フルミスト点鼻液接種後の水平伝播について
お子さんのインフルエンザ予防接種で選択肢の一つとなる「フルミスト点鼻液」について、保護者の皆さんが気になるかもしれない「水平伝播」という現象について詳しくお話ししたいと思います。
水平伝播とは?
まず、「水平伝播」という言葉、あまり聞きなれないかもしれませんね。これは、ワクチンを接種したお子さんの体内にあるウイルスが、飛沫(ひまつ)や接触によって、周りのまだワクチンを接種していない方へうつってしまう可能性のことを言います。フルミスト点鼻液は、弱毒生インフルエンザワクチンといって、病原性を弱めた生きたウイルスを使うワクチンですので、ごくまれにですが、このような水平伝播の可能性が指摘されています。
フルミスト点鼻液接種後の注意点
フルミスト点鼻液を接種した後、1~2週間は、ごくまれにですが、ワクチンウイルスが鼻咽頭分泌物(鼻水など)から排出される可能性があります 1。そのため、特に「重度の免疫不全者」との密接な接触は、可能な限り避けるようお願いしています 。
「重度の免疫不全者」とは、例えば、骨髄移植を受けたばかりの方や、免疫抑制剤を服用している方など、病気や治療によって体の免疫機能が著しく低下している方を指します 。このような方々は、たとえ弱毒化したウイルスであっても、感染してしまうと重症化するリスクがあるため、注意が必要です。
各国の見解と日本の推奨
国内外の専門機関も、フルミスト点鼻液の水平伝播について見解を示しています。
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日本小児科学会:2歳から19歳未満のお子さんに対して、不活化インフルエンザHAワクチンと経鼻弱毒生インフルエンザワクチンのどちらも推奨していますが、授乳中のお母さんや、ご家族の中に免疫不全の方がいる場合には、不活化インフルエンザHAワクチンの使用を推奨しています 。
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米国疾病予防管理センター(CDC):重度の免疫抑制者と濃厚接触する方(ご家庭内で一緒に生活している方など)は、フルミスト点鼻液の接種を避けるべきだとしています 。もし接種する場合は、接種後7日間は、重度の免疫抑制者との接触や介護を避けるよう推奨しています 。
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英国健康安全保障庁(UKHSA):フルミスト点鼻液が広く使用されている英国では、これまでに意図せずワクチンウイルスに曝露された免疫抑制者で、病気になったという報告はないとのことです。しかし、重度の免疫抑制者との濃厚接触が避けられない場合は、不活化ワクチンの使用を検討すべきだとしています 88。
これらの情報から、排出されたワクチンウイルスが、まれにワクチン未接種の方に伝播することがあっても、それが原因で重篤な病気を発症したという報告は、現時点ではないとされています
お子さんをインフルエンザから守るために
当院では、インフルエンザの予防において、何よりもまず「予防」が大切だと考えています。ワクチン接種は、お子さん自身をインフルエンザから守るだけでなく、周りの大切な人々への感染拡大を防ぐためにも非常に重要です。
フルミスト点鼻液のメリットとして、注射ではないため痛みが少なく、お子さんの負担が少ないという点が挙げられます。しかし、ご家庭に重度の免疫不全の方がいらっしゃるなど、ご心配な点がある場合は、遠慮なくご相談ください。お子さん一人ひとりの状況に合わせて、最適なワクチン接種の方法を一緒に考えていきましょう。
