お子さんのアレルギー性鼻炎
お子さんの鼻アレルギー(アレルギー性鼻炎)について
- 問診や鼻の中の観察で、検査なしでも診断できることがほとんどです
- お子さん本人の気持ちも聞きながら、保護者の方と一緒に治療方針を決めます(shared decision making)
- 必要に応じて、皮膚テストやアレルギー抗体検査で原因アレルゲンを特定します
- 薬が十分に効かない場合は、使い方の確認・アレルゲンの見直しなどをまず行います
アレルギー性鼻炎(鼻アレルギー)は、アレルゲン(アレルギーの原因物質)が鼻の粘膜に触れることで起きる病気です。代表的な症状は「くしゃみ・水のような鼻水・鼻づまり」の3つです。
お子さんでは、感染症(かぜなど)の症状と似ていることも多いですが、鼻の中の状態や症状の経過を見ることで、医師が診断することができます。「室内のダニ・カビなど」が原因の通年性アレルギー性鼻炎と、「花粉など」が原因の季節性アレルギー性鼻炎に分けられます。
アレルギー
皮膚炎
結膜炎
・喘息
「くしゃみ・鼻水・鼻づまり」と聞けば、まるでかぜぐすりのCMのようですね。この3つはよく知られた症状ですが、お子さんは自分から症状を伝えることが苦手なこともあります。そのため、以下のような形で受診されることも多くあります。
- 「鼻をよくかむ・鼻が詰まる」という訴え
- 口呼吸・いびきを主な理由に受診 → 実は鼻アレルギーだったというケースも多い
- 鼻をしょっちゅう指でいじる・鼻血が出る → 鼻づまりによる無意識の行動のことがあります
- 喘息・アレルギー性結膜炎・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎を合わせもつ場合も多い
- 副鼻腔炎(蓄膿症)や耳の症状など、周辺臓器への影響も一緒に確認します
- 睡眠の状態・学校での集中力・生活の質(QOL)も大切なポイントです
典型的な鼻アレルギーの場合、鼻の中(鼻腔内)の見た目だけで診断できることもあります。検査が必ずしも必要ではありません。
小児科外来でも、ライトを使って鼻の中を簡単に観察できます。アレルギー性鼻炎では次のような特徴が見られます:
「何が原因アレルゲンなのか」を調べる検査です。薬を使わずにアレルゲンを避けたり、アレルゲン免疫療法(舌下免疫療法など)を行う場合は必ず行います。
原因アレルゲンの目安(何を調べるか)
| 鼻炎のタイプ | 主な検査対象アレルゲン |
|---|---|
| 通年性(年中続く) | 室内塵ダニ・ペットの毛・カビ など |
| 季節性(季節に出る) | スギ・ヒノキ・カモガヤ・ブタクサ など(地域の飛散時期を参考にします) |
治療はただ薬を出すだけではなく、「どこまで症状を改善したいか」という目標を、お子さん・保護者の方・医師が一緒に話し合いながら決めます。
? アレルギー性鼻炎の治療目標(3つの目安)
| 目標 | どんな状態を目指すか | ポイント |
|---|---|---|
| ? | 症状がほぼない、または軽い 日常生活に支障がなく、薬もあまり必要としない状態 |
理想的なゴール |
| ? | 症状が安定している 急に悪化することがあっても頻度が低く、長引かない状態 |
現実的なゴール |
| ?️ | 症状の急激な悪化がない 誘発されにくい、または起きても軽度に抑えられている状態 |
最低限の目標 |
(アレルギー診療ガイドラインをもとにユアクリニックお茶の水が作成)
? 治療の選択肢(4つのアプローチ)
アレルゲンを取り除く・避ける(抗原除去・回避)
原因物質を生活環境から減らします。まず最初に取り組む基本です。
薬物療法(くすりで症状を抑える)
飲み薬・点鼻薬などで症状をコントロールします。
アレルゲン免疫療法(体をアレルゲンに慣らす)
舌下免疫療法など、長期間かけてアレルギーそのものを改善させる治療です。重症度によらず適応があります。
手術療法(薬が効きにくい場合)
薬で改善が見られない場合に耳鼻咽喉科と連携して検討します。
? Shared Decision Making(一緒に決める治療)とは
鼻アレルギーの治療で特に大切なのが「保護者・お子さん・医師が一緒に話し合って治療を決める」という考え方です。
- → お子さん本人が「症状に気づいている」ことが治療の第一歩
- → 保護者と医療者が一緒に方向性を考えます
- → お子さんの生活スタイル・学校・好みも治療選択に影響します
原因のアレルゲンを日常生活から取り除くことは、症状改善に効果的と考えられています。ただし、やりすぎて生活が不便になることは避けたいため、無理のない範囲で取り組むのが大切です。
? ダニ対策(通年性鼻炎の主な原因)
室内塵ダニは布団・カーペット・ぬいぐるみなどに多く生息します。以下の対策を複数組み合わせることが、単独の対策より効果的です。
- 布団に防ダニカバーを使う
- 掃除機がけを週2回以上行う
- カーペットをフローリングに変える
- 湿度を50%以下に保つ(エアコン・除湿器の活用)
? 花粉対策(季節性鼻炎)
飛散情報を事前にチェックし、飛散量が多い日の対策を強化します。
- 外出時はマスク・めがねを着用
- 帰宅したら洗顔・うがい・着替えをする
- 洗濯物の外干しを控える
- 窓の開放を必要最小限にする
? ペットアレルギー
原因ペットの飼育をやめることが第一選択ですが、現実的に難しいことも多いです。その場合は医師に相談しながら薬物療法と組み合わせて対応します。
小児のアレルギー性鼻炎に主に使われる薬は次の3種類です。
「抗ヒスタミン薬」は、アレルギー反応を引き起こす「ヒスタミン」という物質の働きをブロックする薬です。
昔の抗ヒスタミン薬は眠気・口の渇き・心臓への影響が出やすかったのですが、現在は「第2世代」と呼ばれる、眠気が少なく副作用が改善された薬が使われています。
鼻の中に直接スプレーするタイプのステロイド薬です。1〜2日で強い症状改善効果が期待でき、「症状が出たときだけ使う」方法と「毎日定期的に使う」方法の両方に使えます。
「ステロイドと聞いて怖い」と思う保護者の方もいますが、鼻にスプレーするタイプは体の中に吸収される量がとても少なく、全身への副作用リスクが低いものが好まれます。
お子さんには生物学的利用率が低い薬(緑色のグループ)が選ばれることが多いです。
「ロイコトリエン」というアレルギーを悪化させる物質の働きをブロックする薬です。特に鼻づまりの改善に効果があります。喘息にも使われることが多く、小児科医にとって使い慣れた薬です。
お子さんに使用する場合は、精神面・行動の変化を注意深く観察し、気になることがあればすぐに医師に連絡してください。「なんとなく飲み続ける」使い方には注意が必要です。
最初の治療(First line)の効果が不十分な場合、すぐに次の薬に切り替えるのではなく、以下のことをまず確認します。
- 薬の使い方(アドヒアランス)は正しいか? 鼻スプレーは方向・角度が重要です
- 診断は正しいか? 合併症(副鼻腔炎・中耳炎など)は見落とされていないか?
- 原因アレルゲンの見直し:別のアレルゲンが隠れていないか?
- 重症度の再評価:実は症状が重くなっていないか?
12歳以上で、通常の治療で十分な効果が得られない重症・最重症の季節性アレルギー性鼻炎に対して、抗IgE抗体製剤(オマリズマブ)が使用できます。
ただし、この薬を使うには施設の基準を満たす必要があり、専門医への紹介が必要になります。当院でご相談いただければ、適切な専門機関へご紹介いたします。
手術でアレルギー性鼻炎を完全に治すことはできませんが、症状を大きく抑える効果があります。
薬でうまくコントロールできない場合に検討されますが、以下の点を考慮して行われます:
- 侵襲性(体への負担)
- 再発の可能性
- お子さんの発達・成長段階
? 舌下免疫療法について(アレルギーを根本から変える治療)
スギ花粉症・ダニによるアレルギー性鼻炎には舌下免疫療法という選択肢があります。お子さんにも広がりを見せており、近年新たな治療の選択肢として定着してきています。
- アレルギーの根本的な改善が期待できる
- 重症度に関わらず適応がある
- 将来の喘息発症を抑える可能性がある
- 自宅で毎日舌の下に置くだけ
- 治療期間が長い(3〜5年)
- 毎日継続する必要がある
- 効果が出るまでに数か月かかる
- アレルゲン検査が必須(事前に原因を特定)
? まとめ:鼻アレルギーとうまく付き合うために
| ステップ | やること | 大切な視点 |
|---|---|---|
| ① 診断 | 問診・鼻の中の観察・必要に応じて検査 | お子さん自身の訴えもよく聞く |
| ② 環境整備 | ダニ・花粉・ペットなどの回避 | 複数の方法を組み合わせると効果的 |
| ③ 薬物療法 | 抗ヒスタミン薬・点鼻ステロイド・ロイコトリエン拮抗薬 | 正しい使い方が最重要 |
| ④ 免疫療法 | 舌下免疫療法(根本的な改善) | 長期治療だが効果が期待できる |
| ⑤ 専門医連携 | 重症例・手術が必要な場合は耳鼻科へ | 当院からご紹介します |
? 参考文献
- 日本耳鼻咽喉科免疫アレルギー感染症学会 鼻アレルギー診療ガイドライン作成委員会 編. 鼻アレルギー診療ガイドライン—通年性鼻炎と花粉症—. 2024年版(改訂第10版). 金原出版; 2024.
- Nurmatov U, van Schayck CP, Hurwitz B, et al. House dust mite avoidance measures for perennial allergic rhinitis: an updated Cochrane systematic review. Allergy. 2012; 67: 158-65.
- Nakamura T, Hiraoka K, Harada R, et al. Brain histamine H1 receptor occupancy after oral administration of desloratadine and loratadine. Pharmacol Res Perspect. 2019; 7: e00499.
- Roberts G, Xatzipsalti M, Borrego LM, et al. Paediatric rhinitis: position paper of the European Academy of Allergy and Clinical Immunology. Allergy. 2013; 68: 1102-16.
- 岡本美孝, 大田 健, 鈴木真穂, 他. アレルギー性鼻炎における次世代 ARIA ケアパス. アレルギー. 2020; 69: 689-700.
※ 本ページはユアクリニックお茶の水が上記文献をもとに独自に作成・編集した患者向け解説です。医学的判断は必ず医師にご相談ください。
〈執筆者情報〉
小児科 杉原 桂 院長
武蔵高校卒。昭和大学医学部卒。昭和大学病院小児科医局に入局し、千葉こども病院新生児未熟児科や町田市民病院にて勤務のほか、石垣島での医療に携わる。多摩ガーデンクリニックで院長を務めた後、2015年にユアクリニックお茶の水を開設。2018年より医療法人社団縁風会として法人化し、理事長に就任。2019年には増設したユアクリニック秋葉原で院長を務め、2025年のクリニック移転に伴い、再びユアクリニックお茶の水の院長となる。診断・治療という手段を通じて、本来の目的である患者の幸せ実現を信念とし、日々実践。医療系大学で教鞭を執り、「聴く力・伝える力」を備えた次世代の育成に尽力している。
医学博士、日本小児科学会認定 小児科専門医、
所属学会 日本小児科学会 、日本アレルギー学会 、日本医学教育学会 、日本医療マネジメント学会
