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長引く咳やゼーゼー感の原因を見抜く呼気一酸化窒素検査FeNOとは

[2026.08.27]

熱は下がったのに咳だけが数週間も続いて眠れない、あるいは風邪をひくたびに胸からゼーゼーと音がして苦しそうにしている。ご自身やお子様のこのような症状を前にして「ただの風邪なのか、それとも喘息なのか」と深い不安を抱え、受診を迷われている親御さんや患者さんは少なくありません。市販の風邪薬や咳止めを飲み続けてもなかなか改善しないとき、私たちはどこに原因があるのかを見極める必要があります。その疑問に客観的な数値で明確な答えを出してくれるのが、呼気一酸化窒素(FeNO)測定検査です。

この検査の仕組みを理解するために、気道の状態を「目に見えない粘膜の火傷や熱」に例えて考えてみましょう。体内にアレルギー反応を引き起こす免疫の仕組み(Th2細胞やIL-4、IL-13という物質)が働くと、気道の粘膜に好酸球という白血球が集まり、粘膜が火傷を負ったように腫れ上がります。すると気道の上皮で酵素(iNOS)が増殖し、一酸化窒素(NO)というガスが過剰に発生します。FeNO検査は、息を吐くだけでこのガス濃度を測定し、「気道の温度計」として目に見えない炎症の強さを測定する生理機能検査です。

従来の呼吸機能検査が「気道が狭くなっているか」という物理的な結果を見るものだとすれば、FeNO検査は「今まさに粘膜でどんな炎症が起きているか」という分子レベルの活動を直接評価する点が大きく異なります。これにより、ゼーゼーという喘鳴が起きる前や、気道が硬く変化して戻らなくなる(リモデリング)前の段階で、適切な治療を始めることができます。判断の基準としては、日本のガイドラインに基づき、成人は37ppb以上、12歳以下のお子様は35ppb以上(または30ppb以上)が高値とされ、明確なアレルギー性の炎症が存在することを示します。健常者の平均値15.9ppbに対して未治療喘息患者の平均は47.3ppbであり、この数値が高ければ吸入ステロイド薬が非常によく効くタイプであると判断できます。咳喘息の鑑別においても25ppbを超えるかが重要な予測因子となります。

実は、治療が始まって症状が落ち着いた後もこの検査は極めて重要な役割を果たします。治療の目標はFeNO値を25ppb以下に維持することですが、適切な治療をしていても40ppbを超えて高止まりしている方は、将来的に呼吸機能(1秒量)が低下するリスクが高いことが分かっています。前回の測定から20%以上の変動(50ppb未満の場合は10ppb以上の変動)があれば、病勢の変化や治療の効果を客観的に捉えることができます。また、数値が下がらない場合は吸入の手技不足や部屋のアレルゲン曝露といった課題の早期発見にもつながります。ただし、アレルギー性鼻炎や風邪で数値が上がることや、逆にタバコを吸っている方や吸入ステロイドを使用中の方では数値が低く出ること(偽低値)もあります。さらに、数値が22ppb未満の正常範囲であっても、好中球性喘息や胃食道逆流症、後鼻漏などの可能性を考慮した丁寧な判断が必要です。

当院で導入しているNIOX VEROやNO breath V2といった高精度な機器は、息を最大まで吐き出した後、10秒間一定の速度で吹き出すだけで完了します。画面上の風船を膨らませるゲームのようなアニメーションを見ながら行えるため、6歳以上のお子様からご高齢の方まで楽しく正確に検査が可能です。痛みが一切なく約1分で結果が出るため、お子様や妊婦さんにも非常に安全です。制度面でも2013年に「D099 呼吸ガス分析」として保険適用されており、3割負担の方で検査単体の自己負担額は約1,000円と経済的です。なお、正確な測定のために「検査前1時間の飲食・カフェイン摂取・激しい運動の禁止」「直前の喫煙禁止」「風邪罹患時の延期考慮」をお願いしております。長引く咳を放置せず、まずは「気道の温度」を測ってみませんか。ご家族の健やかな呼吸を取り戻すために、私たちが全力でサポートいたします。

Q&Aセクション

Q 検査を受ける前にどのような制限や注意点がありますか?

A 検査前1時間は飲食およびカフェインの摂取、激しい運動をお控えください。食品中の硝酸塩やカフェイン、運動による呼吸や血流の変化が数値に影響を与えるためです。また、タバコの煙は数値を不当に下げてしまうため直前の喫煙は厳禁です。風邪をひいている場合は数値が高く出る可能性があるため、測定の延期を考慮することがあります。

Q 小さな子どもでも正しく検査を受けることができますか?

A 指示に従って一定の速度で息を10秒間吐き出すことができる5~6歳以上(小学生以上)のお子様であれば実施可能です。測定器のモニター画面に風船などを膨らませるアニメーションが表示され、視覚的に調整しながらゲーム感覚で行えるため、途中で諦めず楽しく正確な検査ができます。採血のような痛みも全くありません。

Q 症状が落ち着いて数値が下がったら吸入薬をやめてもいいですか?

A 自己判断での自己中断は危険です。治療中の目標値である25ppb以下を維持できているのは、吸入ステロイド薬によって気道の炎症が静和している状態だからです。数値が下がったからと薬をやめてしまうと、再び炎症が悪化したり、将来的に呼吸機能が落ちやすくなったりするリスクがあります。医師と一緒に数値をモニタリングしながら根気強く治療を継続しましょう。

鑑別診断セクション

咳喘息 典型的な喘鳴(ゼーゼー音)を伴わない慢性咳嗽が主訴となります。FeNO値が25ppbを超えて高値を示すことが多く、気道粘膜への好酸球浸潤が存在するため、吸入ステロイド薬を投与することで顕著な症状改善が期待できる点で一般的な感染性の咳と鑑別されます。
感染後咳嗽 風邪やウイルス性上気道炎の罹患後に気道粘膜の過敏性が残り、咳嗽だけが長期化する状態です。好酸球性の炎症を病態の本質としないためFeNO値は22ppb未満の正常範囲内にとどまることが多く、時間経過とともに自然軽快に向かう特徴を持ちます。
胃食道逆流症(GERD) 胃酸や胃内容物が食道へ逆流し、その刺激や微小誤嚥によって気道が刺激され慢性的な咳嗽が引き起こされます。アレルギー性の気道炎症ではないためFeNO値は上昇せず、吸入ステロイド薬ではなく胃酸分泌抑制薬による治癒を目指す点でアレルギー性呼吸器疾患と鑑別されます。

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