メニュー

赤ちゃんの頭の形が気になったら?知っておきたい頭蓋縫合早期癒合症

[2025.03.30]

こんにちは、皆さん!小児科専門医の杉原です。

赤ちゃんの頭の骨は、成長に合わせてゆっくりと大きくなるように、いくつかの骨が組み合わさってできています。その骨と骨のつなぎ目を「頭蓋縫合」と呼びます。

この頭蓋縫合が、何らかの原因で早く閉じてしまう病気が「頭蓋縫合早期癒合症」です。今日は、当院では、赤ちゃんの頭のかたち外来を開いていますが、どうやって病的な「頭蓋縫合早期癒合症」とそうでないものを見分けるのでしょうか、というご質問に答えることにしました。

1. 頭蓋縫合早期癒合症ってどんな病気?

生まれたばかりの赤ちゃんにとって、頭蓋縫合は脳がぐんぐん成長するのに合わせて、頭蓋骨が柔軟に大きくなるための大切な役割を果たしています。

でも、この縫合が早く閉じてしまうと、頭の形が普通とは違う形に変形したり、脳が成長するための十分なスペースが確保できなくなって、頭の中の圧力(頭蓋内圧)が高くなってしまうことがあるんです。

頭蓋縫合早期癒合症には、大きく分けて二つのタイプがあります。

  • 非症候群性(孤立性)頭蓋縫合早期癒合症:
    • 頭蓋縫合が早く閉じることだけが見られるタイプです。
    • 原因はまだはっきりわかっていないことが多いです。
  • 症候群性頭蓋縫合早期癒合症:
    • 顔の骨の異常や、手足の指の癒合(合指症)など、頭蓋骨以外の症状も一緒に見られるタイプです。
    • こちらは、遺伝子の変化が原因であることが多いです。

2. こんなサインを見逃さないで!一般的な兆候と症状

早く気づくことができるサインと、病気が進むにつれて出てくるサインがあります。

早く気づくことができるサイン

  • 頭の形が明らかにゆがんでいる
  • 赤ちゃんの頭囲が、成長の標準よりも小さい
  • 頭のてっぺんにある柔らかい部分(大泉門)が、普通より早く閉じている
  • 早く閉じてしまった縫合に沿って、硬い隆起が触れる

これらのサインに気づいたら、少し心配になるかもしれませんが、ご自身で決めつけずに、まずは専門の先生に相談してみましょう。

病気が進むと出てくるサイン

  • いつまでも続く頭痛
  • 何度も吐いてしまう
  • 視力が悪くなる
  • 発達がゆっくりになる
  • 目が飛び出して見える
  • 目が内側や外側にずれて見える
  • 呼吸がしづらそう
  • おっぱいを飲むのが下手になる
  • 普段より高い声で泣く
  • 頭の柔らかい部分(泉門)が膨らんで見える

これらの症状が出てきたら、すぐに病院を受診してください。

3. 頭の形に注目!いろいろなタイプの頭蓋縫合早期癒合症

どの縫合が早く閉じるかによって、頭の形が変わってきます。

  • 矢状縫合早期癒合症:
    • 頭が前後に長くて、左右に狭い、舟のような形になります。
  • 冠状縫合早期癒合症:
    • 両側が閉じると、頭が前後に短くて、左右に広くなります。
    • 片側だけ閉じると、額の片側が平らになり、眉毛が上がって見えます。
  • 前頭縫合早期癒合症:
    • 額が三角形のように尖って見えます。
  • 人字縫合早期癒合症:
    • 後頭部の片側が平らになります。

4. 病院ではどんな検査をするの?

病院では、まず先生が赤ちゃんの頭の形をよく見て、触って確認します。そして、必要に応じて次のような検査を行います。

  • レントゲン検査:
    • 頭蓋骨の状態を確認します。
  • 3次元CT検査:
    • 頭蓋骨の形や縫合の状態を詳しく調べます。
  • MRI検査:
    • 脳の状態を確認します。
  • 頭部超音波検査:
    • 放射線被爆のリスクを避ける目的で、早期スクリーニングのツールとして研究されています。
  • 遺伝子検査:
    • 症候群性の疑いがある場合などに行います。

5. こんな時はすぐに病院へ!受診のタイミング

赤ちゃんの頭の形について気になることがあれば、生後6ヶ月頃までには小児科医や専門医に相談しましょう。特に、次のサインが見られる場合は、早めの受診が大切です。

  • 頭のゆがみが目立つ
  • 赤ちゃんの頭囲が小さい
  • 大泉門が早く閉じている
  • 縫合に沿って硬い隆起がある
  • 額が三角形に見える
  • 目が飛び出ている、または顔の左右で形が違う
  • 何度も吐く、元気がない
  • 発達がゆっくり

6. 間違えやすい病気:向き癖による頭の歪み

赤ちゃんの頭の形が気になる場合、頭蓋縫合早期癒合症の他に、寝る時の体勢などによって起こる頭の歪み(変形性斜頭症)も考えられます。

変形性斜頭症は、頭蓋縫合が早く閉じることが原因ではなく、頭蓋骨自体は正常な状態です。

7. 放置するとどうなるの?

頭蓋縫合早期癒合症をそのままにしておくと、脳の成長に影響が出たり、視力が悪くなったりすることがあります。顔の変形が残ってしまうことで、心が傷ついてしまうこともあります。

おわりに

赤ちゃんの健やかな成長のために、頭蓋縫合早期癒合症について知っておくことはとても大切です。少しでも気になることがあれば、遠慮せずに専門の先生に相談してください。早く治療を始めることで、良い結果が期待できます。

HOME

▲ ページのトップに戻る

Close

HOME