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ぎょう虫症

保護者の皆様の中には、お子さんが夜間におしりをかゆがったり、ムズムズとした仕草を見せたりして、ご心配になられた方はいらっしゃいませんか。 「うちの子だけだろうか」「何か不潔にしていたせいだろうか」と、不安をお感じになるかもしれませんが、どうぞご安心ください。 それは決して珍しいことではなく、特定の衛生状態が原因とは限りません。

そのかゆみは、「蟯虫症(ぎょうちゅうしょう)」という寄生虫が原因である可能性があります。 本日は、この蟯虫症について、詳しくご説明いたします。

蟯虫症とは、どのような病気でしょうか?

「蟯虫(ぎょうちゅう)」とは、長さ1cmほどの白く細い糸状の寄生虫です。これは人間の腸、特に盲腸のあたりに寄生します。 「お腹の中に虫が」と聞くと、大変驚かれるかもしれませんが、この蟯虫自体が腸の中で深刻な害を及ぼすことは、通常ありません。

では、なぜかゆみが生じるのでしょうか。

問題となるのは、メスの蟯虫が夜間、お子さんが就寝中に肛門の周囲に出てきて産卵する習性です。 この産卵の際の刺激や、卵を固定するための粘液が、強いかゆみを引き起こします。夜間に特に症状が現れるのはこのためです。

感染経路についてご説明します。

主な感染経路は、この卵が口から入ること(経口感染)です。 夜間にかゆみのために肛門周囲を掻いてしまうと、目に見えないほど小さな卵が手指や爪の間に付着します。 その手で玩具や寝具、ドアノブなどを触れると卵が拡散し、別の方がそれに触れ、無意識のうちにその手を口元へ運ぶことで感染が成立します。 また、ご自身で掻いた手から再びご自身の口へ卵が入る「自家感染」も起こり得ます。

このため、幼稚園や保育園、小学校といった集団生活の場では、感染が広がりやすい傾向があります。これは特定の衛生環境の問題ではなく、集団生活においては誰にでも起こり得る感染症です。

診断された場合の治療について

もし検査で蟯虫の感染が確認された場合でも、ご安心ください。適切な治療法が確立されています。 治療は「駆虫薬(くちゅうやく)」という、寄生虫を体外へ排出させるお薬を内服するだけです。 「コンパントリン」といった薬剤が一般的で、通常1回の内服で約90%の効果が期待できます。 ただし、腸内で卵から孵化したばかりの幼虫には効きにくいため、念のため2週間後にもう一度内服し、確実な駆除を目指すことが一般的です。

治療において最も重要な注意点

それは、「ご家族全員で同時に」内服治療を行うことです。 保護者の方に症状がなくても、無症状のまま感染している可能性は否定できません。 ご家族内で感染の連鎖が起きていると、お子さんだけが治療しても、ご家族から再び感染してしまう「再感染」を繰り返すことになります。 この感染の連鎖を断ち切るため、症状の有無にかかわらず、同居されているご家族全員での治療が原則となります。

ご家庭での感染予防と再発防止のポイント

お薬による治療と並行して、ご家庭での以下の対策が、再感染を防ぐために非常に重要です。

  1. 爪を短く切り、手洗いを徹底する 卵が爪の間に隠れるのを防ぎます。また、トイレの後、排便後、食事の前には、石鹸を用いた丁寧な手洗いを習慣づけてください。

  2. 朝の入浴またはシャワー 夜間に肛門周囲に産み付けられた卵を洗い流すため、朝一番のシャワーや入浴が非常に効果的です。

  3. 下着や寝具のこまめな交換 卵が付着している可能性のある下着、パジャマ、シーツ類は、治療開始日を中心にこまめに交換し、洗濯してください。

当院が重視する「予防医療」について

ここで少し、当院の診療方針についてお話しさせてください。 ユアクリニックお茶の水では、小児アレルギーや小児漢方といった専門分野も担当しておりますが、それら全ての治療の根底にあるのは「予防医療」の重要性です。 病気になってからの治療はもちろん重要ですが、それ以上に「病気にかからないこと」がお子さんの健やかな成長にとって最も大切であると、私は考えています。

今回の蟯虫症における手洗いや入浴といった生活習慣も、まさに「予防」の一環です。 そして、これはワクチン(予防接種)によって防ぐことのできる、より重篤な感染症についても同様です。 お子様がたを安全なワクチンで守り、皆様が安心して日々を過ごせるよう尽力することが、私たち小児科医の重要な使命であると確信しております。

おわりに

お子さんのおしりのかゆみは、保護者の皆様にとってご心配なことと存じます。 しかし、蟯虫症は決して特別な病気ではなく、正しく対処すれば怖いものではありません。

「もしかしたら…」とご不安に思われたり、症状が続いたりする場合は、どうぞお一人で悩まず、お気軽にユアクリニックお茶の水までご相談ください。 責任をもってお話を伺い、診療いたします。 お子様の健やかな毎日と、ご家族皆様の安心のために、私たちがサポートいたします。

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