SIDS予防とねんねの姿勢
前回は、赤ちゃんの頭の骨が柔らかいこと、そして向き癖によって頭の形が変形してしまう「位置的頭蓋変形」についてお話ししました。ひなみさん、みずほちゃんの寝る向き、意識して見てくれていますか?
杉原: ひなみさん、こんにちは。みずほちゃんの頭の形、何か変化はありましたか?
ひなみさん: 院長、こんにちは!意識して反対側を向かせるようにしたり、日中はお腹を上にして遊ばせたりしています。まだ劇的な変化はないんですけど、ちょっと安心しました。
杉原: それは素晴らしいですね!継続することが大切ですよ。さて、今日はその「赤ちゃんの寝る姿勢」について、もう少し詳しくお話ししていきたいんです。実は、赤ちゃんの寝る姿勢は、頭の形だけでなく、もっと大切なことにも関係があるんですよ。
ひなみさん: もっと大切なことですか?何でしょう?
SIDS予防とねんねの姿勢
杉原: ひなみさんは、「乳幼児突然死症候群(にゅうようじとつぜんししょうこうぐん)」、通称「SIDS(エスアイディーエス)」という言葉を聞いたことがありますか?
ひなみさん: はい、聞いたことはあります。赤ちゃんが突然亡くなってしまう病気…ですよね?とても怖いです。
杉原: そうですね、SIDSは、それまで元気だった赤ちゃんが、睡眠中に突然亡くなってしまう病気で、原因はまだ完全には解明されていません。だからこそ、予防策を講じることが非常に重要なんです。
杉原: 実は、1992年にアメリカ小児科学会(American Academy of Pediatrics: AAP)という、小児医療の専門家たちが集まる大きな組織が、ある重要な提言をしました。それが「うつぶせ寝を避けて、あおむけで寝かせましょう」という勧告なんです。
ひなみさん: あおむけで寝かせた方がいいんですね!
杉原: その通りです。この勧告が出されてから、世界中で赤ちゃんを「あおむけ」で寝かせる習慣が広がり、SIDSの発症頻度が大きく減少したんです。これは、非常に重要な成果だと言えます。
ひなみさん: そうだったんですね!SIDS予防のために、あおむけで寝かせることが大切なんですね。
杉原: ええ、まさにその通りです。安全なねんねの姿勢は、何よりも「あおむけ(仰臥位・背臥位)」なんです。これを徹底することが、SIDS予防の基本中の基本となります。
杉原: ただ、ここで一つの課題が出てくるんです。先ほどお話しした「位置的頭蓋変形」は、あおむけで寝かせることが推奨されてから、少し増える傾向にあると言われているんです。
ひなみさん: あ!確かにそうですよね。あおむけで寝かせると、後頭部にばかり重みがかかって、平らになりやすいってことですよね?でも、SIDS予防のためにはあおむけがいいし…。どうしたらいいんでしょう?
杉原: まさにそこが、私たち小児科医と保護者の皆さんが一緒に考えていくべき点なんです。SIDS予防は最優先事項です。その上で、頭の形の問題にも適切に対処していくことが大切になります。
位置的頭蓋変形って、どのくらいの赤ちゃんに起こるの?
杉原: では、次に「位置的頭蓋変形」がどのくらいの赤ちゃんに起こるのか、その頻度についてお話ししましょう。ひなみさんは、どのくらいの赤ちゃんが頭の形に変化があると思いますか?
ひなみさん: うーん…私の周りだと、結構いるような気がします。でも、具体的な数字は分からないです。
杉原: そうですよね。実は、頭の変形に「これだ!」という統一された定義がないため、正確な発生頻度を出すのは難しいんです。
杉原: でも、最近の調査によると、乳児期の早い段階で、**約40〜50%**の赤ちゃんに、何らかの頭の変形が認められると報告されているんですよ。
ひなみさん: え!そんなに多いんですか!半分くらいの赤ちゃんが、頭の形に変化があるってことなんですね。
杉原: そうなんです。かなり高い頻度で起こるということが分かってきています。そして、この位置的頭蓋変形を継続的に調査した研究によると、生後4ヶ月頃に一番多く見られ、その後は成長とともに少しずつ改善していく傾向があるんです。
杉原: 2歳になった時点では、頭の変形の頻度は**3.3%**にまで減少すると報告されています。
ひなみさん: じゃあ、放っておいても大丈夫なことが多い、ということでしょうか?
杉原: 多くの場合は自然に改善していきますが、全員が完全に元に戻るわけではありません。また、変形の程度が強い場合は、その後の経過も慎重に見ていく必要があります。だからこそ、早い段階で気づいて、必要であれば対策を始めることが大切なんです。
杉原: 前回お話しした、寝る姿勢の工夫やタミータイムなどは、ご家庭でできる非常に効果的な対策です。それでも改善が見られない場合や、変形の程度が強いと判断した場合には、ベビーヘルメット治療などの専門的な介入も検討していきます。
杉原: 赤ちゃんの頭の形とSIDS予防は、どちらも赤ちゃんの健やかな成長に欠かせない大切なことです。SIDS予防のためには、「あおむけ寝」が最も重要ということを忘れないでください。その上で、頭の形が気になる場合は、早めに私たち小児科医に相談して、適切なアドバイスとサポートを受けてくださいね。
ユアクリニックお茶の水では、お子さんの健康と安全を第一に考え、様々な面からサポートさせていただきます。どんな小さな疑問や不安でも、お気軽にご相談ください。
【ユアクリニックお茶の水の杉原院長からの一言】
SIDS予防はすべての保護者の皆さんに知っておいていただきたい重要な情報です。そして、頭の形のお悩みも、決して珍しいことではありません。当院では、お子さんの成長を見守りながら、それぞれのケースに合わせた最善の解決策を一緒に考えていきます。安心してご来院ください。
