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帯状疱疹

 

帯状疱疹は、一度水ぼうそうにかかったことのあるお子さんが、何年か経ってから再発する病気です。他の人からうつる病気ではありませんが、帯状疱疹にかかった方が周りの人にうつしてしまうと、その方は水ぼうそうを発症します。

症状

小さなブツブツが集まって体の一部に広がることが特徴です。大人では強い痛みを伴うことが多いですが、お子さんの場合は、痛みを感じないことも少なくありません。発疹は1週間ほどでかさぶたになり、治癒に向かいます。

治療

痛みが強い場合には、塗り薬や痛み止めを処方することがあります。症状によっては、抗ウイルス薬を用いることもあります。

もっとも良いのは水ぼうそうワクチンをきちんと2回接種しておくことです。

家庭で気をつけること

お子さんが元気に見えても、帯状疱疹は水ぼうそうと同じウイルスによるものですので、ブツブツがかさぶたになるまではご家庭で過ごしてください。食事などはいつも通りで問題ありません。

保育所・学校

全てのブツブツがかさぶたになった後であれば、保育所や学校に行くことができます。

 

成人の帯状疱疹疼痛の治療(急性期・慢性期)【概要】

帯状疱疹(HZ)による痛みの管理は、急性期(発疹出現~約1か月)と慢性期(帯状疱疹後神経痛:PHNを含む)に分けて検討されます。以下に急性期と慢性期それぞれで有効性が認められている治療薬をまとめ、作用機序・有効性・安全性・使用時期・ガイドラインにおける位置づけ等を示します。

急性期の疼痛管理(帯状疱疹急性痛)

急性期に用いられる主な治療薬(西洋薬)一覧
薬剤(分類) 作用機序・特徴 有効性(エビデンス) 安全性・使用上の注意 ガイドラインでの位置づけ(急性期)
NSAIDs(非ステロイド鎮痛薬)例:イブプロフェン等 末梢のプロスタグランジン合成阻害により鎮痛・抗炎症。一般的鎮痛薬。 帯状疱疹急性痛の軽~中等度に有効。特定のRCTは少ないが、鎮痛効果でQOL改善が期待。抗ウイルス薬と併用で疼痛期間短縮の報告も。 短期使用では比較的安全だが、胃腸障害・腎機能に注意。高齢者では潰瘍リスク管理。 急性期の第一段階治療(軽度痛に推奨)。ガイドラインでもアセトアミノフェンと共に基本鎮痛薬として推奨。
アセトアミノフェン(鎮痛解熱薬) 中枢性にCOX阻害し鎮痛・解熱。単剤で鎮痛効果は中等度。NSAIDsと作用機序が異なり併用可。 急性期の軽~中等度痛に有効。エビデンスは限定的だが臨床経験的に広く使用。オピオイド併用で鎮痛相乗効果も。 肝毒性に注意(用量上限を遵守)。腎機能や消化器への影響は少ないが、過量で肝障害リスク。 急性期の第一段階治療。OTCでも入手可能で、ガイドラインでNSAIDsと並び基本的鎮痛薬として位置付けられる。
オピオイド(麻薬性鎮痛薬)例:モルヒネ、オキシコドン、トラマドール等 μオピオイド受容体刺激で強力鎮痛。トラマドールは弱オピオイド+SNRI作用。 強い鎮痛効果:急性期の激痛に有用。RCTでも疼痛50%緩和の効果が示され、NNT2.7。トラマドールも中等度効果(NNT4.8)。抗ウイルス療法下でも追加鎮痛が必要な場合に有効。 副作用:眠気、嘔気、便秘、呼吸抑制。依存・乱用リスクに留意。高齢者では少量から開始し慎重投与。トラマドールはせん妄に注意。 急性期の重度疼痛に第二段階として推奨。ガイドラインでは必要に応じ強オピオイドも考慮。短期間の使用に留め、他の鎮痛薬で十分な効果がない場合に併用。
抗てんかん薬(ガバペンチン・プレガバリン) 電位依存性Ca2+チャネルのα2δサブユニット結合により神経興奮を抑制。神経因性疼痛に有効。 急性帯状疱疹痛の軽減に有用との報告あり。早期投与で疼痛軽減しPHN移行リスクを下げ得るというエビデンスも。プレガバリンはガバペンチンの6倍の鎮痛力との報告も。 副作用:眠気、めまい、ふらつき。腎排泄のため腎機能低下時は減量。高齢者は転倒リスクに注意。漸増で忍容性を確認。 ガイドラインでは急性期からの使用も推奨神経障害性疼痛対策として抗ウイルス薬と並行し早期導入する場合あり。急性期からの投与でPHN予防効果を示す研究もあり。
コルチコステロイド(副腎皮質ステロイド) 抗炎症・免疫調節作用で神経根の炎症を軽減。疼痛緩和と生活機能改善が期待。 抗ウイルス薬との併用で急性期疼痛と生活の質(QOL)改善エビデンス。ただしPHN発症予防効果は明確でなく、単独使用は推奨されない。 副作用:血糖上昇、胃潰瘍、易感染性など短期でも注意。糖尿病や感染症ある患者では慎重適応。 重症例の補助療法。国際ガイドラインでは抗ウイルスと併用する場合がある(高リスク高齢者でQOL改善目的)。単独での使用は推奨されない。

補足:急性期では**抗ウイルス薬(アシクロビル、バラシクロビル等)**の早期投与が第一に推奨されます。抗ウイルス療法は疼痛期間を短縮し重症化を防ぐとともに、PHNの発症リスクも約半減させる報告があります。したがって、上記の鎮痛薬は抗ウイルス薬と併用されます。また、痛みが極めて強い場合や顔面など特定部位では、**神経ブロック(硬膜外ブロックや肋間神経ブロック等)**も検討されます。早期の神経ブロックは痛みを速やかに緩和し、慢性化(PHN)予防に寄与する可能性があります。ただし確立したエビデンスは十分でなく、施行には専門家の判断が必要です。

急性期における各薬剤の詳細とエビデンス

  • NSAIDs・アセトアミノフェン(非オピオイド鎮痛薬):急性帯状疱疹による痛みの第一選択となる一般鎮痛薬です。NSAIDsはシクロオキシゲナーゼ阻害による抗炎症・鎮痛作用を持ち、アセトアミノフェンは中枢作用で鎮痛効果を示します。それぞれ単独で帯状疱疹の軽度~中等度の痛みを緩和します。エビデンスとして、これらOTC鎮痛薬のみで十分な疼痛管理ができる症例も多く報告されています。ただしPHNのような重度の神経痛に単独では効果不十分であることも多く、必要に応じて他の鎮痛薬と併用します。NSAIDs長期使用は消化管潰瘍や腎機能障害リスクがあるため、急性期の短期使用に留めることが推奨されます。国際的な帯状疱疹治療ガイドラインでも、NSAIDs・アセトアミノフェンは急性期疼痛管理の基本として位置付けられています。

  • オピオイド(麻薬性鎮痛薬):帯状疱疹の急性痛が激痛で日常生活に支障を来す場合には、モルヒネやオキシコドンなどの強オピオイドが短期間用いられます。オピオイドは脊髄~中枢のμオピオイド受容体を刺激し強力な鎮痛効果を発揮します。ランダム化試験では、コントロールドリリースのオキシコドンが疼痛を50%軽減し、プラセボに比べ有意な鎮痛効果(NNT≈2.7)を示しています。モルヒネでも同様に疼痛強度を有意に低下させ、効果不十分時のレスキューとしてメサドンを用いた試験でもプラセボより疼痛緩和効果が確認されています。弱オピオイドのトラマドール(SNRI作用併有)も中等度の有効性があり、PHN患者125例のRCTで痛みの有意軽減(NNT≈4.8)が報告されています。急性期帯状疱疹痛に対しても、抗ウイルス薬治療下で鎮痛補助としてオピオイドが使われ、「抗ウイルス薬のみでは不十分な痛みには強オピオイドを併用せよ」との専門家見解もあります。ただし副作用と依存リスクが重大なため、短期間・低用量で慎重に使用し、改善次第減量中止します。国際ガイドラインでは、オピオイドは第二選択(もしくは第三選択)として位置づけられ、他の鎮痛薬で効果不十分な場合や、鎮痛補助的に漸増中の薬が効果発現するまで一時的に使用することが推奨されています。

  • ガバペンチン・プレガバリン(抗てんかん薬):本来てんかん治療薬ですが、神経障害性疼痛に有効であり、帯状疱疹急性期にも神経因性の痛みを和らげる目的で用いられます。作用機序は末梢神経の電位依存性カルシウムチャネルの補助的サブユニットに結合し、神経終末からの興奮性神経伝達物質放出を減少させることです。急性期からの投与により疼痛強度を下げ、PHNへの移行割合を減らせる可能性が示唆されています。実際、帯状疱疹患者にアミトリプチリン(TCA)やガバペンチンを急性期から投与するとPHN発症率が低下したとの報告があります。プレガバリンはガバペンチンの構造類似薬で、生体利用率が高く即効性があり、ある研究では鎮痛効果がガバペンチンの6倍との結果も示されています。両薬剤とも副作用として眠気、めまい、ふらつき等があり、高齢患者では転倒や認知機能低下に注意が必要です。腎機能低下時は減量します。ガイドラインでは、ガバペンチン・プレガバリンはPHNなど慢性期の一線薬ですが、急性期の疼痛管理にも有用であるとして早期導入が推奨される場合があります。特に急性期の痛みが強い場合や神経痛様の症状がある場合、抗ウイルス薬と並行して漸増的に開始します。

  • コルチコステロイド(副腎皮質ステロイド):プレドニゾロンなどのステロイドは強力な抗炎症作用により、急性期の神経根炎症を軽減して疼痛を和らげることが期待されます。単独では抗ウイルス作用がなく、ステロイドのみの投与は推奨されませんが、抗ウイルス薬との併用で急性期の痛みを減らし患者の生活の質(QOL)を改善するエビデンスがあります。例えば、高齢の帯状疱疹患者でアシクロビルに加えてプレドニゾンを短期間併用すると、疼痛や活動性の回復が早まったとの報告があります。もっとも、ステロイド併用がPHN発症率を有意に下げるかについては議論があり、現在のところPHN予防目的での rutin 投与は推奨されていません。ステロイド使用時は、副作用として血糖上昇、消化性潰瘍、精神症状、感染悪化などに注意し、糖尿病や感染症合併例では慎重に判断します。ガイドラインでは重症例(例:高度の痛みや顔面神経領域の帯状疱疹など)で抗ウイルス薬に追加できる選択肢として言及されています。期間は通常2~3週間程度の漸減投与が検討されます。

  • 神経ブロック・その他補助療法:急性期の痛みが通常の薬物治療で制御困難な場合、ペインクリニック領域で硬膜外ブロックや肋間神経ブロック(局所麻酔薬+ステロイド注入)が行われることがあります。エビデンスは統一されていませんが、顔面領域では星状神経節ブロックの早期実施でPHN移行率を下げたとの報告もあります。2019年の中国研究では、急性期HZ患者に薬物治療と神経ブロックを併用することで、2週間後のVAS痛みスコアが著明に改善し、1か月以降のPHN移行率も19%と従来報告より低かったとされています。ただし神経ブロック自体は侵襲的手技であり、標準治療ではまず抗ウイルス薬と鎮痛薬が優先されます。補完療法としては、急性期からのビタミンB12補給(末梢神経修復促進目的)や漢方薬の投与も試みられることがありますが、急性期の疼痛に対する確立した科学的根拠は限定的です。

慢性期の疼痛管理(帯状疱疹後神経痛:PHN)

慢性期に用いられる主な治療薬(西洋薬)一覧
薬剤(分類) 作用機序・特徴 有効性・エビデンス(PHN) 安全性・副作用・注意点 ガイドラインでの位置づけ(慢性期)
ガバペンチン/プレガバリン(抗てんかん薬) 電位依存性Caチャネルのα2δサブユニット結合で中枢への痛み信号伝達を抑制。ガバペンチンはゆっくり増量要、プレガバリンは即効性高。 PHN一線治療:多数のRCT/メタ解析で有効性が確認。ガバペンチンのNNT≈3(50%疼痛軽減)、プレガバリンNNT≈4.9。睡眠障害・QOLも改善。FDA承認(ガバペンチン2004年)。 副作用:眠気(~20%)、めまい(~28%)、浮腫、運動失調など。高齢者は転倒注意。腎機能で用量調整。ガバペンチンは1日3回、高容量で吸収低下あり。プレガバリンは1~2回投与可。 第一選択(第一群)。国際ガイドラインでTCAと並びPHNの最有力治療。漸増し十分量を投与することが推奨。忍容できない場合他薬へ変更。
三環系抗うつ薬 (TCA)例:アミトリプチリン、ノルトリプチリン等 モノアミン(セロトニン・ノルアドレナリン)再取り込み阻害により下行性疼痛抑制系を賦活。Naチャネル遮断作用も持ち鎮痛。抗うつ作用は不要な低用量で鎮痛。 PHN一線治療:複数のRCT/メタ解析で有効性確立。アミトリプチリンは患者の約2/3に中等度以上の疼痛軽減。TCA全体のNNT≈2.6と極めて有効。ノルトリプチリン等はアミトリより副作用少なく同等効果。 副作用:抗コリン作用(口渇、便秘、尿閉、霧視)、鎮静、体位低血圧、QT延長など。高齢者では心毒性に注意し、開始前心電図推奨。過量投与は致死的不整脈リスクがあるため処方量管理。 第一選択(第一群)。ガイドラインでGabapentin類と並ぶ推奨治療。特に若年~中年では有効。高齢者では副作用考慮しノルトリプチリン等選択も。低用量開始漸増(10–25mg夜)し効果判定。
SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬)例:デュロキセチン等 モノアミン再取り込み阻害で下行性疼痛抑制系を賦活。TCAと同機序だが選択性高く副作用軽減。抗うつ効果も持つ。 エビデンス:PHN個別のRCTは限られるが、他の神経痛(糖尿病性神経障害など)で有効性確立。最近の試験(PROCESS)で急性期からのデュロキセチン投与が疼痛の重症化を抑え、睡眠障害改善。PHN移行率は22.9% vs 28.8%と減少傾向も有する(有意差p=0.067)。 副作用:悪心、食欲低下、睡眠障害、血圧上昇など。高齢者では低用量から開始。腎機能でデュロキセチン注意。他のセロトニン作動薬と併用時はセロトニン症候群注意。 第二選択程度。国際的には第一群薬(TCA等)不耐または禁忌時の代替として位置づけ。糖尿病性神経痛の標準薬であり、高齢PHN患者にも副作用面でTCAより適する場合あり。急性期からの予防的投与も研究段階。
リドカイン貼付剤(局所麻酔薬) 局所Naチャネル遮断による知覚神経の興奮抑制。5%リドカインパッチを痛み部位に12時間貼付。患部への機械的保護効果も。 PHNの局所痛・アロディニアに有効。プラセボ対照RCT3件で有用性報告(疼痛スコア改善)。メタ解析ではSOR:B(中程度推奨)。患者の約30%で痛み50%軽減との報告も。TCAやガバペンチンと併用可能で相乗効果。 副作用:局所の発赤・かゆみ程度。全身吸収はごく僅か(血中濃度安全域内)。心疾患・肝障害にも概ね安全。貼付部位皮膚に湿疹がある場合は使用避ける。 第一選択の一部(特に局所的な表在痛やアロディニアに対し推奨)。ガイドラインでは高齢者など経口薬が難しい場合の第一線。単独も併用も可。副作用が少なくどの年齢でも安全
カプサイシン外用(唐辛子由来成分) TRPV1受容体アゴニスト。侵害受容線維を一過的に強く興奮させ、その後感作抑制・知覚神経の脱感作を起こす。0.075%クリームor8%高濃度パッチ。 PHNに有効:0.075%クリームは中等度効果(NNT≈3.3)。8%パッチは一回60分貼付で最大3か月痛み軽減し、低濃度より有効。2017年Cochraneレビューで高濃度パッチは優れた疼痛軽減を示すと結論。FDA承認(2009年)。 副作用:貼付部位の灼熱感、刺激感。一時的に痛み増強するため、貼付前に局所麻酔(リドカインクリーム等)で前処置推奨。クリームは1日数回の反復塗布が必要。 第二選択。ガイドラインでは局所療法としてリドカインと並ぶ推奨(SOR:B)。特に他の全身療法と併用し難治性PHNの鎮痛補助として用いる。8%パッチは専門医療機関で施行
オピオイド(経口・貼付)モルヒネ徐放錠・オキシコドン、トラマドール等 中枢性オピオイド受容体刺激で強力鎮痛。慢性痛では耐性や依存の懸念あり慎重適用。トラマドールは弱オピオイド+モノアミン再取込阻害。 エビデンス:PHNにおいても強力な鎮痛効果(VAS50%減少、NNT≈2.7)。RCTにてモルヒネやオキシコドンがプラセボより有意に疼痛軽減。トラマドールも有効性確認。ただし長期有効性と安全性に課題 副作用:便秘、眠気、悪心、呼吸抑制、依存など。高齢者では認知機能悪化や転倒リスク。貼付ブプレノルフィン等は皮膚刺激。乱用防止の教育とフォロー必須。 第二~第三選択。NeuPSIG等国際指針では他の第一選択が無効・不耐容の場合のみ使用を推奨。低用量併用で他薬の効果発現まで暫定的に使うことも。慢性期にはリスク高いため慎重な位置づけ

注: PHN治療におけるリドカイン5%貼付剤の有効性について、RCTの結果は一部相反します。プラセボ対照試験では有意差が小さい報告もありますが、患者の約30%に痛みの大幅軽減を示すなど臨床的意義は高いと評価されています。ガイドライン上もリドカイン貼付はPHNの標準治療の一つとして認知されています。

慢性期における各薬剤の詳細とエビデンス

  • ガバペンチン・プレガバリン(抗てんかん薬):PHNを含む末梢神経障害性疼痛の第一選択薬です。作用機序は神経終末のCaチャネル遮断による神経伝達抑制で、痛みの信号を減弱させます。ガバペンチンは1日1200~1800mgまで漸増し有効量を見極めます(それ以上の増量は副作用増大のみで効果は頭打ち)。プレガバリンは1日150~300mg程度で腎排泄、即効性があり調整しやすいです。エビデンス面では、PHNに対するガバペンチンの有効性は複数の大規模RCTで確認され、疼痛と睡眠障害の改善、QOL向上が示されています。メタ解析によれば50%以上の疼痛軽減を得るためのNNTはガバペンチンで約3、プレガバリンで約4~5と報告されています。これらはTCAと同等レベルの有効性です。米国FDAはガバペンチンをPHN適応として2004年承認しており、国際的にも推奨度が高い治療です。副作用としては眠気やめまいが多く(ガバペンチン:傾眠21%、めまい28%)、ふらつき、浮腫、消化不良などが起こります。特に高齢者では転倒や認知への影響に注意し、少量から開始します。またガバペンチンは吸収飽和のため1日3回投与が必要で、服薬負担がありますが、徐放性製剤も開発されています。プレガバリンは速効かつ1~2回投与で済み、ガバペンチン不十分例に切り替えると効果増強する例もあります。ガイドライン上、抗てんかん薬は三環系抗うつ薬(TCA)と並びPHN管理の両輪であり、高齢患者にも使いやすい第一選択肢とされています。

  • 三環系抗うつ薬(TCA):アミトリプチリンやノルトリプチリンは古典的な神経因性疼痛治療薬で、長年PHN治療の主力でした。作用機序はセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害による痛覚抑制系の増強で、さらに電位依存性Naチャネル遮断やα2受容体遮断を介した鎮痛効果もあります。抗うつ作用発現量より低用量(例えばアミトリプチリン25~75mg/日程度)で鎮痛効果を示すため、うつ病でなくとも疼痛目的で使用します。有効性は極めて高く、PHN患者での5つの系統的レビューは一貫してTCAの有効性を支持しています。例えばアミトリプチリンは患者の約2/3に疼痛の中等度以上の緩和をもたらし、複数試験のプール解析でNNT=2.64と算出されています。これは鎮痛薬として非常に優秀な値です。加えて、古い研究ですがアミトリプチリンを帯状疱疹急性期から90日間投与するとPHN発症率が低下したとの報告もあり、PHN予防的な観点から使われることもあります。しかし副作用も多く、抗コリン作用による口渇・便秘・尿閉、眠気、起立性低血圧、体重増加、頻脈、房室ブロックなどがあります。特に高齢者ではせん妄や心電図QT延長に注意が必要で、開始前に心疾患を評価し、低用量(10mg程度)から漸増します。過量服用は致死的不整脈リスクがあるため、処方は慎重に行います。TCAの中ではノルトリプチリンやデシプラミンはアミトリプチリンより抗コリン作用が弱く安全域が広い一方、鎮痛効果は同等とされ、副作用耐性が低い患者にはこれらが好まれます。ガイドラインではTCAはガバペンチノイドとともに第一選択(第一群)薬と位置付けられ、特に若年~中年のPHN患者で積極的に用いられています。高齢者では副作用リスクから第一選択から外される場合もありますが、効果は高いため少量から慎重に用いる価値があります。

  • SNRI(セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬):デュロキセチン(慢性疼痛治療に広く用いる)が代表です。作用はTCAと同様にモノアミン再取り込み阻害ですが、構造が異なり副作用が比較的少ないのが利点です。PHNに対するエビデンスは限定的ですが、糖尿病性神経痛や線維筋痛症ではデュロキセチンが有効(NNT≈6〜7程度)とされ、国際的ガイドラインで第一選択の一角です。PHNでもTCAが使えない場合や高齢者にデュロキセチンを代替することがあります。さらに近年、PHN予防目的で急性期からSNRIを投与する試みもされています。2024年報告のPROCESS試験では、帯状疱疹発症直後からデュロキセチン60mg/日を12週間投与する群で、標準治療群と比較して急性期~亜急性期(3~12週)の疼痛強度が有意に低く、中等度~重度の痛みや睡眠障害の発生率も減少しました。12週時点のPHN残存率はやや低かったものの有意差には届いていません(デュロキセチン群22.9% vs 対照群28.8%, p=0.067)。この結果はSNRIが急性期の痛み管理と機能改善に寄与する可能性を示唆しています。副作用として、デュロキセチンでは倦怠感、眠れない、不眠、めまい等が報告されており(有害事象発生率25.3% vs プラセボ6.7%)、忍容性に個人差があります。SNRIは現在ガイドライン上第二選択的扱いですが、TCAやガバペンチンが使いにくいケース(例えば心疾患・緑内障でTCA禁忌、肥満でガバペンチン避けたい等)で有力な選択肢となります。特に糖尿病を合併したPHNでは、うつ症状の緩和も期待してデュロキセチンが推奨されます。

  • リドカイン5%貼付剤:PHNの局所的な表在痛やオールオディニア(異痛症)に適した治療です。局所麻酔薬リドカインを含む貼付を患部に貼ると、皮膚から浸透したリドカインが末梢神経のNaチャネルをブロックし、異常興奮を抑制します。また痛覚過敏を起こした皮膚を物理的に保護する効果もあります。1日12時間貼付・12時間オフで使用し、最大3枚まで同時貼付可能です。リドカイン貼付の有効性について、エビデンスの質は中等度ですが、複数の試験でプラセボより疼痛軽減効果が示されています。特にアロディニアが強い患者では痛みの即時緩和が期待でき、痛みの日常生活への支障を減らします。ある試験ではリドカイン貼付群の約30%が痛みが半減したと報告されています。利点は副作用が局所反応のみと非常に安全なことです。血中への移行は3%程度で、全身的な副作用(眠気や内臓機能への影響)はほぼありません。貼付部位に発赤・掻痒感が起きることがありますが重篤ではありません。高齢者や多剤併用中の患者にも追加しやすいため、国際ガイドラインではPHN治療の基本選択肢の一つとなっています。特に全身薬に耐えられない高齢患者や、限局した痛みが主症状の患者で第一選択となり得ます。なお、日本では市販されていませんが、一部地域ではリドカイン含有クリームやゲルも類似の目的で使用されます。

  • カプサイシン外用(高濃度カプサイシンパッチ等):唐辛子成分カプサイシンを利用した局所鎮痛療法です。カプサイシンは知覚神経のTRPV1受容体を活性化し、一時的な激しい刺激の後に神経終末の機能不全(脱感作)を生じさせます。これにより、痛みの伝達が長期間にわたり低下します。従来から0.025~0.075%濃度のカプサイシンクリームが1日数回塗布で用いられてきましたが、効果は中等度で頻回の塗布が必要でした。近年登場した8%カプサイシンパッチ(Qutenza®)は、医療機関で患部に1回60分貼付するだけで最大3か月の鎮痛効果を得られる高濃度製剤です。2017年のコクランレビューでは、PHN患者において高濃度パッチは低濃度クリームより痛み緩和に優れると結論づけられています。このため高濃度パッチはPHN治療薬としてFDAにも承認されています(適応はPHNのみ)。カプサイシン療法の欠点は、適用時に強い灼熱痛を伴うことです。パッチ適用時は事前に患部にリドカインクリーム等を塗布して局所麻酔し、施術後も一過性の発赤・ヒリヒリ感が出ることを患者に説明する必要があります。それでも局所副作用以外の全身影響はなく安全性は高いです。ガイドライン上はリドカイン同様に第二選択の局所療法として推奨され、特に経口薬だけでは痛みが残る場合の併用療法として位置づけられます。高濃度パッチは専門医療機関でしか扱えませんが、難治性PHNの患者に対しては有用な追加選択肢です。

  • オピオイド(慢性期):PHNの痛みが他の手段で十分緩和しない場合、モルヒネ徐放剤やオキシコドン徐放剤などのオピオイドが用いられることがあります。ただし慢性期のオピオイド使用は耐性や依存の問題があり、ごく慎重に検討される最終手段です。エビデンスとして、PHN患者におけるオピオイドの有効性は複数のRCTで示されています。例えばある試験では、オキシコドン徐放剤で疼痛が50%軽減した患者割合がプラセボより有意に高いことが報告されています。モルヒネでも同様の結果が得られています。また弱オピオイドのトラマドールについても、中等度の疼痛緩和効果がRCTで確認されています。これらをメタ解析的に見ると、オピオイド全体のNNTは約2.7とTCAやガバペンチンに匹敵する効果です。しかし一方で、長期使用による副作用・有害事象(便秘、眠気、吐き気、内分泌異常など)や依存のリスクが高く、PHN患者は高齢者が多いため認知機能低下・転倒などの懸念もあります。したがってガイドラインではオピオイドは二次的選択とされ、TCA・抗てんかん薬・局所療法など第一選択群が無効または禁忌の場合に限り検討するとされています。また、ペインクリニックの専門医は、ガバペンチン等の第一線薬を漸増している間のつなぎや、複数薬剤併用で相乗効果狙いとして低用量のオピオイドを補助的に加えることもあります。実際の臨床ではトラマドール(非麻薬)やタペンタドール(μ刺激+NRI作用を持つ新規薬剤)などを工夫して使い、強オピオイドを極力避ける努力がなされています。オピオイド貼付剤(ブプレノルフィンやフェンタニルテープ)は血中濃度が安定し管理が容易ですが、これも基本的にはがん疼痛向けでありPHNには慎重適用です。

慢性期における漢方薬・補完代替療法

PHNの痛みは難治性で、漢方薬や各種補完療法も科学的検証とともに用いられてきました。以下に、エビデンスのある代表的な漢方薬・補完療法を示します(※いずれも西洋医学的治療の補助として位置づけられます)。

主な漢方薬・補完療法の一覧

漢方・補完療法 作用機序・特徴 有効性・エビデンス 安全性・注意点 ガイドラインでの位置づけ
牛車腎気丸(ごしゃじんきがん)(八味地黄丸+牛膝・車前子) 古来より腰痛・四肢のしびれ改善に用いる処方。補腎剤(腎陽虚改善)で、含有生薬に加工附子(トリカブト)・牛膝など。動物研究で脊髄オピオイドδ受容体を介し痛覚抑制(ダイノルフィン放出増加)や一酸化窒素(NO)経路の関与が示唆。糖尿病性神経痛や抗癌剤誘発末梢神経障害に有効との臨床報告多数。 PHN直接のRCTは無いが、糖尿病やがんの末梢神経障害痛の症状軽減に効果。症例報告でPHNの痛み軽快例もあり、特に冷えを伴う神経痛に有用とされる。合成オピオイドや抗うつ薬の効果不十分例で補助的に投与され、痛みとしびれの改善例あり。 副作用:長期大容量で偽アルドステロン症(低K血症、高血圧)リスク(甘草含有)。添付の加工附子は適正量なら安全だが、心毒性に留意。腎機能低下時は注意。 補助療法:日本の疼痛ガイドラインでは直接の記載なしだが、西洋薬で不十分な慢性痛に補助的に考慮。末梢神経障害の長期管理に漢方併用は一部慣習的に行われる。PHNにも応用例あり。
桂枝加朮附湯(けいしかじゅつぶとう)+附子末(ブシ末) 冷えによる関節痛・神経痛に用いる処方(桂枝加朮附湯:桂枝+朮+附子など)。さらにブシ末(加工附子の細粒)を増量併用することで強力な温補作用と鎮痛を狙う。漢方的には冷刺激で痛み悪化する虚証の痛みに適合。 症例報告レベルのエビデンス:冷風や冷気で増悪するPHN高齢患者15例に、本処方(TJ-18+TJ-3022)を投与した試験で、12例で痛みVASが平均76.5%改善。3例は副作用で中止も重篤事象なし。冷刺激で悪化するPHNに対し有望な治療法との報告。 副作用:桂枝加朮附湯自体は比較的安全だが、ブシ末(トリカブト加工製剤)は**過量で中毒症状(痺れ、不整脈)**のリスク。漸増で最大5gまで使用、安全性モニター下で投与。のぼせ・胃部不快感が出た例あり。 補助療法:冷えで痛みが誘発・増悪するタイプのPHN患者に漢方専門医の裁量で併用される。少数例ながら著効例が報告されており、難治性PHNの選択肢の一つ。ただしエビデンスが限定的なため標準治療ではない
抑肝散(よくかんさん)芍薬甘草湯(しゃくやくかんぞうとう) 等 抑肝散は神経の高ぶりを抑える処方で中枢神経症状緩和に使われ、基礎研究でグルタミン酸神経伝達抑制・IL-6低下による鎮静作用が示唆。芍薬甘草湯は筋肉痙縮やこむら返りの緩和に用い、抗アセチルコリン・抗プロスタグランジン作用で疼痛閾値を上げるとの報告。 エビデンス:PHN直接の大規模試験はないが、抑肝散は不眠やイライラを伴う神経痛患者の症例で疼痛軽減と睡眠改善に有用とされる。芍薬甘草湯は動物モデルで神経障害性疼痛のアロディニア・痛覚過敏を有意に軽減。筋痙縮による痛みを和らげる効果も期待される。 副作用:抑肝散は比較的安全だが、まれに肝機能障害報告あり。甘草含有処方(芍薬甘草湯など)は低K血症に注意。 補助療法:PHNに伴う不眠・神経過敏の緩和や、筋肉のこわばりによる痛み対策として、補助的に使用されることがある。根拠は主に臨床経験と小規模研究に留まる。
鍼灸療法(鍼治療・灸) 鍼刺激により内因性オピオイド(エンドルフィン)放出やゲートコントロール機構活性化で鎮痛効果。灸(温熱刺激)で血行改善と免疫調節。中国や東アジアで古くからPHN痛管理に併用。 科学的エビデンス:メタ解析(RCT7件)では、鍼治療が薬物治療より痛みスコアを有意に改善したとの結果(VAS約1.8ポイント低下)。ただし試験の質は総じて低く、「痛みの総合的改善度や生活の質では薬物と有意差なし」との結論。それでも疼痛強度の低減には一定の有効性が認められ、「安全で有望な補助療法」と位置付けられる。中国のガイドラインではPHNに鍼灸併用を推奨する記載もあり。 安全性:適切な施術では副作用ほぼ皆無。ごくまれに出血・内出血、稀有な合併症として気胸など。灸は低温火傷注意。 補助療法:国際的にはエビデンス不十分ながら患者希望があれば考慮される。特に西洋薬だけでは不十分な場合、痛みと伴う不安の軽減に寄与する可能性がある。一部の専門的施設でPHN管理に組み込まれる。
神経ブロック・神経調節(パルスRF、脊髄刺激など) ペインクリニック領域の治療。硬膜外や肋間神経ブロックで局所麻酔/ステロイドを投与し痛み伝導路を遮断。パルス高周波(PRF)治療は神経節に高周波電流を当て神経の興奮性を低減。脊髄刺激療法(SCS)は電極で痛覚伝導を抑制。 エビデンス:2016年中国の専門家コンセンサスで、PHNに神経ブロックやPRFが有効との記載。2019年の系統的レビューでは、PRFはPHNのセカンドライン治療として有望(ただしエビデンス質低)と結論。また難治性PHNにSCSを早期導入しPHN発症を抑制したケース報告もあります。一方、2000年の研究で交感神経ブロック(星状神経節ブロック等)のPHN予防効果は結論が出ず議論中。 安全性:侵襲的処置のため感染・出血・神経損傷リスクあり。PRFは熱損傷少ないが完全無害ではない。SCSは外科的植込みが必要。費用も高い。 第三選択:他の保存的治療が失敗した難治性PHNにのみ検討。ガイドラインでは通常言及されないが、痛み専門医のもとケース毎に判断。日本でも難治例で鍼灸や神経ブロックを併用することがある。

慢性期における漢方・補完療法の詳細

  • 牛車腎気丸:八味地黄丸という腎陽虚(いわゆる老化による機能低下)を補う処方に牛膝(ごしつ)と車前子(しゃぜんし)を加えた処方です。古くから腰痛や下肢の痺れなどに用いられ、日本では糖尿病性末梢神経障害の痛みや痺れ緩和目的によく処方されます。PHNへの直接的な大規模試験はありませんが、基礎研究では牛車腎気丸の投与で脊髄内のオピオイドペプチド(ダイノルフィン)放出を増やし鎮痛すること、及び末梢でNO(一酸化窒素)を増やし血流改善する作用が示唆されています。臨床的にも、牛車腎気丸を長期服用した糖尿病患者で「足の痛み・痺れが和らいだ」という報告や、抗がん剤誘発神経障害に対し痛み悪化を抑える効果が認められています。PHNに対しても、痛みと痺れを訴える高齢患者で西洋薬と併用し症状が改善したケースがあります。副作用は比較的少ない処方ですが、甘草を含むため低カリウム血症などに注意します。また加工ブシ(トリカブト)は含まれていますが漢方製剤では適切に減毒処理されており通常量で中毒は起こしません。ガイドライン上明記はないものの、臨床では西洋薬で効果不十分な慢性疼痛へのアドオンとして試みられることがあります。

  • 桂枝加朮附湯+附子末:冷えによって悪化する神経痛に使われる処方です。桂枝加朮附湯(桂枝・芍薬・生姜・甘草・白朮・附子から成る)は冷え性で虚弱な人の関節痛・神経痛に効くとされ、そこにさらに附子末(一段と強いトリカブト製剤)を追加投与します。帯状疱疹後神経痛の患者でも「寒冷刺激で痛みが増す」というタイプの方がいますが、そうした方にこの組み合わせが奏効する場合があります。大阪大学の漢方外来の報告では、平均74歳のPHN患者15例(全員が「冷えると痛みが強まる」と自己申告)に対し桂枝加朮附湯7.5g+附子末1.0gから開始し漸増したところ、12例で痛みのVASが平均76.5%改善し、日常生活動作も向上しました。効果発現には数週間を要しましたが、多くの患者で顕著な鎮痛が得られています。一部患者にホットフラッシュ(ほてり)や胃部不快感が出現し桂枝加朮附湯を中止しましたが、附子末の追加量を調整することで12例は治療継続でき、副作用による重篤中止例はありませんでした。このように、本処方は冷えで増悪する難治性PHNに対し有望と考えられます。但し症例数が少なくプラセボ対照ではないため、更なる研究が必要です。附子末は使い方を誤ると中毒症状(しびれ、不整脈など)を起こす恐れがあるため、漢方専門医の管理下で漸増します。桂枝加朮附湯自体は体を温め痛みを和らげる穏やかな処方で、副作用は少ないです。ガイドラインに直接は載っていませんが、臨床的には冷痛型のPHN患者に漢方治療として試みられることがあります。

  • 抑肝散・芍薬甘草湯などその他漢方:PHN患者の中には不眠や神経過敏、筋肉のこわばりなどを伴う方もおり、それら症状に対して漢方薬を併用することがあります。抑肝散は神経の興奮を鎮める処方で、認知症の易怒性改善などにも使われますが、PHN患者での不眠やイライラを和らげた報告があります。基礎研究では抑肝散が脳内グルタミン酸神経伝達を遮断し、炎症性サイトカイン(IL-6)を調節することで鎮痛・鎮静効果を発揮するとの知見もあります。芍薬甘草湯は筋肉の痙攣や疼痛緩和に即効性があり、末梢のアセチルコリン受容体を遮断し筋収縮を和らげるほか、プロスタグランジン産生抑制による鎮痛効果も示唆されています。神経痛モデルの動物では芍薬甘草湯投与で痛覚過敏が有意に改善した報告もあります。これら漢方はPHNそのものを治すものではありませんが、患者の全身状態を整え痛みへの対処を助ける支持療法として活用されます。安全性は比較的高いですが、漢方ゆえ効果に個人差があります。

  • 鍼灸(はり・きゅう):東洋医学的アプローチもPHNで試みられています。鍼治療は痛みの経路に刺鍼することで内因性のオピオイド様物質を放出させたり、脊髄レベルでのゲートコントロール(痛み伝導抑制)を働かせたりすることで鎮痛効果を発揮します。また灸(お灸)は温熱刺激で血行を良くし局所の免疫反応を調節するとされます。PHN患者に対する鍼治療の有効性については、2018年の系統的レビューがあります。それによれば、RCT計7件を分析した結果、鍼治療は薬物治療と比べ疼痛強度(VASスコア)を有意に大きく低下させたと報告されています。平均で約1.8ポイントVASが改善しており、痛みが比較的強い患者には有益と考えられます。一方で、痛みの総合的な評価や生活の質(QoL)の向上においては有意差がなく、試験の質も高くないことから、「鍼が薬物より明確に優れるとは言えないが、痛み緩和に役立つ安全な補助療法である」と結論付けられています。中国ではPHNに鍼灸を組み合わせることが一般的で、ガイドラインでも推奨されています。鍼灸の副作用はごく軽度の出血や内出血以外ほとんど報告がなく、安全性は高いです。日本国内でも、標準治療で効果不十分なPHN患者に鍼灸を紹介し、痛みとともに不安や睡眠障害の改善が得られるケースがあります。総じて、鍼灸は西洋医学治療を補完する選択肢として位置づけられ、患者の希望や適応によって考慮されます。

  • 神経ブロック・神経刺激療法:PHNがどうしても緩和しない場合、ペインクリニック専門医による侵襲的治療が検討されます。代表的なのは神経ブロックで、硬膜外ブロックや肋間神経ブロックにより痛みの伝導路に局所麻酔薬やステロイドを注入し、一時的に痛みを遮断します。これにより休止していた創傷治癒や神経修復を促進し、「痛みの悪循環」を断ち切る狙いがあります。急性期ではPHN予防目的でブロックを行うこともありますが(上述)、慢性期PHNでも定期的な神経ブロックで痛みがコントロールできる場合があります。しかし効果は一時的であり、多くは数週間おきの反復が必要です。パルス高周波(PRF)療法は比較的新しい痛み治療で、高周波電流を断続的に神経節に流し神経の発火頻度を下げるものです。熱損傷を与えない程度のエネルギーで神経機能をリセットするイメージで、特に三叉神経痛などで応用されています。PHNの三叉神経領域の痛みにPRFを行い有効だった報告もあります。また、脊髄刺激療法(SCS)は脊髄後索に電極を留置し、電気刺激で痛み信号伝達を抑制する方法です。重度の帯状疱疹後神経痛で他の治療が無効な場合にごく稀に適用されます。2012年のケースシリーズでは、PHN発症早期に一時的に脊髄刺激を行うことで慢性痛への移行を阻止できたとの報告もありました。ただし、これら侵襲的治療は大規模な比較試験が不足しており、明確なガイドライン勧告には至っていません。2013年のNeuPSIG(国際疼痛学会の神経因性疼痛部会)のガイドラインでは、PHNに対する介入的治療(ブロックやPRF)のエビデンスは質が低いとされつつ、難治例では検討の余地ありとされています。中国の2016年専門家コンセンサスでは、PHN治療に神経ブロックや高周波凝固を積極的に組み合わせる方針が示されています。安全性面では、神経ブロックは施行部位の感染や出血、神経損傷のリスクがわずかながらあります。PRFも基本的には安全ですが、効果が出ない場合もあり反復治療が必要です。SCSは外科的手術となり、機器植込みに伴う感染リスクや費用の問題があります。従って、これらは最終的な選択肢として、痛みが極めて重篤でQOLが著しく低下している患者に、専門施設で提供される治療と言えます。

以上、帯状疱疹に伴う疼痛の急性期・慢性期治療について、西洋薬、漢方薬、補完療法にわたり国際的エビデンスに基づき概説しました。急性期では抗ウイルス薬による原因治療が第一であり、これに十分な鎮痛を加えることで急性疼痛の緩和とPHN移行の予防を図ります。慢性期(PHN)では複数の治療を組み合わせ、薬理学的にはガバペンチノイドやTCAを中心に、局所療法や必要に応じてオピオイドを用いて痛みと生活の質を管理します。漢方や補完療法も適切に併用すれば、痛みの感じ方や患者の全身状態改善に役立つ場合があります。重要なのは、患者一人ひとりの症状やリスクに合わせて治療法を選択・組み合わせることであり、ガイドラインも個別化した多角的アプローチを推奨しています。帯状疱疹痛は適切に治療すれば多くは軽快しますが、難治性の場合は専門医への紹介も検討し、最新の知見に基づく治療を行うことが望ましいでしょう。

参考文献:

BMJ (2003) - 帯状疱疹およびPHNの治療(抗ウイルス薬+ステロイド併用の効果と急性痛管理)
Frontiers in Neurology (2022) - 帯状疱疹診療ガイドライン2019 (急性期疼痛にNSAIDs・ガバペンチン等推奨)
J Fam Pract (2009) - PHN痛みに有効な治療:TCA, ガバペンチン, プレガバリン, オピオイド, リドカイン, カプサイシン
Pain and Therapy (2018) - PHN管理の現状(抗てんかん薬・抗うつ薬が第一選択)
Pain and Therapy (2018) - TCAの作用機序とNNT(2.1–2.6)
Pain and Therapy (2018) - リドカイン貼付剤の作用機序と安全性(局所作用・全身副作用ほぼなし)
Pain and Therapy (2018) - カプサイシン8%パッチの有効性(高濃度で優れた鎮痛)と局所副作用
Pain and Therapy (2018) - オピオイドはPHNで第二/三次選択(第一選択薬増量中の補助に少量用いることも)
Clin Infect Dis (2024) - Duloxetine早期投与試験(PROCESS):急性期痛み軽減・PHN発症率低下傾向も副作用に注意
J Alt Compl Med (2012) - 冷刺激で増悪するPHN高齢者への桂枝加朮附湯+附子末療法:VAS約76%改善の症例報告
Medicine (Baltimore) (2018) - PHNに対する鍼治療メタ解析:疼痛強度の有意な減少、安全だが質に限界あり

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