アレルギー性鼻炎ガイドライン2024を解説
アレルギー性鼻炎
保護者むけわかりやすいガイド
小児科に来られた保護者の方に向けて、専門的な内容をやさしい言葉でまとめました。
アレルギー性鼻炎とはどんな病気?
アレルギー性鼻炎は、からだのアレルギー反応が鼻の中で起こる病気です。くしゃみ・鼻水・鼻づまりなどの症状が続きます。
花粉やダニなど「アレルゲン(アレルギーの原因になるもの)」を吸い込むと、鼻の粘膜(ねんまく)でアレルギー反応が起き、くしゃみ・鼻水・鼻づまりが出ます。これがアレルギー性鼻炎です。
図1 アレルゲンが鼻に入ると、粘膜でアレルギー反応が起き、症状が現れます。
鼻炎にはいろいろな種類があります
感染性鼻炎
ウイルス・細菌などの感染による鼻炎(かぜ など)
通年性アレルギー性鼻炎
ダニ・ペット・カビなど年間を通じて症状が出るタイプ
季節性アレルギー性鼻炎
スギ・ヒノキ・イネ科などの花粉が原因で季節ごとに症状が出るタイプ(花粉症)
局所アレルギー性鼻炎(LAR)
血液検査では反応が出ないのに、鼻の中だけでアレルギーが起きているタイプ
薬物性鼻炎
市販の点鼻薬を長期間使いすぎることで起こる鼻づまり
老人性鼻炎
加齢により鼻の機能が低下して起こる水っぽい鼻水
出典:アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版
どうやって診断するの?(検査の流れ)
アレルギー性鼻炎の診断には、症状の確認と、アレルギーを調べる検査を組み合わせます。まず問診と鼻の観察(鼻鏡検査)で、アレルギー性鼻炎らしい症状かどうかを確認します。
(くしゃみ・鼻水・鼻づまりが主な症状)
アレルギー症状?
(皮膚テスト等)
(特異的IgE抗体)
皮膚テスト(プリックテスト)/鼻誘発試験
診断確定
鼻の症状が強い?
鼻の中だけでアレルギーが起きているタイプ
図2 アレルギー性鼻炎の診断の流れ(アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版をもとに作成)
検査の種類
| 検査の種類 | 何を調べるか | だれに行うか |
|---|---|---|
| 鼻鏡検査 外来で簡単に |
鼻の中の粘膜が腫れていないか・色は正常か | 初めに受診した方全員 |
| 鼻汁好酸球検査 外来で簡単に |
鼻水にアレルギーに関係する細胞(好酸球)が多いか | 初めに受診した方全員 |
| 皮膚プリックテスト 必要な場合 |
どのアレルゲンに反応するか(皮膚に少量のアレルゲン液を置いて反応を見る) | アレルゲンを特定したい場合 |
| 特異的IgE抗体検査(血液) 必要な場合 |
血液中にアレルギーの原因となる抗体があるか | アレルゲンを特定したい場合 |
| 鼻誘発試験 特殊な場合 |
アレルゲンを鼻に直接入れて症状が出るか確認 | 免疫療法を始める前など |
血液検査では反応がないのに、鼻の中だけでアレルギーが起きているケースがあります。症状があるのに検査が陰性だった場合も、医師に相談しましょう。
症状の分類(病気の種類・タイプ・重さ)
3-1 アレルギーの原因(何が鼻炎を引き起こすか)
鼻炎の原因は「アレルゲンの入り方」によって4つに分けられます。
①吸入(空気から)
花粉・ダニ・カビ・ペットのフケなどを鼻から吸い込む。最も多い原因。
②食物(口から)
食べ物によるアレルギーが鼻症状に出ることも。
③接触(直接ふれる)
皮膚や粘膜がアレルゲンに直接ふれることで起こる。
④注射・注入
薬や検査の際に注射で入る場合(比較的まれ)。
3-2 主なアレルゲン(原因になるもの)
図3 通年性アレルゲンと季節性アレルゲンの比較
3-3 症状のタイプ(病型)
| タイプ | 主な症状 | 説明 |
|---|---|---|
| くしゃみ・鼻水型 | くしゃみが多い、サラサラした鼻水が多い | 鼻づまりはあまりない |
| 鼻づまり型 | 鼻がつまって息がしにくい | くしゃみや鼻水は少なめ |
| 充全型(じゅうぜんがた) | くしゃみ・鼻水・鼻づまりの3つ全部 | 症状が全体的に強い |
3-4 重症度(どれくらいつらいか)
重症度は「くしゃみ・鼻水の回数」と「鼻づまりの程度」の2つを組み合わせて決めます。
表2 アレルギー性鼻炎の重症度の目安
| 鼻づまり の程度 |
少ない (1〜5回) |
普通 (6〜10回) |
多い (11〜20回) |
非常に多い (21回以上) |
|---|---|---|---|---|
| ← くしゃみ・鼻水の回数(1日平均) → | ||||
| なし | 軽症 | 軽症 | 中等症 | 中等症 |
| 軽度 口呼吸なし |
中等症 | 中等症 | 重症 | 重症 |
| 中等度 ときどき口呼吸 |
中等症 | 重症 | 重症 | 最重症 |
| 高度 ほぼ口呼吸 |
重症 | 重症 | 最重症 | 最重症 |
表2 重症度の組み合わせ(アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版をもとにオリジナル作成)
どんな治療があるの?
アレルギー性鼻炎の治療には大きく4つのアプローチがあります。ひとつだけでなく、組み合わせることが多いです。
表3 治療の4本柱
アレルゲン回避の具体的な方法
| アレルゲン | 具体的な対策 |
|---|---|
| ? 花粉 | 外出時はマスク・眼鏡を着用。帰宅後は服を玄関で払い、すぐ洗顔。窓を閉め、空気清浄機を使う。 |
| ? ダニ・ハウスダスト | 寝具を週1回以上洗濯・乾燥。掃除機は週2〜3回。布製ソファや絨毯は減らす。防ダニカバーを使う。 |
| ? ペット | ペットを室内で飼わない・寝室に入れない。ペットアレルギーがある場合は接触を避ける。 |
| ? カビ | 浴室・台所の換気を十分に行う。梅雨時期の除湿に注意。 |
薬の種類とはたらき
? 最もよく使われる薬
例:フェキソフェナジン、ビラスチン、ロラタジン、エバスチン など多数
例:フルチカゾン、ベクロメタゾン、フルニソリド など
例:ケトチフェン点鼻 など
例:モンテルカスト(シングレア)など
例:アイピーディー(スプラタスト)
例:オマリズマブ(ゾレア)
免疫療法(根本的な治療)
アレルゲンを少量ずつ体に入れ続けることで、アレルギー反応を起こしにくい体質に変えていく治療法です。効果が持続しやすく、アレルギーを根本から改善できる可能性があります。3〜5年の継続が必要です。
舌下免疫療法(ぜっかめんえきりょうほう)
毎日、舌の下にダニやスギ花粉のエキスを少量入れる方法。注射不要で自宅でできる。お子さんにも使える。
皮下免疫療法
病院でアレルゲンを少量ずつ注射する方法。長年の実績がある。
手術(外科的治療)
薬での治療が十分に効かない場合や、鼻づまりがとても強い場合に、手術が検討されることがあります。
| 手術の種類 | 内容 |
|---|---|
| レーザー手術・電気焼灼(しょうしゃく) | 鼻の中の腫れた粘膜をレーザーや電気で焼いて縮ませる。比較的短時間で受けられる。 |
| 下鼻甲介(かびこうかい)手術 | 鼻の中の「ひだ」を切り取ったり削ったりして通気を改善する。 |
| 後鼻神経切断術 | 鼻水・くしゃみを引き起こす神経を切る手術。重症例に行われる。 |
| 鼻中隔矯正術・副鼻腔手術など | 鼻の骨の曲がり・副鼻腔炎(蓄膿症)がある場合に合わせて行うことがある。 |
出典:アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版(表3・表4をもとに作成)
治療の進め方(通年性・季節性それぞれ)
治療は「病気のタイプ(通年性か季節性か)」と「重症度」の組み合わせで選びます。症状が改善したら薬を減らし(ステップダウン)、悪化したら増やします(ステップアップ)。
5-1 通年性アレルギー性鼻炎の治療ステップ
| 通年性アレルギー性鼻炎(ダニ・ハウスダストなど) | |||
| 重症度 | 軽症 | 中等症 | 重症・最重症 |
|---|---|---|---|
| くしゃみ・ 鼻水型 |
第2世代抗ヒスタミン薬 または点鼻ステロイド |
第2世代抗ヒスタミン薬 + 点鼻ステロイド 必要なら鼻粘膜収縮薬を追加 |
点鼻ステロイド + 第2世代抗ヒスタミン薬 専門医に相談を |
| 鼻づまり型 | 点鼻ステロイド またはロイコトリエン受容体拮抗薬 |
点鼻ステロイド +ロイコトリエン受容体拮抗薬 必要に応じて組み合わせ |
点鼻ステロイド強化 + 抗ヒスタミン薬 手術の検討も |
| 充全型 (3つ全部) |
第2世代抗ヒスタミン薬 + 点鼻ステロイド |
点鼻ステロイド + 抗ヒスタミン薬 + ロイコトリエン受容体拮抗薬 |
抗IgE療法(ゾレア) 手術の検討 専門医に紹介 |
| ? すべてのタイプ・重症度に:舌下免疫療法(ダニ)を検討できます | |||
| ? すべてに共通:アレルゲン回避を継続する | |||
表5 通年性アレルギー性鼻炎の治療選択(アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版をもとに作成)
5-2 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症)の治療ステップ
花粉が飛び始める2週間前から薬を始める「初期療法」が重要です。症状が出てからより、早めに薬を始めることで症状を軽くできます。花粉飛散予報を確認して、シーズン前から準備しましょう。
| 季節性アレルギー性鼻炎(花粉症:スギ・ヒノキなど) | ||||
| 重症度 | 軽症 | 中等症 | 重症 | 最重症 |
|---|---|---|---|---|
| くしゃみ・ 鼻水型 |
第2世代抗ヒスタミン薬 または点鼻ステロイド |
点鼻ステロイド + 抗ヒスタミン薬 または単独 |
第2世代抗ヒスタミン薬 + 点鼻ステロイド (鼻閉薬追加も) |
点鼻ステロイド+ 全薬剤組み合わせ 専門医に相談 |
| 鼻づまり型 | 第2世代抗ヒスタミン薬 ロイコトリエン受容体拮抗薬 |
点鼻ステロイド +ロイコトリエン受容体拮抗薬 |
点鼻ステロイド強化 鼻閉薬(短期)追加 (約25日まで) |
全薬剤組み合わせ 経口ステロイド (短期のみ) |
| 充全型 (3つ全部) |
抗ヒスタミン薬 + 点鼻ステロイド |
点鼻ステロイド + 抗ヒスタミン薬 +ロイコトリエン受容体拮抗薬 |
全薬剤フル活用 抗IgE療法(ゾレア) 専門医に |
最大強度の 薬剤組み合わせ 手術検討 |
| ? すべての段階で:スギ花粉 舌下免疫療法(SLIT)を検討できます | ||||
| ? 花粉飛散2週間前から「初期療法」を開始。早めの準備が効果的です。 | ||||
| ? すべてに共通:マスク・眼鏡・帰宅後の洗顔などアレルゲン回避を継続 | ||||
表6 季節性アレルギー性鼻炎の治療選択(アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版をもとに作成)
鼻の症状に対してステロイドを筋肉注射することは、副作用のリスクがあるためガイドラインでは推奨されていません。お子さんには特に使用しません。
出典:アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版(表5・表6をもとに作成)
妊婦さん・お子さん・高齢者への注意点
妊婦・授乳中のお母さんへ
妊娠中はアレルギー性鼻炎の症状が悪化しやすく、妊娠中や授乳中に症状がひどくなることもあります。
妊娠初期(特に2〜4ヵ月)の薬は慎重に。この時期は赤ちゃんの体が作られる大切な時期なので、薬は最低限にします。
まず薬を使わない対策を試してください:
- マスク・眼鏡の着用
- 鼻うがい(生理食塩水を使用)
- 空気清浄機の活用
- ダニ対策(掃除・寝具洗濯)
薬が必要な場合は、鼻噴霧用ステロイド薬・抗ヒスタミン薬・点鼻薬など局所(きょくしょ)に使う薬が、体への影響が少なくて比較的安全です。必ず医師に相談してください。
授乳中も同様です。母乳を通じて赤ちゃんに薬が移行することがあるため、使う薬は慎重に選びます。
お子さん(小児)への注意
子どものアレルギー性鼻炎は年齢とともに増えています。近年は小学校入学前からも診断されることが増えています。
お子さんの場合、原因はダニ・ハウスダストが最も多く、その他にペット・カビ・花粉なども原因になります。
お子さんへの特別なポイント:
- ダニ・ペットを室内に置かない
- こまめな掃除と換気
- 花粉の多い日は外で遊んだ後、すぐに着替えて洗顔
薬について:お子さんにはできるだけ眠気が少ない第2世代抗ヒスタミン薬を使います。飲み薬を飲んだ後に鼻水が増えることがあります。
鼻噴霧用ステロイド薬は子どもでも比較的安全ですが、慎重に使います。
お子さんが小さいほど、指示通りに薬を使えないことがあります。保護者の方が一緒に管理してあげてください。
アレルギー症状は悪化することがあります。放置するとアトピー性皮膚炎・喘息・結膜炎へと広がる「アレルギーマーチ」が起きることがあるため、早めの受診が大切です。
高齢者(65歳以上)への注意
年をとるとアレルギー性鼻炎になりにくくなるという面がありますが、代わりに「老人性鼻炎」という似た症状の病気が増えます。
老人性鼻炎とは?
加齢により鼻の粘膜が薄くなり、鼻をかんでも出てこない水っぽい鼻水がダラダラ出る状態。アレルギーとは別の原因です。
高齢者に特に注意が必要なポイント:
- 加齢による鼻腔の変形(鼻中隔弯曲など)が鼻づまりを悪化させることがある
- 多くの薬を飲んでいることが多く、薬の相互作用に注意が必要
- 第1世代の抗ヒスタミン薬(古いタイプ)は、眠気・口の渇き・認知機能の低下・尿閉(トイレが出にくくなる)などを起こしやすい
- 口の渇きにより虫歯・感染症リスクが上がる
高齢者の方には、眠気・副作用が少ない第2世代抗ヒスタミン薬や鼻噴霧用ステロイド薬が勧められます。古いタイプの薬(第1世代)はなるべく避けましょう。
図5 妊婦・小児・高齢者での注意ポイント(オリジナル作成)
出典:アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版「その他」の項をもとに作成
このページの内容は「アレルギー性鼻炎ガイドライン2024年版」をもとに、保護者の方がわかりやすいようにまとめたものです。
治療の選択は必ず担当医師と相談の上、お子さんや患者さんに合った方法を選んでください。
気になることがあれば、いつでも小児科・耳鼻科にご相談ください。
