ユアクリニックお茶の水の院長、杉原 桂です。 私は、お子さんのアレルギーや、体に優しい漢方薬を使った治療も得意ですが、何よりも大切にしているのは、病気を未然に防ぐこと（予防）です。特にワクチン接種は、お子さんを大きな病気から守るための大切なステップだと考えています。

今日は、鼻にシュッとスプレーするタイプのインフルエンザワクチン「フルミスト」について、「こんな時は接種できないよ」という、安全のために決められている大切なルールを、分かりやすくお話ししますね。

 

💉 フルミストってどんなワクチン？

フルミストは、生ワクチンと呼ばれる種類のワクチンです。 注射ではなく、鼻の中にスプレーするだけで接種が完了します。「生ワクチン」というのは、病原体（ウイルスなど）の力を弱めたものを使って、実際に病気にかかったのと同じように免疫（病気と戦う力）をつけるワクチンです。

まるで本番そっくりの模擬訓練をして、体が病気への「迎え撃つ準備」をしっかりできるようにするイメージです。この訓練のおかげで、もし本当にインフルエンザウイルスが体に入ってきたとき、すぐに撃退できるというわけです。

ただし、生ワクチンは、注射の不活化ワクチン（病原体の一部や毒性をなくしたものを使うワクチン）に比べて、体の中での反応が少し強い分、体調が万全でない時や、特別な持病がある方には、接種をお休みしてもらうルールがあるんです。これは、安全第一のため、みんなの体を守るための大切な決まりなんですよ。

 

🙅‍♀️ どんな時にフルミストを「お休み」するの？（接種不適当者）

インフルエンザの予防接種は、お子さんの体調が良いときに受けてもらうことが大原則です。接種を「お休み」すべき主なケースと、その理由について、一つずつ見ていきましょう。

1. 熱があるとき（明らかな発熱）

• 熱（一般的に37.5℃以上）がある時はお休みです。

• 【理由】 体がすでに風邪などの病気と戦っている状態です。そんな時にワクチンという「模擬戦」を始めると、体に大きな負担がかかってしまいます。また、熱の原因が何なのかをはっきりさせてからの方が、安全に接種できます。

2. 重い病気の最中のとき（重篤な急性疾患）

• 今、とても具合が悪くて、すぐに治りそうにない病気にかかっているときはお休みです。

• 【理由】 熱があるときと同じく、体が病気と戦うことに集中しているからです。体が回復してから接種しましょう。

3. ワクチンの成分で過去にアレルギーが出たとき（アナフィラキシー）

• 過去にフルミストの成分で、命に関わるような重いアレルギー反応（アナフィラキシー：急に息苦しくなったり、意識を失ったりするようなひどいアレルギー）を起こしたことが明らかな場合は、絶対に接種できません。

• 【理由】 再度、同じ成分で同じような重いアレルギー反応が起こる危険性があるからです。

4. 免疫の働きが弱いとき（免疫機能に異常がある、または治療で免疫を抑えている）

• 生まれつき「免疫」（病気と戦う力）の働きが弱い病気を持っている方や、病気の治療のために「免疫を抑える薬」（免疫抑制剤）を使っている方はお休みです。

• 【理由】 フルミストは生ワクチンで、力が弱められているとはいえ「生きているウイルス」を使っています。免疫力がとても弱いと、この弱められたウイルスをしっかり抑え込めず、かえって病気を引き起こしてしまうリスクがあるからです。

5. 妊娠していることが明らかな方

• 妊娠中の女性はお休みです。

• 【理由】 生ワクチンは、お腹の赤ちゃんへの影響を完全に否定できないため、安全のために原則として接種しないというルールになっています。（多くの専門機関で推奨されているルールです）

6. その他、先生が「今はやめておこう」と判断したとき

• 上記以外にも、体調や持病を考慮して、院長が安全ではないと判断した場合はお休みとさせていただきます。

• 【理由】 私たち小児科医は、お子さん一人ひとりの安全を最優先に考えています。少しでも心配な点があれば、無理せず延期することが大切です。

 

🌟 院長からのメッセージ

フルミストは、注射が苦手なお子さんや、忙しいご家庭にとって、とても便利なワクチンです。しかし、今日お話ししたように、「接種できないルール」があるのは、すべて皆さんの安全を守るためです。

私、杉原は、アレルギーや漢方の知識も活かしながら、お子さん全体を診て、その子に一番合った予防を提案したいと思っています。予防接種について心配なことや疑問に思うことがあれば、いつでも気軽に私にご相談くださいね！