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知っていましたか? インフルエンザウイルスの「最初の発見者」は日本人だった!〜予防の大切さを伝える歴史の物語〜

[2025.10.08]

こんにちは! ユアクリニックお茶の水 院長の杉原桂です。

私は、小児のアレルギー漢方治療にも力を入れていますが、何よりも大切にしているのは、お子さんたちの健康を病気になる前から守る「予防」です。特に、毎年やってくるインフルエンザに対する安全なワクチン接種は、小児科医として強く願っていることの一つです。

今回は、そんなインフルエンザについて、私たち日本人の誇りになるような、ちょっと感動的な歴史の物語をご紹介します。

(原典はこちら)

まだ「ウイルス」が見えなかった時代

インフルエンザというと、とても身近な病気ですが、その病気の原因、つまり「ウイルス」が何なのかを世界で初めて明らかにしたのが、実は日本人研究者だったことをご存知でしょうか?

長らく、インフルエンザの原因を見つけたのは1930年代のイギリスの研究者だとされていましたが、その研究よりずっと前の、世界中で大流行した1918年のスペイン風邪(インフルエンザ)の時代に、その正体に迫っていた日本人がいたのです。

その主役は、山内保(やまのうち たもつ) 博士です。そして、共同研究者として、坂上弘蔵(さかがみ こうぞう) 医師と、岩島寸三(いわしま すんぞう) 医師の3名が、この大発見を成し遂げました。

パスツール研究所で磨かれた「見る目」

山内保博士は、明治時代に東京帝国大学(現・東京大学)を卒業後、すぐにヨーロッパへ留学し、フランスにあるパスツール研究所という世界的に有名な研究機関で研鑽を積みました。

パスツール研究所では、細菌よりもっと小さくて、当時の顕微鏡では見えない病原体、つまり「ウイルス」の概念がまさに生まれようとしていた、医学の最先端の時代です。

例えるなら、山内博士は、まだスマートフォンもインターネットもない時代に、海外の最先端の場所で、将来のIT技術のヒントを誰よりも早く学んでいたようなものです。彼は、そこで梅毒(ばいどく)やアナフィラキシー(アレルギーの重い反応)など、様々な難しい病気について研究し、ドイツ語やフランス語でたくさんの論文を発表する、世界レベルの優秀な研究者でした。

大発見の鍵となった「濾過(ろか)性」という考え方

1917年に帰国した山内博士は、世界的なパンデミック(大流行)を起こしていたインフルエンザの病原体を突き止めようと、日本で研究を始めました。

当時、インフルエンザは「プァイフェル菌」という細菌が原因だ、と多くの学者が考えていました。しかし、山内博士たちは、流行性感冒(インフルエンザのこと)の患者さんの痰(たん)を、とても目の細かいフィルターで濾(こ)して、細菌だけを取り除いた液体を、健康な人たち(看護師さんや友人など)に付けても、インフルエンザが発病することを発見したのです。

これはどういうことかというと…

【例え話】

想像してみてください。泥水(インフルエンザ患者さんの痰)の中に、大きな石(細菌)と、砂つぶよりもずっと小さい宝物(ウイルス)が混ざっています。

みんなは、大きな石(細菌)が病気の原因だと思っていました。

しかし、山内博士は、とても目の細かいザル(濾過器:ろかき)で水をこしました。その結果、大きな石(細菌)はザルに残りましたが、ろ過された水(液体)の中には、まだ砂つぶよりも小さい宝物(ウイルス)が残っていて、その水が病気を起こすことを証明したのです。

世界を覆した論文と、名前にまつわるミステリー

この画期的な研究結果は、1919年、イギリスの有名な医学雑誌「LANCET(ランセット)誌」に発表されました。

山内博士たちは、

  1. インフルエンザの原因は、濾過性細菌(ろかせいさいきん、つまり当時の「ウイルス」のこと)である。

  2. この病原体は、患者さんの痰や血液の中にいる。

  3. 従来の細菌(プァイフェル菌など)は、単なる混合感染であり、病気の主な原因ではない。

    といった、重要な結論を出しました。

ところが、この偉大な功績は、長年、世界では忘れ去られてしまいます。

【豆知識】「岩島十三」から「岩島寸三」へ

論文の共著者の一人、岩島医師の名前は、新聞記事では「岩島十三(じゅうぞう)」と書かれていましたが、実はこれは誤りでした。後になって、ご子孫の方の証言で、本当は「岩島寸三(すんぞう)」だったことが判明したのです。

英語の論文での表記は「Dr. S. Iwashima」で、寸三(すんぞう)の「S」と合致します。たった一つの文字の誤記が、その後の歴史の調査をとても難しくしてしまったという、面白いエピソードです。

予防こそが、先人たちの願い

山内博士たちの大発見から90年ほど経ち、アメリカのウイルス学研究者であるフレデリック・マーフィー先生の再評価により、ようやく「インフルエンザウイルスの発見者は、日本人研究者の山内保、坂上弘蔵、岩島寸三である」と、世界の教科書が書き換えられつつあります。

山内博士がこの研究を海外の雑誌で発表したのは、「人体を使った実験」と非難されることを避けるためだったとも言われています。それほど、病気の正体を突き止めることは、大変な苦労を伴うものでした。

院長からのメッセージ

インフルエンザウイルスの正体をいち早く見抜き、その後の医学の発展に道を拓いた先人たちの情熱と、当時の困難な状況を考えると、胸が熱くなりますね。

現代の私たちが、インフルエンザという病気に安心して備えられるのは、この発見があったからこそです。そして、私たちが今できる最善の予防策、それが「ワクチン接種」です。

ユアクリニックお茶の水では、この歴史に敬意を払い、お子さんとご家族の皆様が安心して冬を迎えられるよう、安全で確実なインフルエンザワクチン接種に全力を尽くしています。

予防は、未来の健康への大切な投資です。不安なことや疑問があれば、いつでも杉原院長にご相談くださいね。

 

【保護者の皆様へ:お役立ち情報】

山内博士たちがインフルエンザの原因を突き止めたおかげで、私たちは今、病原体そのものに直接効く薬(抗インフルエンザ薬)や、病気を予防するためのワクチンを開発できるようになりました。

  • ワクチンの仕組みを簡単に解説するなら!

    ワクチンは、病気の原因であるウイルスの姿かたちだけを体に教えてあげて、「やっつけ方(抗体)」をあらかじめ準備させるための「訓練」です。実際に病気になる前に訓練をしておくことで、本物のウイルスが来てもすぐに体が戦えるようにするのです。

当院では、お子さんの体質や体調を考慮し、アレルギーや漢方の知識も活用しながら、最適な予防策をご提案させていただきます。

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