わが子の頭の形、気にしていませんか?〜向きグセ?それとも大切なサイン?小児科医が教える頭のゆがみの見分け方〜
こんにちは!クリニックで診察していると、多くの保護者の方から「うちの子の頭の形、ちょっとゆがんでいる気がして…」「いつも同じ方を向いて寝ちゃうんです」というご相談を受けます。親御さんにとって、赤ちゃんの頭の形はすごく気になることの一つですよね。不安になるお気持ち、本当によくわかります。
でも安心してください。赤ちゃんの頭のゆがみには、主に二つの種類があります。一つは「位置的頭蓋変形症」、もう一つは「頭蓋縫合早期癒合症」という病的なものです。
この二つを正しく見分けることが、とても大切なんです。今日は、この見分け方について、私の経験や専門的な知識を交えながら、わかりやすくお話ししていきますね。
赤ちゃんの頭のゆがみ。「向きグセ」が原因?それとも「病気のサイン」?
赤ちゃんの頭は、生まれたばかりの時はとても柔らかいんです。これは、お母さんの産道を通るため、そして脳がこれから大きく成長するために、頭の骨がまだ完全にくっついていないからです。この骨と骨のつなぎ目を「縫合(ほうごう)」と呼びます。
位置的頭蓋変形症と頭蓋縫合早期癒合症
赤ちゃんの頭のゆがみには大きく分けて2つのケースが考えられます。
1. ほとんどのケースは「位置的頭蓋変形症」です
これは、一般的に「向きグセ」と言われるものが原因で起こります。
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どんな状態?: 赤ちゃんがいつも同じ方向(例えば右ばかり)を向いて寝たり、座ったりすることで、頭の一部分にだけ長い時間圧力がかかり、その部分が平らになったり、ゆがんだりする状態です。
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専門的な言葉で言うと?:
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斜頭症(しゃとうしょう): 頭の片側だけが平らになり、上から見ると「ひし形」や「平行四辺形」のようにゆがんで見えることが多いです。
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短頭症(たんとうしょう): 仰向けで寝ることが多いために、後頭部全体が平らになってしまう状態です。
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これは、赤ちゃんが生まれてからの「外からの力」、つまり生活習慣が主な原因です。これは病気ではなく、治療や工夫で改善が見込めます。
2. 注意が必要な「頭蓋縫合早期癒合症」
これは、治療が必要な病気です。
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どんな状態?: 本来、脳の成長に合わせて柔軟であるべき「縫合」が、生後まもなく早期に骨化してくっついてしまう状態です。
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専門的な言葉で言うと?: 「台形」のような特徴的な形に見えることがあります。これは、特定の縫合が早くくっつくことで、脳が成長しようとしても、くっついた部分では骨が広がれず、他の部分だけが代償的に広がるために起こる「病的なゆがみ」です。
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なぜ注意が必要?: 縫合が早期に閉じると、脳の成長スペースが十分に確保できなくなる可能性があり、その結果、頭蓋内圧(ずがいないあつ)が上がったり、発達に影響が出たりするリスクがあるためです。
小児科医が教える!赤ちゃんのゆがみの「見分け方」のヒント
私も経験豊富な日本大学病院の教授から、こんなエピソードを聞いたことがあります。
「頭のゆがみを見る時は、ただ平らなところを探すんじゃない。赤ちゃんの顔を正面から見て、ゆがみの『方向性』を見なさい。位置的なものは、外から押された結果、平行四辺形(ひし形)のように、左右が『ナナメにずれた』ゆがみ方をすることが多いんだ。でも、病的なものは、特定の縫合の成長が止まったことで、『一部が飛び出したり、急にへこんだり』と、もっといびつな台形のような形になることが多いんだよ」
この教えは今でも私の診察の基本です。
見分け方のポイント
位置的頭蓋変形症と頭蓋縫合早期癒合症の違いを、身近なもので例えて解説します。
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位置的頭蓋変形症(向きグセ)は、まるで「柔らかい粘土のブロック」のようなものです。ブロックの一面をずっとテーブルに押し付けておけば、その面は平らになり、ブロック全体がちょっとひし形にゆがみますよね?外側からの力で形が変わった状態です。
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頭蓋縫合早期癒合症(病的なもの)は、まるで「風船を膨らませようとしたら、一部だけがガチガチに固まってしまった状態の風船」のようなものです。風船全体を膨らませても、固まった部分は広がらず、固まっていない部分だけがパンパンに膨らんで、アンバランスないびつな形になります。これは内側からの力(脳の成長)が、骨の抵抗によって妨げられている状態なんです。
私たちが診察で特に注意深く確認するポイント
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耳の位置: 上から見たとき、ゆがんでいる側の耳が前にずれていないかどうか。
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おでこの突出: 平らになっている側と反対側のおでこが、代償的に前に突き出ていないかどうか。
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頭の形全体: 上から見て、本当にひし形や平行四辺形(向きグセの可能性大)なのか、それとも台形や舟形などの特徴的な形(病気の可能性も考える)なのか。
もし、ゆがみが強く、特に左右非対称性が非常に大きい場合や、おでこの突出が顕著な場合には、より詳しい検査(CT検査など)が必要になることがあります。
保護者の方へ:赤ちゃんの頭の形が気になったら「早めの相談」が大切です
もし、ご自宅で「うちの子の頭の形、どうなんだろう?」と不安に感じたら、どうぞ気軽に当クリニックにご相談ください。
「こんなこと相談していいのかな?」なんて思わなくて大丈夫ですよ!小児科医は、赤ちゃんの成長を見守る「チーム」の一員だと思っています。私たち専門家が診れば、ほとんどの場合は「これは向きグセによるものだから、体位を工夫してあげましょう」とアドバイスができますし、万が一、専門的な治療が必要な場合でも、早く発見してあげることが、その後の治療の選択肢を広げ、スムーズな成長につながるんです。
心配な時は、一人で悩まず、ぜひ私たちを頼ってくださいね。赤ちゃんの健やかな成長を、一緒にサポートしていきましょう!
