付け感 |
・犬が吠えるような咳 ・ゼーゼー・ヒューヒューという呼吸 ・呼吸困難(息ができない) ・チアノーゼ(唇が青紫になる) ・SpO₂が低い |
・ぐったりしている ・意識がおかしい ・尿や便を漏らす ・血圧低下・脈がとても弱い |
緊急時の対応フロー
② 救急車を要請する(119番)
③ その場で安静にする
※呼吸・反応なし → 心肺蘇生法+AED
症状を定期的に観察する
保護者へ連絡する
ショック状態のときは、仰向けに寝かせて足を高くするのが基本です。急に抱き起こしたり、おんぶしたり、立たせたりすることは心停止を引き起こす危険があります。その場から移動させずに安静を保つことが重要です。
6-3 事故が起きたときの対応
119番通報のポイント
あわてず、ゆっくり、正確に伝えられるよう、マニュアルにあらかじめ記載しておきます。
- 「救急です」と伝える
- 学校の住所(来てほしい場所)を伝える
- 「いつ・だれが・どうして・今どんな状態か」を伝える(例:「3年生の男の子が、給食を食べた後に気持ち悪いと言っています」)
- 通報している人の名前・連絡先を伝える
- 通報後も電話はすぐ切らない。救急隊から確認の電話が来ることがあります。
7. 研修
7-1 教育委員会等
教育委員会は研修会を開催したり、学校の校内研修を支援します。医療機関と連携した専門的な指導、消防機関と連携した実践的な緊急時対応訓練などが推奨されます。一定の質を保ちながら、全教職員が継続的に学ぶ機会を持つことが大切です。
7-2 学校等
全教職員がアレルギー疾患・アナフィラキシーの正しい知識を持ち、定期的な研修と訓練を行います。特に以下の訓練が必要です。
- エピペン®(アドレナリン自己注射薬)の使い方
- 心肺蘇生法・AEDの使い方
- 緊急時の役割分担の確認と実践
Chapter 2
第2章 疾患各論
各アレルギー疾患について詳しく解説します
1. 食物アレルギー・アナフィラキシー
食物アレルギーとは
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 特定の食べ物を食べることで、皮膚・呼吸器・消化器や全身にアレルギー反応が起きること |
| 頻度 | 平成25年の文部科学省調査:小学生4.5%、中学生4.7%、高校生4.0% |
| 原因食物 | 学童〜高校生では甲殻類・果物が多く、誤食事故では鶏卵・牛乳・落花生・小麦・甲殻類の順に多い。最近はクルミなど木の実類も増えている |
| 主な症状 | 皮膚症状(じんましん・かゆみ・赤み)がもっとも多く、次いで呼吸器症状・消化器症状・ショック症状 |
| 治療の基本 | 「正しい診断に基づく必要最小限の除去」。不必要な食事制限は避けることが重要 |
アナフィラキシーとは
その中でも血圧が下がり意識が失われるような状態をアナフィラキシーショックといい、すぐに対応しないと命にかかわります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 頻度 | 小学生0.6%、中学生0.4%、高校生0.3%がアナフィラキシーの既往あり(平成25年調査) |
| 原因 | 食物(最多)・ハチ刺され・医薬品・ラテックス(天然ゴム)・運動 など |
| 治療 | エピペン®(アドレナリン自己注射薬)の早期使用+救急搬送。エピペン®が最も有効な緊急薬 |
食物アレルギーの3つの病型
① 即時型(もっとも多い)
食べてから2時間以内に症状が出ます。軽いじんましんから、命にかかわるアナフィラキシーショックまでさまざまです。IgE抗体が関係します。
② 口腔アレルギー症候群(OAS)
花粉アレルギー(シラカバ・ハンノキ・ブタクサなど)のある子どもが、その花粉と似た成分を持つ生の果物や野菜を食べたときに、食後5分以内に口の中がかゆい・ヒリヒリする・腫れぼったいなどの症状が出ます。加熱した果物(ジャムなど)では反応しないことが多いです。
多くは局所だけの症状で治療不要ですが、全身症状の初期のこともあるので注意が必要です。
花粉と交差反応する主な食品
| 花粉 | 交差反応が起きやすい食品 |
|---|---|
| シラカバ・ハンノキ(カバノキ科) | リンゴ・西洋ナシ・サクランボ・モモ・アーモンド・セロリ・ニンジン・キウイフルーツ・大豆・ピーナッツ など |
| カモガヤ・チガヤ(イネ科) | メロン・スイカ・トマト・キウイフルーツ・オレンジ・ピーナッツ など |
| ヨモギ(キク科) | セロリ・ニンジン・マンゴー・スパイス など |
| ブタクサ(キク科) | メロン・スイカ・バナナ など |
③ 食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)
特定の食べ物を食べた後に運動したときだけアナフィラキシーが起きます。食べるだけ・運動するだけでは症状は出ません。原因食物として小麦・甲殻類が多いです。
予防法:原因食物を食べたら4時間は運動しない。逆に食べる前4時間以内に運動しなければ食べてもよいことが多いです。
原因食物の除去(食べないこと)について
- 過去に明らかな症状が出た(もっとも確実な根拠)
- 食物経口負荷試験(病院で実際に食べて症状確認する検査)で陽性
- IgE抗体検査(血液検査)が陽性(※検査だけでは診断できない。食べられる子も多い)
- まだ食べたことがない(未摂取)
不必要な除去は成長に必要な栄養が偏る原因になります。血液検査だけを根拠に多くの食品を除去している場合は、主治医に相談してください。
エピペン®(アドレナリン自己注射薬)について
エピペン®は、アナフィラキシーショックが起きたときに使う命を守るための薬です。アドレナリン(心臓を強め、血管を収縮させ血圧を上げるホルモン)を自分で太ももに注射できます。
STEP1 準備:ケースから取り出し、青い安全キャップを外す
STEP2 注射:太ももの前外側に垂直に当て、「カチッ」と音がするまで強く押し付ける。そのまま数秒キープ
STEP3 確認:オレンジ色のニードルカバーが伸びていれば注射完了
- エピペン®は本人または保護者が使う目的で作られていますが、本人が使えない緊急時には教職員も使用できます(平成25年文部科学省通知)
- 保管温度:15〜30℃(冷蔵庫や高温になる車内はNG)
- 光で分解するため、携帯用ケースに入れたまま保管する
- 有効期限を保護者が定期的に確認する
- エピペン®を使った後は必ず救急車を呼ぶ(薬の効果は一時的で、症状が再び出ることがある)
給食での取り組みについて
学校給食でもっとも重要なのは安全性の確保です。対応レベルには次の4段階があります。
| レベル | 対応内容 | 特徴 |
|---|---|---|
| レベル1 | 詳細な献立表対応 | 原材料が詳しく書かれた献立表を配布し、保護者や担任の指示で原因食物を除いて食べる |
| レベル2 | 弁当対応 | 一部または全部を家庭からお弁当を持参する |
| レベル3 | 除去食対応 | 調理の過程で特定の食材を除いて提供する |
| レベル4 | 代替食対応 | 除去した食材の代わりに別の食材を使った給食を提供する |
参加する全教職員が、どの子どもにどの食物アレルギーがあるかを知っておく必要があります。宿泊先近くの医療機関を事前に調べ、主治医からの紹介状を用意しておくと安心です。海外渡航の場合は、旅行業者と連携して宿泊先にも事前連絡が必要です。
2. 気管支ぜん息(ぜんそく)
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 気管支(空気の通り道)の慢性的な炎症で、発作的にせきやゼーゼー・ヒューヒューという呼吸困難を繰り返す病気 |
| 頻度 | 小学生6.8%、中学生5.3%、高校生3.8%(平成25年調査) |
| 原因 | ダニ・ホコリ・動物のフケや毛などへのアレルギー反応が気道で慢性的に起きることが原因。気道が過敏になると、運動・風邪・タバコの煙・精神的なストレスでも発作が起きやすくなる |
| 発作の症状 | 軽いせきから、ゼーゼー・ヒューヒューする呼吸(ぜん鳴)、呼吸困難まで。重症の発作では死に至ることもある |
| 治療の柱 | ①発作を起こさないための予防(長期管理薬) ②発作が起きたときの治療(発作止め薬) |
コントロール状態の評価
| 評価項目 | 良好 (全項目該当) |
比較的良好 (いずれか1つ) |
不良 (いずれか1つ) |
|---|---|---|---|
| 軽い症状(せき・ゼーゼー) | なし | 週1回未満・月1回以上 | 週1回以上 |
| 明らかな発作 | なし | なし | 月1回以上 |
| 日常生活の制限 | なし | なし〜軽い | 月1回以上 |
| 発作止め薬の使用 | なし | 週1回未満・月1回以上 | 週1回以上 |
小児気管支喘息治療・管理ガイドライン2017をもとに作成
長期管理薬(予防のために毎日使う薬)
ステロイド吸入薬(もっとも重要な長期管理薬)
ぜん息の根本である「気管支の炎症」を和らげる薬です。ステロイドと聞くと怖いイメージを持たれる方もいますが、吸入ステロイドは気管支局所にのみ直接届くため、全身への副作用はほとんどない安全な薬です。
用量によって「低用量・中用量・高用量」に分かれ、重症度に合わせて処方されます。長期管理薬なので発作が起きているときに使う薬ではなく、毎日継続して使うことが大切です。
ロイコトリエン受容体拮抗薬(内服薬)
「ロイコトリエン」という発作の原因となる物質の働きを抑える飲み薬です(シングレア®、キプレス®など)。長期管理薬なので発作を直接止める作用はありませんが、予防に役立ちます。
発作時の対応(発作止め薬)
発作止め薬として主に使われるのはベータ刺激薬の吸入薬です。細くなった気管支を広げて、呼吸を楽にします。即効性があります。
- くちびるや爪が白っぽい・青紫色(チアノーゼ)
- 息を吸うときに胸がベコベコとへこむ
- 苦しくて話せない・歩けない
- 横になれない・眠れない
- ぼーっとしている・意識がおかしい
- 脈がとても速い
学校での配慮ポイント
運動(体育・クラブ活動)について
運動はぜん息のある子にとっても心肺機能を高め、成長に大切です。一律に制限しないことが重要です。
- 冬の長距離走・強度の強い運動:冷たい乾燥した空気が発作を誘発しやすいので注意が必要
- 水泳:比較的発作を誘発しにくい
- 運動前の十分なウォームアップ、または事前の吸入薬使用で予防できることもある
- 苦しくなったら担任に申し出るよう子どもに伝えてください
動物との接触・ホコリの多い環境について
ダニ・ホコリ・動物の毛・フケは発作の原因(アレルゲン)です。
- 飼育当番は免除し、代わりの係(窓ガラス拭きなど)を担当させる配慮を
- 掃除当番はホコリが少ない場所(洗面所など)や、ほうきで掃いた後の雑巾がけを担当させる
- 必要に応じてマスク着用
- 体育館・倉庫・普段使われていない教室はホコリが多い。注意が必要
宿泊を伴う校外活動について
- 事前に主治医に参加可能かどうか確認する
- 畳の部屋・じゅうたん・そばがら枕・羽毛布団は発作を誘発しやすい。宿泊先に事前確認を
- 宿泊先近くの医療機関を事前に調べておく
- 長期管理薬の吸入・内服が宿泊先でも継続できる環境を整える
- 引率者は喫煙しない
3. アトピー性皮膚炎
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | かゆみのある湿疹が体の広い範囲に出て、よくなったり悪くなったりを繰り返す病気 |
| 頻度 | 小学生5.5%、中学生4.6%、高校生3.8%(平成25年調査) |
| 原因 | 生まれながらの体質(皮膚のバリア機能の低下)に、ダニ・カビ・動物の毛・食物・汗・ストレスなどの環境条件が重なって発症 |
| 症状の場所 | 顔・首・肘の内側・膝の裏側などによく出るが、全身に広がることもある |
| 治療の3本柱 | ①薬物療法(外用薬・内服薬) ②スキンケア(清潔と保湿) ③悪化因子への対策 |
重症度の分類
アトピー性皮膚炎の重症度(厚生労働科学研究班の基準)
治療薬について
外用薬(塗り薬)の種類
① ステロイド外用薬:皮膚の炎症を抑え、かゆみを和らげる最も基本的な薬。炎症の強さと部位によって強さ・種類を使い分けます。正しく使えば安全で、塗ると皮膚が黒ずむというのは誤解です(炎症が改善する過程で一時的に色素沈着が起きますが、薬の副作用ではありません)。
② タクロリムス軟膏(プロトピック®):ステロイドとは異なる種類の抗炎症薬。塗ると一時的なヒリヒリ感があることがあります。使用した日は強い紫外線を避ける必要があるため、長時間の屋外活動では帽子・長袖・長ズボンを着用するか、木陰で見学させるなどの配慮が必要です。
③ 保湿剤:皮膚のバリア機能を補い、乾燥を防ぎます。薬と合わせて使います。
内服薬・注射薬
抗ヒスタミン薬(内服):かゆみを抑える補助薬。一部は眠気や集中力低下の副作用があるため、授業中の眠気が目立つ場合は主治医への相談を勧めてください。
生物学的製剤(注射):ステロイドで十分に改善しない重症例に使われる新しい治療薬。アレルギー反応に関わる特定の物質を直接ブロックします。
学校での配慮ポイント
プールと紫外線について
- プール水の塩素(残留塩素)はアトピーの悪化因子。基準(0.4〜1.0mg/L)を守ることが大切
- プール後はシャワーで塩素をよく落とし、持参の保湿剤・外用薬を塗布できる場所・時間を確保する
- 腰洗い槽への浸漬はアトピーを悪化させるため、保護者の申し出があればシャワーで代替可
- 屋外プールでの日焼けが悪化の原因になる場合、日陰での待機・日焼け止め・ラッシュガードを許可する
- 浸出液を伴う重い症状のときはプールへの入水を控える
汗への対策(発汗後の配慮)
体育の後に汗をかいたまま放置すると皮膚炎が悪化します。
- 体育の後はシャワー・流水・湿ったおしぼりで汗を拭くよう指導する
- 体操服を着替えることも重要
- 温水シャワー設備がない学校でも、保健室でぬれタオルや保冷剤で冷やすことが効果的
衣服・動物・教室環境について
- チクチクする素材の制服・体操服は刺激になる。医師の指示があれば別素材を許可
- 教室での動物の飼育(羽・毛のある動物)はアレルギー疾患全般に影響するため、該当する子がいる場合は避ける
- 室内の乾燥を防ぐことも悪化予防に有効
- 椅子に接するお尻・太ももの裏に汗がたまる場合は、吸湿性のある座布団の使用を許可する
4. アレルギー性結膜炎
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 目に入ったアレルゲンへのアレルギー反応で起きる、目のかゆみ・異物感・涙目・充血・めやにを特徴とする病気 |
| 頻度 | 全国小・中・高校全体で5.5%(実際の有症率は10%前後とも)(平成25年調査) |
| 原因 | 通年性:ハウスダスト・ダニ・動物の毛・フケ 季節性:スギ・カモガヤ・ブタクサなどの花粉 |
| 主な症状 | 目のかゆみ・異物感・充血・涙目・めやに。重症では眼痛・視力低下を伴うことも |
| 治療 | アレルゲン回避(予防)+点眼薬による薬物療法が中心 |
病型の分類
| 病型 | 特徴 |
|---|---|
| 通年性アレルギー性結膜炎 | 1年を通して症状が出る。ハウスダスト・ダニが原因のことが多い |
| 季節性アレルギー性結膜炎(花粉症) | 花粉の飛ぶ時期に毎年決まって症状が出る。スギ・ヒノキ(春)、カモガヤ(初夏)、ブタクサ(秋)が多い |
| 春季カタル | 重症型。激しい目のかゆみ・めやに・充血が特徴。男子に多く、春先や秋口に悪化しやすい。角膜が傷つくと視力低下も |
| アトピー性角結膜炎 | 顔(特に目の周囲)にアトピー性皮膚炎がある人に起こる慢性の結膜炎。目をこすると悪化する |
治療薬(点眼薬)の種類
- 抗アレルギー点眼薬:ヒスタミンの作用を抑える。眠気は出ない(内服薬と違う点)
- ステロイド点眼薬:中等症〜重症に使用。眼圧上昇の副作用があるため定期的な眼科受診が必要
- 免疫抑制点眼薬:春季カタルに使用
学校での配慮ポイント
プールについて
- プール水の残留塩素は結膜炎を悪化させる。基準(1.0mg/L以下)を守る
- 春季カタルでも、ゴーグル着用でプールに入れる場合がある。主治医の指示に従う
- 重症型や症状が強い場合は入水不可となることもある
屋外活動について
- 花粉飛散時期の屋外活動で症状が悪化することがある(特に風の強い晴れの日)
- 目を開けていられれば屋外活動は可能。点眼薬を継続し、メガネ(またはゴーグル)着用を促す
- 活動後は洗顔と人工涙液や点眼型洗眼薬による洗眼を勧める
- 通年性・春季カタルでは、ホコリによっても悪化することがある
まぶたにアトピー性皮膚炎がある場合、白内障・網膜剥離・円錐角膜などの目の合併症を起こすことがあります。目をこする・叩くことがこれらの原因の一つです。重篤な視力障害を防ぐため、学校でもできるだけ目をこすらないよう指導してください。
5. アレルギー性鼻炎
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 定義 | 鼻に入ったアレルゲンへのアレルギー反応で、発作性・反復性のくしゃみ・鼻水・鼻づまりが起きる病気 |
| 頻度 | 全国小・中・高・中等教育学校全体で12.8%(アレルギー疾患の中で最多)。中学校15.2%、高校12.2%(平成25年度調査) |
| 原因 | 通年性:ハウスダスト・ダニ・動物の毛やフケ 季節性:スギ・ヒノキ・ハンノキ・カモガヤ・ブタクサなどの花粉 |
| 主な症状 | 発作性のくしゃみ・鼻水・鼻づまり。鼻のかゆみ・目のかゆみを伴うことも |
| 治療 | アレルゲン除去・回避+薬物療法(内服薬・点鼻薬)。舌下免疫療法(ダニ・スギが原因の場合)も選択肢 |
有病率の推移(グラフ)
アレルギー性鼻炎の有病率 年齢別比較(平成25年度 文部科学省調査)
文部科学省委託調査をもとに作成
治療薬について
内服薬・点鼻薬
- 抗ヒスタミン薬・抗アレルギー薬(内服):くしゃみ・鼻水に効果的。一部の薬は眠気や集中力の低下が起きることがある。学校での学習に支障が出ている場合は主治医に相談を
- 鼻噴霧用ステロイド薬(点鼻薬):鼻づまりに特に効果的。全身への吸収が少なく安全性が高い
舌下免疫療法(アレルギーを根本から改善する治療)
舌下免疫療法は、アレルゲン(ダニまたはスギ花粉)の液剤を毎日舌の下に少量置いて、体をアレルゲンに慣れさせる治療法です。根本的な体質改善が期待でき、ぜん息への移行を防ぐ効果もあると言われています。
治療期間は3〜5年程度かかりますが、子どもにも行うことができます。ダニとスギが原因の場合に保険適用があります。
詳しくはかかりつけの小児科・耳鼻科・アレルギー科にご相談ください。
学校での配慮ポイント
屋外活動と花粉対策
- 花粉飛散時期(特に風の強い晴れた日)の屋外活動では症状が悪化しやすい
- 点眼薬・点鼻薬・内服薬の継続使用が基本
- 花粉防止用マスク・ゴーグル・メガネの着用を許可する
- 鼻炎の症状が強いときは、学習への集中や体育への参加に支障が出ることがある。配慮が必要
本記事は、公益財団法人日本学校保健会「学校のアレルギー疾患に対する取り組みガイドライン(令和元年度改訂版)」をもとに、
保護者向けにわかりやすく書き直したものです。診断・治療の判断は必ず担当医にご相談ください。
ご不明な点は、ユアクリニックお茶の水へお気軽にご相談ください。
