3Dスキャンと先生の見立て、なぜ違う? 赤ちゃんの頭のゆがみ、その「奥深さ」とは
こんにちは! 今日は千代田区もよく晴れて、五月晴れが気持ちいい一日ですね。新緑の季節、お子さんとのお散歩も楽しんでいらっしゃるでしょうか。ユアクリニックお茶の水の杉原です。
先日、「赤ちゃんの頭のゆがみ、アプリだけで大丈夫?」というテーマでお話しし、その後「3Dスキャンと先生の診断が違うのはなぜ?」という疑問にも触れました。
同じ疑問でも、掘り下げていくと、赤ちゃんの頭のゆがみがいかに奥深いかがわかります。今日は、その「奥深さ」に焦点を当てて、もう少し詳しくお話しさせてくださいね。
悩めるパパの発見:データが示す「軽度」と、目の前の「気になる形」
ある日、Cさんは、生後5ヶ月になる愛娘の頭の形が気になり、専門の施設で3Dスキャンを受けてきました。娘の頭の特定の場所が少し平らになっているように感じていたのですが、3Dスキャンで得られたデータは「軽度のゆがみ」を示していました。
「よかった、軽度で済んだのか…」
Cさんは、ひとまず安堵しました。しかし、数日後、娘を抱っこしている時に、やはり気になっていた部分に手が触れ、改めてその平らさを感じました。
「スキャンでは軽度って出たけど、やっぱり気になるな。もしかして、この部分って、スキャンでは見落とされてるのかな…?」
そして、ユアクリニックお茶の水を受診した際、Cさんは杉原院長に尋ねました。
「先生、実は3Dスキャンでは軽度と診断されたんですが、私には娘の頭の、特にこの部分がやっぱり気になるんです。これって、先生の見立てだとどうなんでしょうか…?」
杉原院長は、Cさんの言葉に深く頷きました。
「Cさん、その感覚、とても大切ですよ。3Dスキャンは素晴らしいツールですが、お子さんの頭の形は、数値だけでは語り尽くせない奥深さがあるんです。」
3Dスキャンは「レントゲン写真」、医師の診察は「名医の診察」
なぜ、3Dスキャンと医師の診断が異なることがあるのでしょうか?
まず、3Dスキャンは、頭の形を数値化して評価するために、「ある基準断面(きじゅんだんめん)」、つまり、頭の特定の「切り口」を設定して測定します。
これは、まるでレントゲン写真のようなものです。レントゲン写真は骨の形を正確に映し出しますが、それだけでは病気の全体像はわかりませんよね。特定の角度からの情報しか得られないため、その「基準断面」が、必ずしもその赤ちゃんの頭の「最重症位(さいじゅうしょうい)」、つまり一番ゆがみがひどい場所とは限りません。
例えば、頭のてっぺんが一番平らなケースでも、3Dスキャンの基準断面が頭の側面にある場合、データ上は「軽度」と出る可能性があるのです。最重症位を見逃してしまうと、当然ながら全体的な評価も変わってきます。
一方、医師の診察は、頭全体を評価して重症度を決めます。これは、杉原院長が実際に赤ちゃんの頭を「視診(ししん)」(目で見る)し、「触診(しょくしん)」(手で触る)することで、頭の凹凸、左右の非対称性、頭蓋骨の縫合線(ほうごうせん)の状態(※1)、そして赤ちゃんの首の座り具合や発達段階まで、多角的に総合的に診ていきます。
例えるなら、3Dスキャンが最新の高性能カメラだとしたら、医師の診察は、長年の経験と知識を持つ「名医の診察」です。名医は、レントゲン写真の数値だけでなく、患者さんの顔色や息遣い、歩き方など、あらゆる情報を統合して診断を下しますよね。それと同じように、小児科医は、数値データでは捉えきれない赤ちゃんの「生きた情報」を大切にしているのです。
特に、赤ちゃんの頭蓋骨の縫合線は、成長と共に閉じていく部分で、これが早期に閉じてしまうと、頭の成長に影響が出ることがあります。このような、ごく稀にですが、専門的な知識がないと見落とされがちなポイントも、医師の診察では確認できるのです。
※1:**頭蓋骨の縫合線(とうがいこつのほうごうせん)**とは、赤ちゃんの頭の骨のつなぎ目のこと。生まれたばかりの赤ちゃんの頭の骨は、いくつかのパーツに分かれていて、そのつなぎ目を「縫合線」と呼びます。この縫合線があるおかげで、赤ちゃんの頭は生まれてくるときに形を変えたり、脳が成長するときに頭の大きさが変わったりできるのです。成長とともに縫合線は閉じて、頭の骨は一体化していきます。
医師の「眼」が捉える、未来への兆候
私たち小児科医が頭全体を診るのは、単に今の形を評価するだけでなく、将来への影響も予測するためです。例えば、特定の部位のゆがみが強いと、将来的に眼鏡がかけにくくなったり、特定の運動発達に影響が出たりする可能性も考えられます。
また、ユアクリニックお茶の水では、赤ちゃんのアレルギーや漢方治療も得意としていますが、最も力を入れているのは予防です。予防接種を安全に受けていただくことも、お子さんの健やかな未来のために欠かせません。頭のゆがみも、早期に適切な対応をすることで、その後の成長をより良い方向に導くことができます。
医師の「眼」は、単なる数値や画像では捉えきれない、赤ちゃんの持つ個性や、発達の可能性、そして隠れた問題の兆候までをも見つけ出すことができるのです。
赤ちゃんの頭のゆがみ、迷ったらユアクリニックお茶の水へ
3Dスキャンは、赤ちゃんの頭のゆがみを客観的に評価する素晴らしい技術です。しかし、その結果が全てではありません。私たち小児科医は、そのデータを参考にしながらも、赤ちゃんの頭全体を、そしてその子の成長全体を「生きた情報」として捉え、総合的に判断します。
もし、3Dスキャンの結果と、ご自身の感覚や、他の医師の意見との間で迷いが生じたら、それはごく自然なことです。大切なのは、その不安を抱え込まず、信頼できる専門家に相談することです。
ユアクリニックお茶の水では、杉原院長が丁寧に診察し、ご家族の疑問や不安に寄り添いながら、お子さんにとって最適な方法を一緒に考えていきます。どうぞお気軽にご相談くださいね。お子さんの健やかな成長を、一緒にサポートさせていただきます。