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ねこの鳴き声で泣く赤ちゃん? 染色体にかくされたヒミツのお話

[2026.04.27]
赤ちゃんの泣き声って、ふつうは「オギャー」だよね。でもね、生まれたばかりなのに「ニャー、ニャー」って、まるで子ねこみたいな声で泣く赤ちゃんがいるって言ったら、びっくりするんじゃないかな。これ、作り話なんかじゃなくて、本当にある病気の話なんだ。 その名も「猫鳴き症候群(クリ・デュ・シャ症候群)」。フランス語で「クリ・デュ・シャ」は「ねこの鳴き声」っていう意味で、そのまま病気の名前になっちゃったんだ。原因は、ぼくらの体の設計図である染色体(細胞の中にある、生命の取扱説明書みたいなもの)にあるんだよ。人間は46本の染色体を持っていて、それぞれに長い腕(長腕)と短い腕(短腕)があるんだけど、この症候群では、5番染色体の「短い腕」の一部が欠けちゃっているんだ。 欠け方には2タイプある。腕の先っぽが欠ける「ターミナル欠失(末端欠失)」と、腕の途中だけがすっぽり抜け落ちる「インタースティシャル欠失(介在欠失)」だね。本でいうと、最後のページが破けているパターンと、真ん中のページがちぎれているパターン、って感じかな。 この症候群を持つ赤ちゃんには、お顔にも特徴があるよ。頭がふつうより小さい「小頭症(マイクロセファリー)」、両目の間がぐっと離れている「眼間開離(ハイパーテロリズム)」、目の内側にちょこんと皮ふのひだがある「内眼角贅皮(エピカンタス)」、耳の位置がふつうより下にある「低位耳介」、時には耳の前に小さな突起ができる「耳前皮垂」、あごが小さめの「小顎症(マイクログナチア)」、それに鼻と口のあいだのみぞが短い「短い人中(フィルトラム)」。どれも一つひとつは小さなサインなんだけど、組み合わさることで、医師は「あれ、もしかして」って気づけるんだ。確率でいうと、生まれてくる赤ちゃん15,000人から50,000人に1人くらい。けっこうレアな病気なんだよ。 ここでハッとする話をひとつ。染色体の一部が欠ける病気は、じつは猫鳴き症候群だけじゃないんだ。たとえば「4p欠失症候群」っていうのは、4番染色体の短腕が欠けるタイプで、お顔の輪郭が「ギリシャ戦士のヘルメット」みたいって表現されることもある。歯が抜けたまま生えてこない子もいるんだよ。 そしてもっとすごいのは、「1p36.3欠失」みたいに、ものすごーく小さい欠け方。これ、約500万塩基(DNAの文字5,000,000個ぶん)も欠けているのに、昔ながらの顕微鏡で染色体を見る方法(核型分析(カリオタイピング))では、まったく見つけられなかったんだ。なぜかって? 欠けてる部分が顕微鏡の解像度より小さすぎて、ふつうに見えちゃうからなんだ。 じゃあどうやって見つけたかというと、「染色体マイクロアレイ解析」っていう新しい技術。これは染色体を「形」で見るんじゃなくて、DNAを文字レベルで読んで、「あ、ここの量が足りない!」って気づくやり方なんだ。これってようするに、虫メガネで地図を眺めていた時代から、GPSで一軒一軒のお家の郵便番号まで読み取る時代に進化した、ってこと。見えなかったものが、見えるようになった。それが今のゲノム医療の現場なんだ。 ゲノム(ぼくらの遺伝情報のぜんぶ)の世界は、まだまだ解き明かされていないナゾでいっぱい。昔は「原因不明」って言われていた病気が、技術の進歩で「ここが欠けていたんだ!」ってちゃんと正体がわかる時代になってきた。きみが大人になるころには、もっと小さな変化まで見つけられて、ひとりひとりにぴったりのサポートができる医療になっているはず。染色体の中の小さな「ぬけ」を読み取る力は、これからの医学の大きな希望なんだ。

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