保育所の感染症対策ガイドライン
保育所の感染症対策ガイドライン
国が定めた「保育所における感染症対策ガイドライン」の内容を、保護者のみなさんがわかりやすいように中学生レベルの言葉でまとめました。章の構成はガイドラインに合わせています。お子さんの体調管理やお迎えの判断にお役立てください。
? もくじ
1.感染症に関する基本的なこと
(1)感染症はなぜ広まるのか?──三大要因
風邪やインフルエンザなどの「感染症」が起きるためには、次の3つの条件がすべてそろう必要があります。この3つを感染症の「三大要因」といいます。
ウイルスや細菌などの病原体(びょうげんたい)を外に出している人や場所のことです。症状がある人だけでなく、症状のない人(不顕性感染者)も感染源になることがあります。
病原体が別の人の体に伝わる道筋のことです。くしゃみ・咳・手指・食べ物などがあります。この道筋を断つことが予防の基本です。
病原体が入ってきたときに免疫(防御力)が弱い人のことです。ワクチンで免疫をつくることで、かかりにくくなります。
「感染」と「発症」のちがい
ウイルスが体の中に入ることを「感染」といいます。感染しても症状が出ない人もいます(不顕性感染)。症状が出た状態が「発症(感染症)」です。病原体が体に入ってから症状が出るまでの時間を「潜伏期間(せんぷくきかん)」といいます。
(2)保育所では特に気をつけなければいけない理由
赤ちゃん・幼児の生活上の特徴
- お昼寝・食事・遊びで子ども同士が近い距離で長時間過ごすため、飛沫感染・接触感染が起きやすい
- 赤ちゃんはなんでも舐めるため、手や遊具についたウイルスが口に入りやすい
- 自分でマスクをしたり、きちんと手洗いしたりすることが難しいので、大人のサポートが必要
赤ちゃんの体の特徴
| 特徴 | なぜそうなるの? | 気をつけること |
|---|---|---|
| 感染症にかかりやすい | 生後数ヶ月でお母さんからもらった免疫(移行抗体)が減り始める | 予防接種をスケジュール通りに受けることが大切 |
| 呼吸が苦しくなりやすい | 大人より鼻や気道が細いため、少し腫れただけで息苦しくなる | 鼻水・咳が続くときは早めに受診 |
| 脱水になりやすい | 体の水分量が多く必要だが、嘔吐・下痢で失いやすい | 水分補給をこまめに。ぐったりしているときはすぐ受診 |
(3)学校・保育所での感染症の決まり(学校保健安全法)
保育所も学校も、「学校保健安全法」という法律に基づいて感染症対策をしています。感染症は「第一種・第二種・第三種」に分けられており、種類によって登園(登校)を休む日数が決められています。
| 種類 | 主な感染症(保育所で関係するもの) | 登園のめやす |
|---|---|---|
| 第一種 | エボラ出血熱・ペスト・ジフテリアなど重大な感染症 | 治るまで |
| 第二種 | インフルエンザ・麻しん・水痘・風しん・百日咳・おたふくかぜ・新型コロナ・咽頭結膜熱など | 病気ごとに決められた日数が経過するまで |
| 第三種 | 腸管出血性大腸菌感染症・流行性角結膜炎・急性出血性結膜炎など | 医師が感染のおそれがないと判断するまで |
主な感染症の出席停止期間まとめ
| 感染症名 | 登園できる基準(乳幼児の場合) |
|---|---|
| インフルエンザ | 発症後5日が経ち、かつ解熱後3日が経過していること |
| 百日咳 | 特有の咳が消えるまで、または5日間の適切な抗菌薬治療が終わるまで |
| 麻しん(はしか) | 解熱後3日が経過していること |
| おたふくかぜ | 耳下腺などの腫れが出てから5日経ち、全身状態が良好なこと |
| 風しん | 発しんが消えていること |
| 水痘(水ぼうそう) | すべての発しんがかさぶたになっていること |
| 咽頭結膜熱(プール熱) | 主な症状が消えてから2日が経過していること |
| 新型コロナウイルス | 発症後5日が経ち、かつ症状が軽快してから1日が経過していること |
2.感染症の予防
(1)感染予防の方法
ア)感染源への対策
感染症にかかって症状が出ている子どもは、大量のウイルス・細菌を周りにまき散らしています。症状が十分に良くなるまで、保育所をお休みしてもらうことが大切です。
イ)感染経路ごとの対策
保育所で特に注意が必要な感染経路は以下の6つです。それぞれ対策が異なります。
① 飛沫感染の予防:咳エチケット
飛沫感染を防ぐ基本は「咳エチケット」です。保育所では保護者の方もご協力をお願いします。
② 空気感染の予防
麻しん・水痘・結核が空気感染します。感染力がとても強く、同じ部屋にいるだけでうつる可能性があります。最も確実な予防法はワクチン接種です。部屋の換気も大切です。
③ 接触感染の予防:正しい手洗い
接触感染を防ぐ最大の方法は「手洗い」です。石けんを使って、流水で30秒以上かけて洗いましょう。
④ 経口感染の予防
- 食材は十分に加熱する(中心温度75℃・1分以上)
- 生肉を扱った調理器具で、生食の食品を調理しない
- 調理前・食事前の手洗いを徹底する
- 食器・コップは共用しない
⑤ 血液媒介感染の予防(標準予防策)
血液にはB型肝炎ウイルスなどが含まれていることがあります。保育所では、血液や体液(尿・便・嘔吐物など)はすべて使い捨て手袋をして扱います。お子さんのけがの処置をするときも、直接素手で触れないよう注意してください。
⑥ 蚊媒介感染の予防
- 水たまりをなくす(植木鉢の受け皿・古タイヤなどに水をためない)
- 草むらや木陰では長袖・長ズボンを着用する
- 日本脳炎ワクチンを接種する
エアロゾルとは、口や鼻から出る水分を含んだとても小さな粒子のことです。1メートルを超えて空気中に漂うことがあり、換気が不十分な密閉空間では感染リスクが高まります。こまめな換気(1時間に2回、数分間窓を全開にするなど)が大切です。
ウ)感受性対策(ワクチン接種)
感染症を予防する最も強力な方法のひとつがワクチン(予防接種)です。ワクチンを打つことで体に免疫ができ、病気にかかりにくくなったり、かかっても重くなりにくくなったりします。
保育所の子どもに特に重要なワクチン
| ワクチン名 | 種類 | 接種の目安 | 予防する病気 |
|---|---|---|---|
| ロタウイルスワクチン | 定期 | 生後2ヶ月〜(初回は生後14週6日まで) | ロタウイルス胃腸炎 |
| Hibワクチン | 定期 | 生後2ヶ月〜 | Hib感染症・髄膜炎 |
| 小児用肺炎球菌ワクチン | 定期 | 生後2ヶ月〜 | 肺炎球菌感染症 |
| B型肝炎ワクチン | 定期 | 生後2ヶ月〜 | B型肝炎 |
| DPT-IPV(4種混合) | 定期 | 生後3ヶ月〜 | ジフテリア・百日咳・破傷風・ポリオ |
| BCGワクチン | 定期 | 生後5〜8ヶ月 | 結核 |
| MR(麻しん・風しん混合) | 定期 | 1歳になったらすぐ(第1期)/就学前1年間(第2期) | 麻しん・風しん |
| 水痘ワクチン | 定期 | 1歳〜(2回接種) | 水痘(水ぼうそう) |
| 日本脳炎ワクチン | 定期 | 標準は3歳から(生後6ヶ月以降可) | 日本脳炎 |
| おたふくかぜワクチン | 任意 | 1歳以上(2回接種推奨) | 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ) |
| インフルエンザワクチン | 任意 | 毎年秋(13歳未満は2回接種推奨) | インフルエンザ |
エ)健康教育
感染症を防ぐためには、子ども自身が健康に関心を持ち、手洗い・うがい・歯磨き・規則正しい生活習慣を身につけることが大切です。家庭でも毎日の習慣として取り組んでください。
(2)衛生管理
ア)保育所内外の衛生管理
保育所では、感染症が広まらないよう、いろいろな場所を清潔に保っています。主な取り組みを確認しましょう。
? 保育室の管理
- ドアノブ・手すり・照明スイッチは水拭き後、アルコール消毒
- 嘔吐物や排泄物が付いた場所は塩素系消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)で消毒
- 室温の目安:夏 26〜28℃、冬 20〜23℃、湿度 60%
- 季節を問わず換気を行う(エアコンには換気機能がないことに注意)
? おもちゃの管理
- 口に入れるおもちゃは、使うたびにお湯で洗い流して乾燥させる
- 午前・午後でおもちゃを交換する
- 定期的に水洗いや水拭きを行う
?️ 食事・おやつの衛生
- テーブルは清潔な台布巾で拭く
- スプーン・コップなど食器の共用はしない
- 乳児用粉ミルクは70℃以上のお湯で調乳する(サルモネラ対策)
- 調乳後2時間以内に使用しなかったミルクは捨てる
? おむつ交換の手順
- 使い捨て手袋を着用してから交換する
- 下痢のときはおむつ交換シートを敷く
- 交換後はビニール袋に密閉して蓋つき容器に保管
- 交換後は必ず石けんで流水手洗いをする
? プールの管理
- 遊離残留塩素濃度を0.4〜1.0 mg/Lに保つ(毎時間検査)
- ビニールプールも塩素消毒が必要
- おむつが外れていない乳幼児は個別タライでのプール遊び
- プール前後にシャワーを使う
? 砂場・園庭の管理
- 砂場は猫の糞便由来の寄生虫に汚染されていることがある→遊んだ後は必ず手洗い
- 猫が入らない構造にし、夜間はシートで覆う
- 動物の糞は速やかに除去する
- 定期的に砂を掘り起こして日光消毒する
イ)保育士・職員の衛生管理
- 清潔な服装・頭髪を保つ/爪は短く切る
- 保育中・前後の手洗いを徹底する
- 呼吸器症状があるときはマスクを着用する
- 発熱・咳・下痢・嘔吐があるときは医療機関を受診する
- 下痢・嘔吐・化膿創がある職員は食物を直接扱わない
3.感染症が疑われるとき・発生したときの対応
(1)感染症が疑われる子どもへの対応
子どもの病気を早く見つけて素早く対応することが、周りへの感染拡大を防ぐ上でとても大切です。
体調を確認
別室へ移動
保育所に報告
(2)感染症が発生したときの保育所の対応
- 嘱託医(保育所と契約している医師)に相談し、保護者に感染症の発生を知らせる
- 法律で定められた場合は、保健所・市区町村に報告する
- 感染拡大防止のため、手洗い・嘔吐物や排泄物の処理を徹底する
- 施設内の消毒を適切に行う
- 施設長の責任のもと、発症状況を記録する(子どもだけでなく職員の健康状態も)
① 同じ感染症で重篤な患者や死亡者が1週間以内に2名以上発生した場合
② 同じ感染症の患者が10名以上または利用者の半数以上発生した場合
※ 麻しん・風しんは1名でも発生した場合は報告が必要
(3)回復した子どもが保育所に戻るときの対応
お子さんが回復して保育所に戻る際には、医師の判断(意見書または保護者の登園届)に基づいて、保育所への感染拡大がないことを確認してから登園を再開することが大切です。
登園再開の2つの基準
保育所での集団生活に問題なく適応できる体調まで回復していること
保育所内での集団発生・流行につながらない状態であること
4.感染症対策の実施体制
(1)記録の重要性
保育所では、子どもの体調の変化を毎日きちんと記録しています。記録することで、感染症の発生を早く発見し、素早い対応ができます。保護者の方も、家庭でのお子さんの様子(発熱・下痢・嘔吐など)を登園時に職員に伝えてください。
(2)医療関係者の役割
ア)嘱託医(しょくたくい)とは
保育所には法律により嘱託医(その保育所の医療的な相談役となる医師)を置くことが義務づけられています。嘱託医は年2回以上の健康診断を行うだけでなく、感染症対策の指導・助言を行います。
イ)看護師の役割
保育所に看護師が配置されている場合、健康管理・保護者への連絡・保健指導・救急対応などを行います。感染症発生時の情報提供や登園のめやすの説明なども担います。
(3)関係機関との連携
(4)情報の共有と活用
国立感染症研究所が「感染症発生動向調査」として全国の感染症情報を週報・月報で公開しています。保育所も地域の感染症情報を常に確認し、保護者に共有します。
(5)子どもの健康支援の充実
乳幼児期に健康な生活習慣の土台をつくることが、生涯の健康につながります。保育所は職員全体で専門知識を高め、家庭と連携しながら子どもの健康を守ります。保護者の方からも、日頃の家庭での様子を気軽にお知らせください。
【別添1】特に注意が必要な感染症 一覧
グループ1:医師の「意見書」が必要な感染症
これらの感染症は、登園を再開するときに医師が記入した意見書が必要です。
? 麻しん(はしか)空気・飛沫・接触感染
| 症状 | 高熱・咳・鼻水・目やに → 口の中に白いぶつぶつ(コプリック斑)→ 全身に赤い発しんが出る。肺炎・脳炎を合併することがある。 |
|---|---|
| 感染力 | 非常に強い。免疫がない人はほぼ100%感染する。 |
| 予防 | MRワクチン2回接種が最も効果的。接触後72時間以内のワクチン接種で発症を予防できる可能性がある。 |
? インフルエンザ飛沫・接触感染
| 症状 | 突然の高熱(38〜40℃)が3〜4日続く。倦怠感・関節痛・筋肉痛・のどの痛み・鼻水・咳など。気管支炎・肺炎・脳症を合併することがある。 |
|---|---|
| 予防 | ワクチン接種(13歳未満は4週間間隔で2回接種が効果的)。流行期の手洗い・咳エチケットの徹底。 |
? 新型コロナウイルス感染症飛沫・エアロゾル・接触感染
| 症状 | 発熱・呼吸器症状・倦怠感・鼻水・味覚・嗅覚異常など。無症状のこともある。子どもは多くが軽症だが、熱性けいれん・クループなどの合併症が出ることもある。 |
|---|---|
| 予防 | 手洗い・換気が有効。2歳未満はマスク不要。2歳以上も着用は求めていない。 |
? 風しん飛沫・接触感染
| 症状 | 顔から全身に広がる赤い発しん(約3日で消える)・発熱・リンパ節の腫れ。感染しても症状が出ない人が30%程度いる。 |
|---|---|
| 重要な注意 | 妊娠初期の母親が感染すると、赤ちゃんに「先天性風しん症候群」(白内障・難聴・心疾患など)が起きる危険がある。妊婦がいる保護者は特に注意を。 |
? 水痘(水ぼうそう)飛沫・空気・接触感染
| 症状 | 顔・頭から全身に赤い斑点→水ぶくれ→かさぶたへ変化する。各段階が混在するのが特徴。脳炎・肺炎を合併することがある。 |
|---|---|
| 感染力 | 非常に強い。免疫がない人はほぼ100%感染する。 |
| 予防 | 水痘ワクチン2回接種が最も効果的。接触後72時間以内のワクチン接種で発症を予防できる可能性がある。 |
? 流行性耳下腺炎(おたふくかぜ・ムンプス)飛沫・接触感染
| 症状 | 発熱と耳の下(耳下腺)・あごの下(顎下腺)の腫れと痛みが特徴。片側が腫れた後、数日で反対側も腫れることが多い。無菌性髄膜炎・難聴などの合併症に注意。 |
|---|
? 結核空気感染
| 症状 | 慢性的な発熱(微熱)・咳・倦怠感・食欲不振など。重症化すると呼吸困難・脳炎を合併することがある。 |
|---|---|
| 現状 | 「昔の病気」と思われがちだが、日本でも毎年約1.8万人の患者が発生している。 |
? 咽頭結膜熱(プール熱)飛沫・接触感染
| 症状 | 高熱・扁桃炎(のどの腫れ)・結膜炎(目の充血・目やに)が主症状。夏に多く、プール後に広がりやすい。 |
|---|---|
| 注意 | タオルの共用は絶対にしない。感染力が強い。 |
? 流行性角結膜炎飛沫・接触感染
| 症状 | 目の充血・目やに・目の痛み・結膜下出血など。片目から始まり、もう一方にも感染することがある。 |
|---|
? 百日咳飛沫・接触感染
| 症状 | 「コンコン」と咳き込んだ後「ヒュー」という音をたてて息を吸う特有の咳が長く続く。夜も眠れないほどの咳が出ることも。生後3ヶ月未満の赤ちゃんは呼吸ができなくなる発作が起きやすく、とても危険。 |
|---|
? 腸管出血性大腸菌感染症(O157・O26・O111など)経口・接触感染
| 症状 | 水様下痢・腹痛・血便。溶血性尿毒症症候群(HUS)に進展すると意識障害など重症化する。 |
|---|---|
| 原因 | 加熱が不十分な肉・汚染された食品。毎年保育所でも集団発生が報告されている。 |
| 注意 | 発生した場合は速やかに保健所に届出が必要。 |
? 侵襲性髄膜炎菌感染症(髄膜炎菌性髄膜炎)飛沫・接触感染
| 症状 | 発熱・頭痛・嘔吐が急速に進む。致命率10%、回復しても難聴・まひなど後遺症が残ることがある。 |
|---|
グループ2:医師の診断を受け「登園届」が必要な感染症
これらは保護者が記入する「登園届」での対応が基本です。
? 溶連菌感染症飛沫・接触感染
| 症状 | のどの腫れ・痛み・高熱。「いちご舌」(舌が苺状に赤く腫れる)や全身の赤い発しんが出ることも。治療が不十分だとリウマチ熱・腎炎の合併症が起きることがある。 |
|---|---|
| 治療 | 抗菌薬での治療が有効。症状が治まっても決められた期間、飲み続けることが大切。 |
? マイコプラズマ肺炎飛沫感染
| 症状 | 咳・発熱・頭痛などの風邪症状がゆっくり進む。咳が数週間続くことがある。肺炎を引き起こす。 |
|---|
? 手足口病飛沫・接触・経口感染
| 症状 | 口の中・手・足の末端に水ぶくれが出る。発熱とのどの痛みも伴う。ほとんどが3〜7日で自然に治る。稀に無菌性髄膜炎・脳炎を合併することがある。 |
|---|---|
| 注意 | 回復後も便から数週〜数ヶ月間ウイルスが排出される。おむつ交換後の手洗いを徹底。 |
? 伝染性紅斑(りんご病)飛沫感染
| 症状 | 両頬がリンゴのように赤くなる(蝶翼状)。その後、腕や太ももにレース状の発しんが出る。発しんが出る前の時期に感染力が最も強い。 |
|---|---|
| 重要 | 妊婦への感染で流産・死産のリスクがある。保育所で発生した場合は妊婦の保護者・職員に速やかに知らせること。 |
? ウイルス性胃腸炎(ノロウイルス)経口・飛沫・接触感染
| 症状 | 嘔吐と下痢が主症状。脱水を合併することがある。多くは1〜3日で治る。 |
|---|---|
| 感染力 | 非常に強い。100個以下のウイルスでも感染する。嘔吐物・便1gに100万〜10億個のウイルスが含まれる。 |
| 注意 | 乾燥した嘔吐物からも空気感染することがある。嘔吐物の処理は速やかに・適切に(塩素系消毒薬)。 |
? ウイルス性胃腸炎(ロタウイルス)経口・接触・飛沫感染
| 症状 | 嘔吐と下痢(白色便が特徴)。脱水・けいれんで入院が必要になることも。5歳までにほぼ全員が感染する。 |
|---|
? ヘルパンギーナ飛沫・接触・経口感染
| 症状 | 高熱とのどの奥の水ぶくれ・潰瘍が特徴。夏に多い。2〜4日で自然に解熱することが多い。 |
|---|
? RSウイルス感染症飛沫・接触感染
| 症状 | 呼吸器感染症。生後6ヶ月未満の赤ちゃんは重症化しやすく入院が必要になることも。大人は軽い鼻炎程度で済むことが多い。 |
|---|---|
| 注意 | 症状が軽い年長児や大人が感染源になり赤ちゃんにうつすことがある。流行期は0歳児クラスと年長クラスを分ける。 |
? 帯状疱しん接触感染(水痘未経験者)
| 症状 | 体の片側に水ぶくれが集まり、神経に沿った帯状の発しんが出る。子どもは痛みが軽いことが多い。1週間でかさぶたになり治癒する。 |
|---|---|
| 注意 | 水痘ワクチン未接種・未経験の人は水痘にかかる可能性がある。妊婦は近づかないこと。 |
? 突発性発しん唾液等による感染
| 症状 | 生後6ヶ月〜2歳に多い。3日間の高熱が続き、解熱と同時に赤い発しんが全身に出る。比較的軽症で自然に治る。熱性けいれん・脳炎を合併することがある。 |
|---|
グループ3:その他、保育所で特に対応が必要な感染症
? アタマジラミ症頭への直接接触
| 症状 | 頭髪の根元近くに卵(乳白色・固く付着)または成虫がいる。3〜4週後に頭皮のかゆみが出てくる。 |
|---|---|
| 感染 | 頭と頭が触れることや、帽子・クシ・タオルの共用で広まる。 |
| 治療 | 市販のフェノトリンシャンプーで治療。目の細かいクシで卵を取り除く。頭を短くする必要はない。 |
? 疥癬(かいせん)直接接触感染
| 症状 | 強いかゆみ(特に夜間)と丘しん・水ぶくれ。手足に線状の盛り上がり(疥癬トンネル)が見られることがある。 |
|---|---|
| 治療 | 皮膚科を受診。外用薬・内服薬で治療。治療開始後はプールに入ってもよい。 |
? 伝染性軟属腫(水いぼ)皮膚の直接接触感染
| 症状 | 1〜5mmの光沢のある丸い盛り上がり(水ぶくれに見える)が数個〜数十個。かゆみがあることも。数ヶ月で自然に治ることがある。 |
|---|---|
| 注意 | プールの水では感染しないが、タオル・浮き輪などの共用で感染することがある。患部を衣類などで覆うことで感染予防になる。 |
? 伝染性膿痂しん(とびひ)接触感染
| 症状 | 鼻周囲・体・腕などに水ぶくれ・びらん・かさぶたが出る。かいてつぶすことで広がる(「とびひ」の名の由来)。 |
|---|---|
| 治療 | 皮膚を清潔に保つ(1日1回以上シャワー)。爪を短く切る。患部が広がれば抗菌薬が必要。 |
| 注意 | 患部をガーゼなどで覆えば通園可能。プールは治癒するまで控える。 |
? B型肝炎血液媒介感染
| 症状 | ウイルスが肝臓に感染して炎症を起こす。0歳児が感染するとキャリアになりやすい(約9割)。 |
|---|---|
| 感染 | 血液・体液を介して感染。日常の保育での感染リスクは低いが、血液の扱いに注意が必要。 |
【別添2】消毒の種類と方法
保育所では、感染症の種類や場所によって適切な消毒薬を使い分けることが重要です。
| 消毒薬の種類 | 主な用途・使える場面 | 使えない場面・注意点 |
|---|---|---|
| 消毒用エタノール (アルコール) |
ドアノブ・手すり・スイッチ・机などの表面消毒、手指消毒 | ノロウイルスには効果が低い。火気に注意。 |
| 次亜塩素酸ナトリウム (塩素系消毒薬) |
嘔吐物・便・血液が付いた場所・おむつ交換場所・トイレ・食器(希釈して使用) | 金属を腐食させる。皮膚や目への刺激が強い。換気しながら使う。酸性の洗剤と混ぜると有毒ガスが発生するので注意。 |
| 亜塩素酸水 | 物品・環境の消毒 | 濃度と使用条件を守ること |
| 塩化ベンザルコニウム (逆性石けん) |
手指消毒・器具の消毒 | ノロウイルスには効果が低い |
消毒の濃度の目安(次亜塩素酸ナトリウムの場合)
| 使用場面 | 濃度の目安 | 作り方の例(市販品6%の場合) |
|---|---|---|
| 嘔吐物・便の処理後の床・環境消毒 | 0.1%(1000ppm) | 水1リットルに対し6%製品を約17mL(大さじ1杯強) |
| 一般的な環境・物品の消毒、食器消毒 | 0.02%(200ppm) | 水1リットルに対し6%製品を約3〜4mL(小さじ1杯弱) |
①使い捨て手袋・マスク・エプロンを着用する
②新聞紙やペーパータオルで嘔吐物を外側から内側へ静かに取り除く
③0.1%塩素系消毒薬(次亜塩素酸ナトリウム)をかけて10分以上おく
④拭き取り後ビニール袋に密封して廃棄する
⑤手袋を外した後も石けんで手洗いを徹底する
主な場所ごとの消毒のポイント
| 場所・もの | 方法 | タイミング |
|---|---|---|
| ドアノブ・スイッチ・手すり | 水拭き後、アルコール消毒 ※ノロウイルス流行時は塩素系消毒薬 |
毎日 |
| トイレ(便器・床・ドアノブなど) | 清掃後、塩素系消毒薬 | 毎日 |
| 乳児のおもちゃ(口に触れるもの) | お湯で洗い流して乾燥 | 使うたびに |
| おむつ交換台 | 毎回塩素系消毒薬で拭く | 毎回 |
| 調乳器具(哺乳瓶など) | 煮沸消毒または電子レンジ消毒後、清潔に保管 | 毎回 |
| 嘔吐物・便が付いた場所 | まず除去し、0.1%塩素系消毒薬 | 発生のたびに |
【別添3】子どもの病気 ─ 症状別の対応
お子さんが保育所で急に具合が悪くなったとき、保育士はどのように対応するかを説明します。保護者の方も参考にしてください。
① 発熱
発熱時の対応の流れ
| 体温 | 状態 | 対応 |
|---|---|---|
| 37.5℃〜 | 機嫌がよく、食欲もある | しばらく様子を見る。水分補給。保護者に連絡し状況を伝える。 |
| 38℃〜 | ぐったりしている・食欲がない | 保護者に連絡し、お迎えを依頼。嘱託医・看護師に相談。 |
| 38℃〜 | 機嫌がよい(熱の割に元気) | 経過観察しながら保護者と相談。 |
水分補給が最重要。汗で濡れた衣類は着替えさせる。室温・湿度を調整する(冷やしすぎない)。
② 発しん(皮膚の変化)
発しんが出たときの確認ポイント
- 発しんの形:点状・水ぶくれ・かさぶた・赤い斑点など
- 出ている場所:顔だけ・全身・手足など
- かゆみや痛みがあるか
- 発熱を伴っているか
- いつから出始めたか
発しんを確認したら、嘱託医・看護師に相談し、保護者に連絡する。感染症の可能性があるため、別室で保育することが基本。
③ 下痢
下痢の対応ポイント
- 水分補給が最優先。少量ずつこまめに与える(経口補水液が最適)。
- おむつ交換は必ず手袋をして行い、交換後は石けんで手洗い。
- 下痢便が付いた場所は塩素系消毒薬で消毒する。
- 排泄物が付いた衣類はビニール袋に入れて持ち帰ってもらう。
- 食欲があれば無理に制限しない。うどんやお粥など消化の良いものを。
④ 嘔吐(おう吐)
嘔吐の対応ポイント
- 吐いた後は横向きに寝かせて、吐いたものを飲み込まないようにする。
- 30分程度は水分を与えない(胃を休ませる)。その後、少量ずつ水分補給。
- 嘔吐物の処理は感染対策上非常に重要。手袋・マスク着用で行い、0.1%塩素系消毒薬で消毒。
- 乾燥した嘔吐物からウイルスが空気中に舞い上がることがある。早めに処理する。
⑤ 咳・鼻水
咳・鼻水の対応ポイント
- 咳エチケット(マスク・ティッシュで口を覆う)を促す。
- 鼻水は素早くティッシュで拭き取り、すぐ捨てる。
- 呼吸が苦しそう・ゼーゼー言っているときはすぐに保護者に連絡し、医療機関受診を勧める。
- 赤ちゃん(特に3ヶ月未満)の咳・鼻水は早めに受診。
⑥ けいれん(ひきつけ)
① 子どもを安全な場所に横向きに寝かせる(嘔吐物で詰まらないように)
② 口の中に物を入れない(舌を噛む心配は少ない)
③ けいれんの始まった時刻・続いた時間・体の動き方を記録する
④ 5分以上続く・止まってまたすぐ始まる・意識が戻らない場合は救急車を呼ぶ
⑤ 保護者に連絡し、病院受診を勧める
⑦ 目のトラブル(充血・目やに)
目のトラブル対応ポイント
- 充血・目やにがひどい場合は感染性結膜炎の可能性あり。タオルの共用を絶対に避ける。
- 手を目に触れないよう促す。触れた後は必ず手洗い。
- 保護者に連絡し、眼科または小児科の受診を勧める。
【別添4】登園届・意見書について
感染症にかかったお子さんが保育所に戻るとき、感染症の種類によって必要な書類が異なります。
| 書類の種類 | 記入者 | どんな感染症で必要? |
|---|---|---|
| 意見書 | 医師(かかりつけ医) | 麻しん・インフルエンザ・新型コロナ・風しん・水痘・おたふくかぜ・結核・咽頭結膜熱・流行性角結膜炎・百日咳・腸管出血性大腸菌感染症・急性出血性結膜炎・侵襲性髄膜炎菌感染症 |
| 登園届 | 保護者 | 溶連菌感染症・マイコプラズマ肺炎・手足口病・りんご病・ノロ・ロタウイルス胃腸炎・ヘルパンギーナ・RSウイルス感染症・帯状疱しん・突発性発しん |
登園を再開するときの基本的な流れ
感染症と診断
自宅で療養
受診(必要に応じて)
登園届を取得
登園再開
感染症予防の基本 5か条
30秒以上・6ステップ
マスク・ティッシュで覆う
スケジュール通りに
1時間に2回程度
お休み
こども家庭庁「保育所における感染症対策ガイドライン(2018年改訂版・2023年10月一部修正)」
本ページは上記ガイドラインの内容を保護者向けにわかりやすくリライトしたものです。医療上の判断は必ずかかりつけ医にご相談ください。
最終更新:2025年(ガイドライン2023年10月修正版を元に作成)
〈執筆者情報〉
小児科 杉原 桂 院長
武蔵高校卒。昭和大学医学部卒。昭和大学病院小児科医局に入局し、千葉こども病院新生児未熟児科や町田市民病院にて勤務のほか、石垣島での医療に携わる。多摩ガーデンクリニックで院長を務めた後、2015年にユアクリニックお茶の水を開設。2018年より医療法人社団縁風会として法人化し、理事長に就任。2019年には増設したユアクリニック秋葉原で院長を務め、2025年のクリニック移転に伴い、再びユアクリニックお茶の水の院長となる。診断・治療という手段を通じて、本来の目的である患者の幸せ実現を信念とし、日々実践。医療系大学で教鞭を執り、「聴く力・伝える力」を備えた次世代の育成に尽力している。
医学博士、日本小児科学会認定 小児科専門医、
所属学会 日本小児科学会 、日本アレルギー学会 、日本医学教育学会 、日本医療マネジメント学会
