わんぱくキッズの視力、大丈夫?頭の形と目のひみつ!~ゆうたくんの冒険~
こんにちは!小児科専門医の杉原です。
さて、今日は赤ちゃんの頭の形と目の関係について、とっても大切なお話があります。
「うちの子、頭の形がちょっと気になるんだけど、これって何か影響あるのかな?」
「赤ちゃんの目が、なんだか内側に寄っている気がする…」
そんな風に心配されているパパやママもいらっしゃるかもしれませんね。
実は、赤ちゃんの頭の形が少し平らになっている場合、目に影響が出ることがあるんです。
「え、頭の形と目が関係あるの?」とびっくりされるかもしれません。でも、これが本当なんです!
これは、ある日のユアクリニックお茶の水の物語です。
「杉原先生、こんにちは!」
いつものように元気な声で診察室に入ってきたのは、生後6ヶ月のゆうたくんと、ママのさくらさんでした。ゆうたくんは、つるんとした可愛いお顔に、くりっとした大きな瞳が印象的な男の子です。
「こんにちは!ゆうたくん、今日はどうしたの?」
私がそう尋ねると、さくらさんは少し心配そうな顔で話し始めました。
「先生、最近ゆうたの頭の形が、なんだか少し平らな気がして…。それから、たまに目が内側に寄っているように見える時があるんです。気のせいかなって思うんですけど、心配で…」
私は、ゆうたくんの頭の形をそっと触診し、目の動きを注意深く観察しました。確かに、頭の右後ろが少し平らになっていて、時折、右目が少しだけ内側に寄る「内斜視(ないしゃし)」の傾向が見られました。
「さくらさん、心配ですね。実は、赤ちゃんの頭の形と目の発達には、深い関係があるんですよ。」
私がそう言うと、さくらさんは不思議そうな顔をしました。
「え、頭の形と目がですか?てっきり、頭の形は寝方で決まるものだと思ってました…」
私は、ゆうたくんが不安にならないよう、優しい声で説明を始めました。
「そうですね、頭の形は寝る向きによって影響を受けることが多いです。でも、頭の形が少し平らになってしまう『斜頭症(しゃとうしょう)』という状態になると、ごく稀に目の機能に影響が出ることがあるんです。まるで、お家を建てる時に、土台が少し傾いていると、壁が真っ直ぐにならなかったり、窓がうまく閉まらなかったりするのと同じように、頭の形がゆがむことで、目の周りの構造にも微妙な影響が出てしまうことがあるんです。」
さくらさんは、真剣な表情で私の話を聞いていました。
「イタリアのRicci先生たちが素晴らしい研究をしてくれたんです。彼らが2007年に発表した研究結果によると、頭の形にゆがみがある赤ちゃんの中には、目の機能に問題が見られる子が多いという報告があるんですよ。」
私は、さらに詳しく説明しました。
「この研究では、頭の形が平らになっている赤ちゃんのうち、なんと84%もの子に何らかの目の異常が見つかったんです。その中の55%の子に『斜視』という目の動きの異常が、そして45%の子に『視野異常(しやいじょう)』という見える範囲の異常が見られたと報告されています。斜視は、両方の目が違う方向を向いてしまう状態で、ゆうたくんのように片方の目が内側に寄ってしまうこともあります。視野異常は、見える範囲が狭くなったり、一部が見えにくくなったりする状態です。ちょうど、トンネルの中から景色を見ているような感じになったり、絵の一部がぼんやり見えなくなったりするようなイメージですね。」
さくらさんは、ゆうたくんの手をそっと握りしめながら、不安そうに尋ねました。
「ゆうたも、斜視の傾向があるってことですか…?」
「はい、まだ断定はできませんが、その可能性はあります。早期に発見して、適切な対応をしてあげることが大切です。それに、この研究では、頭の形にゆがみのある子どもたちは、目の問題だけでなく、頭痛持ちになる確率も高いことがわかっているんですよ。」
さくらさんは、ゆうたくんの小さな頭を優しく撫でました。
「そんなに色々な影響があるなんて、知りませんでした…。ゆうたは、いつも右を向いて寝ることが多いので、それが原因かもしれません…」
「そうですね。赤ちゃんの頭はまだ柔らかいので、同じ方向ばかりを向いて寝ていると、頭の一部分にだけ圧力がかかって、形が平らになってしまうことがあります。でも、安心してください。早期に気が付いて、適切な対策をすれば、良い方向に向かうことが多いですよ。当クリニックでは、ゆうたくんのようなお子さんのために、ベビーヘルメットという、頭の形を整えるための装具を用いた治療も行っています。まるで、成長途中の木に添え木をして、真っ直ぐに育つよう手助けするようなものだと考えてくださいね。」
さくらさんの顔に、少し安心の色が浮かびました。
「ベビーヘルメット…初めて聞きました。ゆうたに合うでしょうか?」
「はい、お子さんの成長段階や頭の形に合わせて、適切なヘルメットを選ぶことができます。もちろん、ヘルメット治療だけでなく、寝る向きを変えるなどの工夫も大切です。そして、目の発達についても、定期的にチェックをしていく必要があります。必要であれば、眼科の先生と連携して、ゆうたくんの目の状態をしっかりと見ていくこともできますからね。」
私は、ゆうたくんの小さな手をそっと握りました。ゆうたくんは、私の指をぎゅっと握り返してくれました。
「先生、ありがとうございます。先生のお話を聞いて、すごく安心しました。もっと早く相談すればよかったです。」
「いえいえ、いつでも気になることがあれば、ユアクリニックお茶の水に気軽に相談してくださいね。小児科医の杉原としては、赤ちゃんの頭の形が、その後の目の発達や健やかな成長に影響しないように、できる限りのサポートをしたいと思っています。私は、ベビーヘルメット以外にも、小児アレルギーや小児漢方も得意としています。でも、一番大切にしているのは『予防』なんです。病気になる前に、できることをしっかりと行うことが、お子さんの健やかな成長には欠かせません。特に、お子さんの大切な目を守るためにも、少しでも気になることがあれば、早めに小児科医に相談してくださいね。」
さくらさんは、すっかり笑顔になっていました。
「はい、先生。これからも、ゆうたのことをよろしくお願いします!」
ゆうたくんは、私とさくらさんの会話をじっと聞いていたかのように、にこっと微笑みました。
この日から、ゆうたくんの頭の形を整えるための、さくらさんの小さな冒険が始まりました。ベビーヘルメットの治療と、毎日の寝る向きの工夫。そして、定期的な目のチェック。すべては、ゆうたくんが健康に育ち、広い世界をそのくりっとした瞳で自由に見て、未来を輝かせるためです。
お子さんの成長はあっという間です。このかけがえのない時期を、安心して過ごせるように、私たちユアクリニックお茶の水が全力でサポートさせていただきます。
何かご心配なことがあれば、いつでもお気軽にご連絡ください。
お子さんの笑顔のために、一緒に頑張りましょう!
参考資料:
- Ricci G, Vasco G, Baranello G, et al. Visual function in infants with non-syndromic craniosynostosis. Dev Med Child Neurol. 49 (8), 2007, 574-6.