プロアクティブ療法, 副鼻腔気管支症候群, デラベリング, 食物蛋白誘発胃腸症
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小児アレルギー指導Q&A

ユアクリニックお茶の水へようこそ

ユアクリニックお茶の水の院長がお話しします。日々、外来で多くのお父さん、お母さんと接していると、アレルギーについての悩みは本当に尽きないなと実感します。インターネットには情報があふれていますが、何が正しいのか、わが子には何がベストなのか、迷ってしまいますよね。今日は、アレルギー診療の最前線で私たちが大切にしていること、そしてガイドラインには書ききれない現場の知恵を、少し肩の力を抜いてお伝えしたいと思います。

アトピー性皮膚炎治療:塗り薬の本当の力を引き出すコツ

アトピー性皮膚炎の治療で、一番大切なのは何だと思いますか。実は、何の薬を塗るかよりも、どう塗るか、つまり塗り方のコツなんです。

以前、ある専門医の先生から聞いたエピソードがあります。11歳の男の子が、適切な薬を処方されているのになかなか湿疹が治らず、3ヶ月ぶりに来院したそうです。肌の状態を数値化するスコア(EASI)は決して良い状態ではありませんでしたが、アレルギーエデュケーター(PAE)という、いわば塗り方のプロである専門スタッフが丁寧に指導を行ったところ、たった2週間で見違えるほど肌がきれいになったといいます。

良くなったからとすぐにやめてしまうのではなく、きれいな状態を維持するために定期的に薬を塗る「プロアクティブ療法」。これが、再燃を防ぐ鍵になります。お料理に例えるなら、最高級の食材(お薬)があっても、火加減(塗り方)を間違えるとおいしく仕上がらないのと似ていますね。

子どもの喘息:そのゼーゼー、本当に喘息ですか?

子どもがゼーゼーしていると、真っ先に喘息を疑うかもしれません。でも、実は別の原因が隠れていることもあります。

ある診療現場で、重症の喘息として非常に強い吸入薬や分子標的薬(注射薬)まで使っていた9歳の男の子がいたそうです。しかし症状が改善せず、詳しく調べてみると、実は副鼻腔気管支症候群(SBS)という、鼻の炎症が下気道に影響を与える病態だったことが分かりました。喘息の薬ではなく、適切な鼻の治療やマクロライドという抗菌薬の少量投与を行ったことで、あんなに手強かったゼーゼーがすっかり消えてしまったといいます。

もし、標準的な喘息治療をしていても良くならない場合は、鼻の症状や膿のような鼻汁が出ていないか確認してみてください。肺と鼻は、一本の道でつながっている家族のようなものですから。

通年性鼻炎に対する舌下免疫療法:長い目で見守る治療

一年中鼻がつまっている、いびきをかく、口を開けて寝ている。これらは子どもからのSOSかもしれません。最近では、5歳から始められる舌下免疫療法(SLIT)が普及してきました。

これは、お薬を舌の下に置いてアレルギー体質そのものを変えていく治療です。ただ、魔法のようにすぐ効くわけではありません。効果が出るまでには数ヶ月かかり、3年から5年という長い期間の継続が推奨されています。

導入の際は、服用前後2時間の激しい運動や入浴の制限など、生活リズムを整える必要もあります。焦らず、まずは環境整備と飲み薬で症状を落ち着かせながら、お子さんの成長に合わせて最適なタイミングを一緒に探していきましょう

薬物アレルギーのラベルを剥がす勇気:デラベリングとは

昔、風邪をひいたときに薬を飲んで発疹が出たから、それ以来ずっと「ペニシリンアレルギーです」と言い続けている。そんなお子さんは意外と多いものです。

しかし、実際に検査をしてみると、本当にアレルギーなのは申告者の10%未満という報告があります。多くの場合、薬のせいではなく、ウイルス感染そのものの症状で発疹が出ていた、というわけです。

これをそのままにしておくと、将来、本当にその薬が必要になったときに第一選択薬が使えないという不利益を被ります。私たちはこれを「デラベリング」、つまり間違ったラベルを剥がす作業と呼んでいます。専門の医療機関で正しく評価し、使える薬を増やしてあげることは、お子さんの未来への大きなプレゼントになります。

お腹のアレルギー:目に見えない反応、食物蛋白誘発胃腸症や好酸球性消化管疾患(EGIDs)

食べてすぐに蕁麻疹が出るタイプとは違い、数時間から数日経ってから下痢や嘔吐が出るアレルギーもあります。食物蛋白誘発胃腸症好酸球性消化管疾患(EGIDs)と呼ばれるものです。

これらは血液検査の数値だけでは原因食物が特定できない場合が多いのが厄介なところです。ある赤ちゃんが、豆腐などの大豆製品を食べると下痢を繰り返していたそうですが、これが偶然の体調不良なのか、それともアレルギーなのかを見極めるのは非常に慎重な判断を要します。除去試験や負荷試験を行い、一つひとつ丁寧に進めていくことが、確かな診断への近道です。

ナッツ類の導入:慎重かつ大胆に

最近の大きな変化は、アレルギーが心配な食べ物ほど、むしろ早めに食べ始めた方が予防につながる可能性がある、という考え方です。

ピーナッツアレルギーの発症リスクが高い環境では、乳児期の離乳食においてなるべく早く摂取を開始する方が有益であるという報告があります。ただし、ここで一番注意してほしいのが、誤嚥(ごえん)です。5歳以下の硬い豆やナッツの摂取は窒息の危険があるため、消費者庁からも注意喚起されています。

導入するなら、粉末状やペースト状にして、体調の良い日の日中に少しずつ。心配な場合は、血液検査で感作の状態を確認してからでも遅くはありません。

さいごに

アレルギーの治療は、時に長旅のように感じられるかもしれません。でも、正しい知識と適切なサポートがあれば、子どもたちは自分の力で健やかな毎日を取り戻していきます。私たちユアクリニックお茶の水は、その旅の伴走者でありたいと考えています。どんなに小さな疑問でも、いつでも相談してくださいね。


こちらの記事は、東京小児科医会報2025.October の記事「アレルギー診療に関する様々な相談への対応」福家辰樹先生の記事をリライトしたものです。

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