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新生児の頭血腫について

ベビーヘルメットで赤ちゃんの頭をいろいろ触らせていただいていると、頭血腫をご心配される人がよくいらっしゃいます。

そこで頭血腫についてまとめてみました。

1. はじめに:赤ちゃんの頭の「こぶ」に気づいたら

新しい命の誕生は喜びと感動に満ちていますが、慣れない育児の中で、赤ちゃんの小さな変化に戸惑うことも少なくないでしょう。特に、赤ちゃんの頭に「こぶ」のようなものを見つけると、親御さんは心配になるのは当然のことです。しかし、ご安心ください。出産直後の赤ちゃんによく見られる頭の「こぶ」の多くは、「頭血腫(ずけっしゅ)」と呼ばれるもので、ほとんどの場合、心配のないものです。これは、分娩という大仕事を経てきた赤ちゃんの体によく起こる自然な現象の一つとして理解されています。

頭血腫は、全分娩数の1〜2%に発生すると言われており 1、決して珍しいことではありません。多くの新生児に見られる現象です。本レポートでは、頭血腫について親御さんが正しく理解し、安心して赤ちゃんと向き合えるよう、ご説明いたします。

2. 頭血腫(ずけっしゅ)とは?

定義:頭蓋骨と骨膜の間の出血

頭血腫とは、新生児の頭蓋骨と、その骨を覆う「骨膜(こつまく)」という薄い膜との間に血液が溜まってできる「こぶ」のことです 1。これは、頭蓋骨の外側にできる内出血であり、脳そのものに影響が及ぶことはないと考えられています 3。通常、生まれてすぐには目立たないことが多いですが、生後半日から数日経ってから徐々に膨らんでくることで気づかれることがほとんどです 2。触ると少し柔らかく、液体が溜まっているような感触(波動性)があるのが特徴です 3

産瘤(さんりゅう)との違い:発生部位、経過、縫合線を越えない特徴

新生児の頭の「こぶ」には、頭血腫の他に「産瘤(さんりゅう)」というものもあります。これらは似ていますが、発生する場所や経過が異なります。産瘤は、頭皮の皮膚とその下の皮下組織の間にできる一時的なむくみや腫れで、分娩直後から見られます。特徴として、頭蓋骨の縫合線を越えて広がる傾向があります。通常、2〜3日程度で自然に体に吸収され、特別な治療は必要ありません 1

一方、頭血腫は、先述の通り、頭蓋骨と骨膜の間にできる血腫です。骨膜は頭蓋骨の縫合部で骨にしっかりと付着しているため、頭血腫は通常、縫合線を越えて広がることはありません 1。この点が産瘤との大きな違いです。親御さんがこれらの違いを理解することは、赤ちゃんの頭部の状態を正確に把握し、不必要な心配を減らす上で非常に重要です。見た目が似ているため混同されがちですが、それぞれの特徴を知ることで、適切な観察と判断が可能となります。

項目 (Category) 頭血腫 (Cephalohematoma) 産瘤 (Caput Succedaneum)
発生部位 (Location)

頭蓋骨と骨膜の間 1

頭皮の皮膚とその下の皮下組織 1

原因 (Cause)

産道通過時の外力による骨膜の剥離 1

分娩時の頭皮への圧迫によるむくみ 1

出現時期 (Onset)

生後半日〜2〜3日頃から目立つ 1

分娩直後から見られる 4

触感 (Feel)

柔らかく、液体が溜まっているような感触(波動性) 3

むくみがあり、押すとへこむことがある
縫合線を越えるか (Crosses Suture Lines)

越えない 1

越える 1

経過 (Course)

数週間〜数ヶ月で自然吸収、稀に骨化 1

2〜3日で自然吸収 4

治療 (Treatment)

基本的に不要 2

不要 6

脳への影響 (Brain Impact)

なし 3

なし

帽状腱膜下血腫(ぼうじょうけんまくかけっしゅ)との違い

さらに稀に、「帽状腱膜下血腫」というものもあります。これは頭皮のさらに深い層、帽状腱膜の下に生じる出血で、頭血腫や産瘤とは発生機序が異なります。帽状腱膜下血腫は、骨折の結果ではなく、打撲によって生じるとされています 7。頭血腫が骨折の結果生じるものとされるのに対し 7、帽状腱膜下血腫はより広範囲に広がる可能性があり、重症化すると貧血などの全身症状を伴うこともあります 8。これらの血腫を正確に鑑別することは、新生児の頭部外傷の診断において非常に重要です。

3. なぜ頭血腫ができるの?

主な原因:出産時の頭への圧力

頭血腫の主な原因は、赤ちゃんが狭い産道を通る際に、頭に物理的な圧力がかかることです 1。この圧力によって、頭蓋骨の骨膜の一部が骨から剥がれ、その隙間に血管から血液が漏れ出して溜まることで発生します。特に、吸引分娩や鉗子分娩といった医療的な介入を伴う分娩では、頭血腫の発生頻度がやや高くなる傾向があり、吸引分娩では約6%の発生率が報告されています 1

しかし、特別な医療処置がなくても、正常な経腟分娩の過程でも起こり得るものです 1。分娩は赤ちゃんにとって大きな挑戦であり、頭部への圧迫が避けられないため、頭血腫は出産という自然なプロセスにおいて起こりうる生理的な反応の一つと捉えられています。この現象は、親御さんの分娩中の行動や選択が原因で発生するものではなく、分娩の性質上避けられない側面があることを理解することは、親御さんが不必要な罪悪感や自責の念を抱くことを防ぐ上で非常に重要です。

発生頻度

全体として、全分娩の1〜2%の赤ちゃんに頭血腫が見られるとされています 1。これは、決して稀なことではなく、新生児期によく見られる所見の一つです。

4. 頭血腫の経過と治療

いつ頃現れるか

頭血腫は、生まれてすぐには気づかれにくいことが多く、通常は生後2〜3日頃から徐々に膨らんで目立つようになります 1。これは、出血がゆっくりと進行し、血液が溜まるまでに時間がかかるためです。

自然に吸収されること:数週間〜数ヶ月の経過

頭血腫の最も重要な特徴は、特別な治療を必要とせず、ほとんどの場合、自然に吸収されて治まるということです 1。吸収が始まるのは生後1週間頃からで 2、数週間から数ヶ月かけて徐々に小さくなっていきます 1。大きなものでも3〜4ヶ月ほどで血液が体に吸収されるか、はれた部分がかたくなって骨の一部になることで、自然にはれが引いて、小さく目立たなくなっていきます 6

治療は基本的に不要であること

頭血腫は、脳そのものに影響を及ぼすものではないため、基本的に治療は必要ありません 3

穿刺(せんし)や外科的処置は推奨されない理由

血腫を針で刺して血液を吸い出す「穿刺」や、その他の外科的な処置は、通常は推奨されません 3。これは、感染症を引き起こすリスクや、再び出血してしまうリスクがあるためです 3。親御さんは、赤ちゃんの頭の「こぶ」を早くなくしたいと願うかもしれませんが、医療介入には常にリスクが伴います。頭血腫の自然な経過を待つ「経過観察」は、これらのリスクを避け、赤ちゃんの長期的な健康を最優先する、医学的に最も適切で安全なアプローチとされています。

稀に骨化することとその後の経過

ごく稀に、生後2〜4週頃から血腫が硬くなり、カルシウムが沈着して骨のように「骨化」することがあります 1。この場合も、数ヶ月かけて自然に吸収されたり、目立たなくなったりすることが期待できます 1。一時的に頭の形が少し変形したように見えることがありますが、赤ちゃんの頭蓋骨の成長には影響がなく、時間の経過とともに自然に目立たなくなるとされています 1。数年間コブが見られるケースもありますが、これも最終的には自然に吸収されていきます 3

5. 注意したいこと:合併症と観察のポイント

黄疸(おうだん)との関連:血液分解によるビリルビン増加

頭血腫がある新生児は、そうでない新生児に比べて黄疸が強くなる可能性があります 2。これは、頭血腫の中に溜まった血液が体内で吸収される過程で、赤血球が壊れて「ビリルビン」という黄色い色素が増加するためです 9。ビリルビンが肝臓の処理能力を超えてしまうと、皮膚や白目が黄色くなる黄疸として現れます 9。新生児の黄疸は多くの場合「生理的黄疸」として自然に治まりますが 9、頭血腫が原因で黄疸が強く出た場合は、光線療法などの治療が必要になることがあります。

黄疸の観察ポイントと受診の目安(退院後)

入院中は毎日黄疸の程度をチェックし、必要に応じて治療の相談がなされます。通常、黄疸のピークを過ぎた頃に退院となりますが 11、退院後も以下の点に注意して観察することが重要です。

  • 生後1日以内に現れる黄疸 9

  • 生後2週間以上続く黄疸 9

  • 赤ちゃんの見た目が明らかに黄色くなったように感じられる場合 11

  • 白目の部分が黄色い 9

  • おっぱいや育児用ミルクの飲みが悪い 9

  • 元気がない、ぐったりしている(嗜眠) 9

  • 易刺激性(ちょっとしたことで泣き出す、不機嫌) 9

これらの症状が見られた場合は、出産した施設や小児科へすぐに連絡し、相談することが推奨されます 11

ご家庭での赤ちゃんの観察ポイント:

頭血腫がある場合でも、赤ちゃんの日常生活(授乳や沐浴など)は通常通りで問題ありません 11

  • 頭血腫を触る際は優しく: 頭血腫の部分は、赤ちゃんが痛みを感じることがあるため、優しく触れるようにしてください 11。強く押したり、刺激したりすることは避けるべきです。

  • 皮膚の状態の確認: 生後間もない時期に頭血腫の皮膚表面に傷がついていたり、赤くなっていたりする場合は、感染のリスクを避けるためにも、医師や助産師にケアの方法を教えてもらうことが大切です 11

緊急性の高い症状(すぐに受診を検討すべき兆候):

頭血腫自体は良性ですが、ごく稀に他の頭蓋内出血を伴う可能性も指摘されています 7。また、頭をぶつけたことによる症状と区別が難しい場合もあります。以下の症状が見られた場合は、すぐに医療機関を受診することが求められます。親御さんがこれらの具体的な症状を把握し、冷静に判断できることは、不必要な医療機関受診を減らしつつ、本当に緊急性の高い状況で迅速な対応を可能にする上で非常に重要です。

症状 (Symptom) 具体例・確認ポイント (Details/Checkpoints) 考えられる状況と対応 (Possible Situation & Action)
意識状態の異常

意識がはっきりしない、呼びかけに反応が鈍い、ぐったりしている、眠りがちで起きない 12

頭蓋内出血や重篤な状態の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
元気がない

普段より明らかに活気がない、泣き声が弱い、手足をあまり動かさない 12

体調不良のサイン。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
顔色の異常

顔色が明らかに悪い、青白い、唇が紫色 12

貧血や循環器系の異常の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
嘔吐

繰り返し吐く(特に連続しない3回以上)、噴水のように吐く 12

頭蓋内圧亢進や消化器系の問題の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
けいれん

手足がピクピクする、目が上転する、体が硬直する 12

脳の異常の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
ミルクの飲みが悪い

普段の半分以下しか飲まない、吸う力が弱い、すぐに疲れて寝てしまう 12

脱水や全身状態の悪化の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
呼吸の異常

呼吸が苦しそう、ゼーゼーする、不規則な呼吸、呼吸が止まることがある 9

呼吸器系の問題や重篤な状態の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、受診を。
頭部の明らかな外傷

頭血腫以外の5cm以上の腫れや打撲痕(1歳未満)、陥没している部分がある 12

骨折や他の頭部外傷の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、画像検査を。
頭蓋底骨折の兆候

目の周りの皮下出血(パンダの目)、耳からの出血、鼻からの透明な液体(髄液漏) 12

重篤な頭部外傷の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、画像検査を。
神経学的な異常

手足の麻痺、しびれ、動きの左右差など 12

脳や神経系の損傷の可能性。すぐに医療機関へ連絡し、画像検査を。
黄疸の悪化

退院後、明らかに黄色みが強くなった、白目が黄色い、元気がない、ミルクの飲みが悪い 9

高ビリルビン血症の可能性。出産した施設や小児科へ連絡し、相談を。

これらの症状は、頭血腫とは別の、より重篤な状態を示している可能性があるため、速やかに画像検査が可能な医療機関(小児科、脳神経外科など)を受診することが重要です 12。新生児や乳児は、頭をぶつけた直後に症状が現れない場合がありますので、ぶつけてから

少なくとも24時間ほどは慎重に経過を観察することが推奨されます 12

6. 最後に:心配な時はいつでもご相談ください

新生児の頭血腫は、ほとんどの場合、自然に治る良性のものです。しかし、新しい命を育む中で、不安や疑問は尽きないことでしょう。本レポートでご説明した内容以外にも、何か気になることや、赤ちゃんの様子で「いつもと違うな」と感じることがあれば、どんな些細なことでも構いません。医療従事者は、親御さんと赤ちゃんの健康をサポートするために存在します。どうぞ一人で抱え込まず、いつでもお気軽に出産された施設や、かかりつけの小児科医にご相談ください。親御さんと赤ちゃんの健やかな成長を心から願っており、安心して育児に取り組めるよう、全力でサポートが提供されます。

 


 

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