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世界をまるごと理解する!?インテグラル理論ってなんだろう?

[2025.03.24]

こんにちは!小児科専門医の杉原です。

今日はちょっと難しいけれど、とっても面白い「インテグラル理論」というお話をしてみたいと思います。

インテグラル理論というのは、アメリカの哲学者ケン・ウィルバーさんが考えた、世界をまるっと理解するための考え方です。「え?世界をまるっと?」って思いますよね。

例えば、あなたが風邪をひいて病院に来たとします。

  • あなたの「熱がある」「喉が痛い」という症状(これは「It」の部分、つまり体の外側の状態です)
  • 「しんどいなぁ」「早くよくなりたいなぁ」という気持ち(これは「I」の部分、あなたの内側の状態です)
  • お家で「早く良くなってね」と作ってもらったおかゆ(これは「We」の部分、あなたの文化や家族の支えです)
  • 病院の先生や看護師さんがいるという医療制度(これは「Its」の部分、社会の仕組みです)

風邪ひとつとっても、いろんな要素が関係していますよね。インテグラル理論は、このようにバラバラに見えるものを、一つの枠組みで理解しようとする考え方なんです。

インテグラル理論のポイント

インテグラル理論の大きな特徴は、「AQALモデル」というものを使うことです。これは、物事を4つの視点と、いくつかの段階に分けて考える方法です。

1. 4つの視点(四象限)

  • I(アイ): これは、あなたの気持ちや考えなど、内側のことです。例えば、「嬉しい」「悲しい」「不安だ」といった感情ですね。
  • It(イット): これは、あなたの体の状態や行動など、外から見えることです。例えば、「熱がある」「心臓がドキドキする」「泣いている」といったことです。
  • We(ウィー): これは、あなたと周りの人との関係や、文化、価値観のことです。例えば、「家族」「友達」「学校のルール」「日本の文化」などです。
  • Its(イッツ): これは、社会の仕組みや制度のことです。例えば、「病院」「学校」「法律」「経済」などです。

2. 発達段階

人は、子どもから大人になるにつれて、考え方や感じ方が変わっていきますよね。インテグラル理論では、このような人の成長段階も考えます。

例えば、小さい頃は「自分が一番!」と思いがちだけど、大きくなるにつれて「みんなで協力することが大切」と思えるようになる、といった感じです。

3. その他の要素

インテグラル理論では、他にも、知能や道徳心などの「発達ライン」、眠っている状態や瞑想している状態などの「意識状態」、性格タイプなどの「タイプ」といった要素も考えます。

インテグラル理論の良いところ

  • いろんなことをまとめて理解できる: バラバラに見えるものを一つの枠組みで考えられるので、複雑なことを理解しやすくなります。
  • 成長を考えられる: 人や社会がどのように成長していくのかを考えることができます。
  • いろんな分野で役立つ: 医療、教育、ビジネスなど、いろんな分野で応用できる可能性があります。

インテグラル理論の難しいところ

  • ちょっと抽象的: 少し難しい考え方なので、すぐに実践するのは難しいかもしれません。
  • 科学的な証拠が少ない: まだまだ研究が進んでいない部分もあります。
  • 考え方の押し付けになるかも: 「これが正しい」と決めつけてしまうと、他の考え方を否定してしまう可能性があります。

インテグラル理論は、まるで大きな地図!

インテグラル理論は、世界をまるごと理解するための大きな地図のようなものです。地図があれば、迷子にならずに目的地にたどり着けますよね。

この理論を用いて「患者の主観(I)」「身体的症状(It)」「文化的背景(We)」「社会制度(Its)」を同時に捉えるという医療モデルがあってもいいなと考えています。

医療現場では、「主観/客観」や「個人/集団」といった分断された視点が混在しやすく、判断の軸がぶれやすいのです。インテグラル理論のような枠組みを導入することで、意図的に視点の切り替えを促進し、共感とシステム思考のバランスを取ることができるのではないか、と考えています。

インテグラル理論を使うことで、私たちは、自分自身や周りの人、そして社会全体を、より深く理解することができるかもしれません。

ちょっと難しいお話だったかもしれませんが、少しでも興味を持ってもらえたら嬉しいです。

 

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