お子さんの吐き気や便秘で困っていませんか?お医者さんが教える、吐き気止めの使い分けのお話
こんにちは!皆さん、季節の変わり目ですが、お子さんの体調はいかがですか?小児科専門医の杉原です。
最近、嘔吐する子を何人かみました。胃腸炎ではよくみられる症状です。
今日は、お子さんの胃腸の調子が悪い時によく処方されるお薬、プリンペランとナウゼリンについて、お話ししたいと思います。どちらも「吐き気止め」として使われることが多いのですが、少し違うところもあるんですよ。
🤝 どちらも同じ仲間? 働き方の似ているプリンペランとナウゼリン
プリンペラン(一般名:メトクロプラミド)とナウゼリン(一般名:ドンペリドン)は、どちらも体の中にある「ドパミンD2受容体」という場所にフタをするような働きをします。このドパミンD2受容体は、胃腸の動きをゆっくりさせる役割があるのですが、このフタをすることで、逆に胃腸が活発に動いてくれるようになるのです。
例えるなら、車のブレーキみたいなものですね。ドパミンがブレーキを踏んでいる状態だとすると、プリンペランとナウゼリンはそのブレーキを外して、車(胃腸)がスムーズに進むようにしてくれるイメージです。
また、脳の中にある「吐き気を感じるセンサー(CTZ)」にも働きかけて、吐き気を抑える効果もあります。
🚦 ちょっと違うところもあるんです!プリンペランとナウゼリンの違い
どちらも同じように胃腸を元気にして、吐き気を抑える働きがあるのですが、少しだけ違う点があります。
🧠 脳への影響:プリンペランはちょっとおっちょこちょい?
ナウゼリンは、脳に入りにくいようにできていますが、プリンペランは脳に入りやすいという特徴があります。脳の中のドパミンが減ってしまうと、手足が震えたり、体がこわばったりするような「錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)」という副作用が出ることがあります。
「錐体外路症状(すいたいがいろしょうじょう)」というのは、お薬の副作用で、体や手足が自分の意思とは関係なく動いてしまったり、逆に動きにくくなったりする症状のことです。
例えるなら、操り人形の糸が絡まって、スムーズに動かせなくなってしまうようなイメージです。
具体的には、次のような症状が出ることがあります。
- 手足の震え: 特にじっとしている時に手が震えたりします。まるで、小さい虫が手の上を這っているように見えることもあります。
- 筋肉がこわばる: 体や手足の筋肉がカチカチになって、動きにくくなります。ロボットみたいに、ぎこちない動きになることがあります。
- 動きが遅くなる: 動作がゆっくりになったり、なかなか動き出せなくなったりします。
- 姿勢が悪くなる: 体が前のめりになったり、猫背になったりすることがあります。
- 顔の表情が乏しくなる: 笑ったり、怒ったりする表情がでにくくなることがあります。
- よだれが出やすくなる: 口の中の唾液をうまく飲み込めなくなることがあります。
これらの症状は、脳の中の「ドパミン」という物質が、お薬の影響で少し減ってしまうことで起こると考えられています。プリンペランは、ナウゼリンに比べて脳に入りやすい性質があるため、このような錐体外路症状が出やすいと言われています。
また、プリンペランは、脳の別の場所に影響を与えて、母乳を作るホルモン(プロラクチン)を増やしてしまうことがあります。そのため、男の子でもおっぱいが出たり、女の子では生理が不順になったりすることがあります。ただ、これらの症状は、お薬をやめれば元に戻ることがほとんどなので、心配しすぎないでくださいね。
🤰 赤ちゃんへの影響:妊娠中のママは要注意!
動物を使った実験で、ナウゼリンは赤ちゃんに良くない影響が出る可能性が報告されています。そのため、妊娠中のママには、原則としてナウゼリンは使わないことになっています。
一方、つわりのひどい妊婦さんには、プリンペランが使われることがあります。また、母乳をあげているお母さんには、ナウゼリンの方が比較的安全に使われることが多いようです。
⚠️ 使う上での注意点:長期間の使用は慎重に!
どちらのお薬も、長く飲み続けると、先ほどお話ししたような副作用が出やすくなることがあります。そのため、お医者さんも、症状が良くなったらすぐにやめられるように、必要最低限の期間で処方するように心がけています。
👨⚕️ 薬剤師さんとの連携も大切です
今日お話ししたことは、薬剤師さんもよく知っています。お薬をもらうときには、わからないことや心配なことがあれば、遠慮せずに薬剤師さんに聞いてみてくださいね。
お子さんの体調が早く良くなるように、私たち小児科医も、お父さんお母さんと一緒に頑張っていきたいと思っています。何か不安なことがあれば、いつでも相談してくださいね。
